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Dovydas Neverauskas

〜お題目〜
1章:ネバラスカスってどんな投手?
2章:掲げた目標への実行力
3章:変化球の軌道改善
4章:NPBで成功へ、克服すべき課題
5章:まとめ


【1章:ネバラスカスってどんな投手?】

 キャリアの殆どをリリーフとして活躍しており、直近5年間はリリーフでの登板のみとなっています。
 高い奪三振率(K/9)が最大の魅力で、3Aでは18年に11.3・19年に12.6をマーク。ボール変更による打高化の影響を受けた19年シーズンは、5.02ERA 1.38HR/9とやや不安定だったものの、17-18年は良好な成績をおさめています。一方MLBでは、持ち前の奪三振力はまずまず発揮できたものの、力及ばず最後まで定着することはできませんでした。また、リーグレベルを問わず与四球率が高い点は課題でしょう。

 投球スタイルについては、「4シーム+カーブ+カッター」が基本構成の選手で、シーズンによってはここにチェンジアップや2シームもミックスしています。
 4シームは常時150km/h台を記録するスピードボールですが、2018→2019→2020年と2年連続で球速は低下傾向にあります。今季だけでなく、キャリアの全シーズンで痛打を浴びており(xwOBAは>.400)、 MLBの舞台では通用していなかったことが窺えます。
 一方、持ち球で最も力のあるボールはカーブで、タイプとしては球速の速いスピンの効いたパワーカーブです。毎シーズンで、全奪三振の約6割を占めており、xwOBAでも唯一平均上の数字をマークするなど、強力な球種として機能しています。その他、カッターについては、20年は有効な球としても機能していたことが確認できます。(カッターが良くなった原因については後述。)

※ xwOBA
xwOBAとは、一つひとつの打球の速度と角度、つまりコンタクトの質を、過去のほかの選手も含めた打球と比較し、どれくらいの確率で単打、二塁打、三塁打、本塁打になっているかを見て、数値をはじき出したもの。
MLB平均は.321。球種別では4シームが.345、カーブが.265、カッターが.312。簡単に言えば、投手でいえばこれ以上で△、これ以下で○。

【2章:掲げた目標への実行力】
 マイナーオプションが尽き、今季が背水の陣だったネバラスカス。投球スタイルを確立するため、シーズン前に以下のことに取り組んでいたと、開幕前の記事で報じられていました。

『2つのベストピッチ(4シーム+カーブ)を軸としたピッチングスタイルに変更する。そして、打者がこれら2球種をより識別できないよう、リリースポイントを安定させる。また、2シームとチェンジアップは封印し、カッターを効果的に活用する。』

 実際、今季その変化があったのか。確認してみましょう。

 まずはリリースポイントです。
 2019年シーズンと比較し、今季はリリースポイントが安定していることが見てとれます。2球種のリリース高さの差が小さくなったことはもちろん、特にリリース幅の安定化で大きな進歩を遂げています。ここは当初の目標を見事クリアしたといえるでしょう。(この改善が科学的にどれだけ打者を欺くのかは別の問題として)

 次に投球割合の変遷です。
1章で既述した内容ではありますが、カーブの投球割合が過去最高の約34%を占め、2シームとチェンジアップは完全に封印していることが分かります。(実際4〜5球種をフル稼働していたのは18年だけですが)

 このように、結果として成績は伴っていませんが、掲げた目標を着実にクリアしようと動ける実行力は、NPBで成功を掴むにあたって強みとして働くかもしれません。

【3章:変化球の軌道改善】
 2017〜今季までの球種毎の変化量マップを以下に整理しました。今季の変化球について、見えてくることが二点あります。

① カッターの変化量増大
 17〜19年は横変化が非常に小さく、縦カット気味の軌道でした。20年はこれを改良し、横変化量を増やしていることが一目瞭然です。
この効果もあってか、同球種は19年は被打率.308 被ISO.231 空振り率19.2% xwOBA.516と打ち込まれていたものの、.143/.191/37.5/.248まで回復しています。

