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センターポールアスリートとの出会い 片足で格闘技!?⑳ 堀江航③

前回の続き

マスター1フェザー級白帯で初戦敗退した堀江さんは、午後行われる無差別級にもエントリー。
セコンドは所属道場CARPEDIEM 岩崎さんと、伊藤健一さん。豪華なセコンドです。

午前中に行われた、試合とは打って変わって積極的な試合を展開する堀江選手。
柔術は、”立ち”の状態からスタートするのですが、堀江選手は試合中義足を外して片足で試合をするので、片足立ちの状態からスタート。
柔道やレスリングと違って背中をマットに付けても良いので、基本下からの試合展開となります。

一見、下になっている状態は不利にも見えますが、下になっている状態から相手をひっくり返したり、下の状態から関節技、締め技と攻撃を展開することも可能です。
上に対峙する選手が、有利なポジション(マウント、サイド、バック)ポジションに入らなければ基本的に相手選手へポイントが入ることはありません。
堀江さんは左足の膝下が無いので、サイドポジションに入られ易いはずなのですが持ちこたえています。
相手選手も片足の選手との対戦は初めてなのでしょう。非常にやりづらそうです。
その一瞬を突き、堀江選手が相手をひっくり返す(スイープ)に成功。そのままポイントリードで逃げ切りました。

少しのインターバルを挟んで行われた二回戦。

この試合も堀江選手は下からの状態で、相手選手はトップポジションから強引に仕掛けます。
暫く膠着状態が続いたとき、相手選手も無理な状態での締め技は決まらないと判断したのか、ポジションを変えた瞬間に隙を突いて脱出。
上下入れ替わり、スイープ成功です。

会場のギャラリーも片足の選手が形勢逆転したことで盛り上がります。
不利な状態から一転、スイープでポイントリードとトップからの攻めることが出来る有利な状況でした。
このまま、ポジションキープをすれば逃げ切りで勝利というゲームプランもありましたが。
しかし、堀江さんが選んだのは”一本勝ち”でした。
今度はトップポジションから関節技を狙いに行きます。
相手選手が、ガードポジションに戻そうとしたタイミングで堀江さんは相手の左手首を掴みます。
恐らく、キムラロックかアームバーを狙っていたのでしょう。
綺麗な形でのキムラロックではありませんでしたが、このタイミングでクールに指示を出していた岩崎さんが激を飛ばします。
「ワタルさん、強引でも良い!そのまま行け!!」

暫く互いに膠着しながらの状態が続きましたが、キムラロックがじりじり極まり相手選手が我慢できずタップ。

初めての一本勝ちで決勝へ駒を進めました。
白帯の決勝戦ですが、片足の選手が決勝まで上がってきたという事で、マットには多くのギャラリーが集まります。
対戦相手は堀江さんよりも一回り大きい体格で強そうです。

この試合の入りも堀江選手はボトムポジションからスタート。
スペースを作って次の展開を目論むも、相手選手は体重を活かして潰しに来ます。
強引に締め技を仕掛ける相手選手、サイドポジションも取られていないのでポイントこそは入っていませんが、密着した道着から覗かせる表情は苦しそうです。
互いにポイントは0対0で、両陣営のセコンドにも熱が入ります。

セコンドの伊藤さんが「ワタル、自分の距離作れ!焦んなくていいぞ」と激を飛ばします。
伊藤さんは堀江さんと同じ高校サッカー部の先輩で、プロの格闘家としても活躍してる選手です。柔術に誘ったのも伊藤さんという事もあり、熱が入ります。
同じくセコンドの岩崎さんは、クールに指示を出していきます。
実は後から話を聞くと、セコンドから指示のトーンを落としていたのも戦略だったそうです。

堀江選手は相手の両袖を掴み、足の裏を相手の腕の肘に当てて距離を保ちます。このポジションは腕で引き、足で押すことで相手を固定、コントロールすることが可能です。
堀江さんは片足だけでも下から相手を制する技の引き出しを数パターン準備していたのです。
しかし、大きく形勢が変わることなく拮抗した状況が続きます。
階級別の試合を含めるとこの決勝戦で4試合目、互いに白帯での試合は技術の粗さや試合経験も浅いので、疲労は想像以上のはずです。
しかし、積極的な仕掛けで、最後の力を振り絞り得意のガードポジション、”ディープハーフ”の状態に持ち込みます。
これは師範である岩崎さんの得意技です。

下から積極的気にスパーダ―ガード、ディープハーフから試合を展開し、互いに決定的なポイントは尽きませんでしたが、堀江さんはアドバンテージ2をもぎ取り、試合終了がのブザーとなりました。

まさかのオープンクラスでの優勝です。

試合直後、戦った本人は疲労困憊で、喜ぶ余裕すらない状態でしたがセコンドの伊藤さん、岩崎さん、私は大喜びで、会場からも拍手が起こりました。

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試合後に岩崎さんから話を聞いたのですが、あえてクールにセコンドしていたのは、
「ポイント差が無く、拮抗した状態で堀江さんがボトムポジションだったので、敢てセコンドのトーンを落としたんです。もし、審判に不利な状況と認識されると印象が悪くなるので、状況も体力もキツかったと思いますけど、余裕あるように指示出したんですよ」
との事でした。
勝利を掴んだのは間違いなく本人の実力なのですが、岩崎さんの戦略もあって掴み取った優勝だったのです。

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格闘技は個人種目ではありますが、試合に臨むまでのトレーニングや、試合の時もセコンドが付いて選手に適格な指示を出します。
個人種目ですが”チームスポーツ”という事をこの試合で感じました。
今回の試合で出した技も、日々の練習で考えて”使える技”のバリエーションを増やしていった作業の賜物です。


堀江さんも初優勝を噛み締めていましたが、岩崎さんも弟子が自分の得意技で優勝した事をとても嬉しそうにしていたのが印象的でした。