② カーブの変化量増大
 彼のカーブは、高速でハイスピンレートの所謂パワーカーブに位置付けられるのですが、変化量についてはMLB平均より縦横に小さいのがこれまでの特徴でした。20年はこれを改良。縦変化量が増大し、より縦割れの軌道になっていることが分かります。同球種は今季は被打率.303と打たれていますが、被長打は19年に続いて0、空振り率はキャリアハイの48.2%、xwOBA.208と優れた数値をマークしています。

【4章:NPBで成功へ、克服すべき課題】
① 4シームを大まかでも良いからコースに投げ分けよう!

 ネバラスカスがNPBで成功するために、まずポイントとなる要素は「4シーム」です。既述の通り、常時150km/h台を記録するものの、 MLBでは痛打され全く通用していませんでした。変化球は一定のレベルにあるため、当然ながらこのスピードボールこそが、NPBで通用するための鍵となってきます。
 では具体的に、どうすれば良いのか。鍵は「大まかなコマンド」にあると見ています。
下記の図をご覧ください。
 カーブやカッターが比較的ある程度の精度を持つ一方で、4シームは綺麗にど真ん中に集めてしまう傾向が見てとれます。4シームはキャリアを通じて低めに決まることは少なく、持ち前の角度を活かせる高めの強さも全く活用できていません。彼はパワーピッチャーですから、狙ったところにビシバシ決める細かいコマンドは求めません。4シームについて、落差を大きくしたカーブや球の強さを活かせる高低の幅の活用、軌道改善したカッターを活かせる外角への精度向上。この二点は意識的に取り組んでいくべきではないでしょうか。

② 可能であればクイックを工夫しよう!
 今季クイックで騒がせた選手といえば、日本ハムの新外国人ドリュー•バーヘイゲンです。今季は38回企画で32回許盗で盗塁阻止率は15.8%とフリーパスの状態でした。このバーヘイゲンですが、記録に残っている限りではマイナー時代は盗塁阻止率31%(49回企画で39回許盗)でした。一方、ネバラスカスはマイナー通算で、盗塁阻止率29%(69回企画で49回許盗)となっています。捕手の差の影響を当然受けるため、これだけで図ることはできませんが、両者の走者一塁時の投球タイムを何球か調べたところ、ほぼ同タイムでした。本当に実現するかは不明ですが、ネバラスカスにはスターター起用も公言されています。克服できない場合は、バーヘイゲン同様に、フリーパス状態になる可能性は高いと考えられそうです。


【5章:まとめ】

・ネバラスカスの投球は、「4シーム+パワーカーブ+カッター」が基本。決め球はパワーカーブで、カッターと併せて変化球の各種成績の方が優れています。4シームは2年連続で球速が低下しており、 MLBではキャリアを通じて痛打されていました。
・今季は、カーブはより縦割れに、カッターは横変化量を増やしており、特にカッターは改良の成果が顕著に表れています。
・4シームは、ど真ん中に集まる傾向があり、痛打の原因になっている可能性が高いです。落差を大きくしたカーブや球の強さを活かせる高低の幅の活用、軌道改善したカッターを活かせる外角への精度向上など、4シームの大まかなコマンド向上が求められそうです。
・クイックのレベルはバーヘイゲンと概ね同等。スターターでいくのであれば、球威を失わない範囲で可能な限りは改善に努めたいところです。
・シーズン前に自身で掲げた、"4シームとカーブのリリースポイント安定化"をはじめとした目標を見事にクリア。課題克服に向けた実行力は、NPBで成功するための強みとなるかもしれません。

注) 図表の表題が一部「dovyd"u"s」になっていますが、正しくは「dovyd"a"s」です。謝って図表のデータ消してしまい修正が面倒なのでご勘弁ください。

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