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ビヤヌエバの弱点・課題

1.趣旨
5日のお昼にビヤヌエバ選手に関してこのような記事が出ていました。

【谷氏打撃分析】巨人・ビヤヌエバは変化球に苦労する トップの位置バラバラ
打撃で気になったのは、バットがトップに来る場面だ。グリップを上下にヒッチさせるため、トップの位置がバラバラになる。真っすぐには対応できるかもしれないが、変化球に対しては疑問を感じる。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190205-00000028-dal-base

この記事の内容について、私の見解と相違があったため、ビヤヌエバ選手に関しては既に記事を公開してはいますが、彼の最大の弱点と課題に絞った内容で簡単ではありますが記事を書きました。
結論から申し上げると、私は変化球がどうこう以前に最大の課題はファストボール(真っすぐ)にあるものと見ています。
今回の記事ではその根拠についてお話しします。


1.検証

【検証1】右投手のファストボール
下記の図は前回のビヤヌエバ選手の記事で使ったファストボールへの対応一覧です。
こうしてみると、高め及びインサイドに難点を抱えていることが一目瞭然であることが分かります。(青のゾーン)
この弱点(青のゾーン)がどの球速帯まで落ちても一律で現れるものなのかどうかについて確認していきます。

今回の検証を行うにあたって、コースを以下の図の通りに大別しました。
大別の意図については図の下に表記しています。

①高めの検証
②インハイの検証…①と差別化
③インサイドの検証
④真ん中の検証
⑤外角の検証

これらの5つのコースに対し、以下の3つの球速帯に分類を加えます。

I. 145.0㌔未満…18年NPB平均143.6㌔
Ⅱ.145.0㌔以上150.0㌔未満…やや高速帯
Ⅲ.150.0㌔以上…高速帯

検証にあたっての指標にはxwOBAを使用します。
※ xwOBAとwOBA
xwOBAとは、一つひとつの打球の速度と角度、つまりコンタクトの質を、過去のほかの選手も含めた打球と比較し、どれくらいの確率で単打、二塁打、三塁打、本塁打になっているかを見て、数値をはじき出したもの。一方、wOBAは安打、本塁打、四球など、プレーの結果を基にどれだけやられたかを数値化している。
二つの指標の違いは、打球の評価に打撃結果を使うか(wOBA)、打球の質で結果を予測して使うか(xwOBA)、かの違いである。
出塁率と同じように見ることができ、.320-.330が平均的とされる。

①高めの検証
I. 145.0㌔未満…(サンプル0)
Ⅱ.145.0㌔〜150.0㌔未満…0.132(サンプル数4)
Ⅲ.150.0㌔以上…0.159(サンプル数12)

②インハイの検証
I. 145.0㌔未満….523(サンプル数2)
Ⅱ.145.0㌔〜150.0㌔未満…0.012(サンプル数2)
Ⅲ.150.0㌔以上…0.003(サンプル数6)

③インサイドの検証
I. 145.0㌔未満…(サンプル数0)
Ⅱ.145.0㌔〜150.0㌔未満…0.415(サンプル数3)
Ⅲ.150.0㌔以上…0.311(サンプル数8)

④真ん中の検証
I. 145.0㌔未満….000(サンプル数1)
Ⅱ.145.0㌔〜150.0㌔未満…1.019(サンプル数9)
Ⅲ.150.0㌔以上…0.376(サンプル数10)

⑤外角の検証
I. 145.0㌔未満…(サンプル数0)
Ⅱ.145.0㌔〜150.0㌔未満…0.013(サンプル数1)
Ⅲ.150.0㌔以上…0.166(サンプル数9)


※まとめ
ビヤヌエバ選手の最大の弱点・懸念材料は高めです。
高めについてはサンプル数に限りはありますが、球速帯に関わらず一律で数字残っていません(145.0㌔未満がサンプル数0)。ここがNPBの球速帯(18年NPB平均143.6㌔)まで落ちてきた場合にどうなるかがポイントとなります。
また、インハイについてははっきりとした形で弱点として現れており、145.0㌔以下ではサンプル数2の中で数字は残っているものの、145.0㌔以上の球には対応が難しい結果が出ています。この傾向は現巨人のゲレーロに近い傾向がありそうです。

しかし、インハイより高さを下げてあげたインサイドについては、冒頭の図では厳しい率などが残っていたものの、xwOBAでは145.0〜150.0㌔の球速帯でも平均上の数字が残っています。しかし、150.0㌔以上でも0.311とまずまずの数字が残っていますが、これはインローの数字が高いことに起因したもので、インサイドの真ん中に限定してみると0.061と対応は苦しい数値が出ています。したがって、150.0㌔以上の高速帯におけるインサイドの対応は、低めのインローは対応可能も、真ん中の高さ〜インハイにかけては苦しいという結果が出ています。
ただし、インサイドの真ん中の高さについては145.0〜150.0㌔では0.435と高い数字がのこつており、ここがNPBの球速帯に落ちてきた場合にxwOBA通り良化されてくるかがポイントになります。高めに比べると球速帯に応じて良化の傾向が見られるため、希望的観測のできる数字が残っている点が異なります。

③' インサイドの検証
I. 145.0㌔未満…(サンプル数0)
Ⅱ.145.0㌔〜150.0㌔未満…0.435(サンプル数2)
Ⅲ.150.0㌔以上…0.061(サンプル数4)

③" インローの検証…③'と差別化
I. 145.0㌔未満…(サンプル数0)
Ⅱ.145.0㌔〜150.0㌔未満…0.374(サンプル数1)
Ⅲ.150.0㌔以上…0.561(サンプル数4)

一方、これが真ん中寄りに入ってくるとビヤヌエバ選手の得意なゾーンになります。真ん中のゾーンでは145.0〜150.0㌔で圧倒的な数字が残っており、150.0㌔以上の高速帯でも平均以上の数字が残っています。一歩間違えるとという危険性をはらんでいます。
アウトコースについては、一般的な打者と同様、球速が速くなればなるほどその数字は落ちていくようです。



**【検証2】対右投手のスライダー **

①外角スライダーの検証…176
②低めのスライダーの検証….300
③抜けて甘く入ったスライダーの検証….191
④インサイドに抜けたスライダーの検証…(サンプル数0)

→低めのゾーンのスライダーをアッパースイングで捉えるのが得意なため、②のケースについてはまずまずの数字が残っていますが、外角スライダーには低い数字が残っています。


〈ボール球の見極め〉
(ここの内容は既に公開されている記事の転記)

ポイントとなってくる外角のボール球のスライダーの見極めですが、スイング率に注目してください。ゾーン内の外角の腰高と低めの2コースはスイング率が何も100.0%であるのに対し、そこから逸れていく外角のボール球のスイング率は計39.5%と見極めが意外にもしっかりしていることが分かります。
参考までに、他の外国人と同ケースを比較すると、ビヤヌエバ(100.0→39.5)、ロサリオ(79.0→43.3%)、ゴームズ(71.7→33.7)、ゲレーロ(84.6→41.5)、レアード(75.0→59.1)、ペーニャ(46.7→37.5)、マギー(65.3→20.6)、マートン(78.6→16.7)になります。

次に、低めのボール球のスライダーについてですが、こちらは、ゾーン内の低めの真ん中〜外寄りの2コースのスイング率が計93.3%であるのに対し、そこから落ちていくボール球のスイング率は計63.9%の数字が残っています。
以下に他の外国人との比較を明記しますが、こうしてみると低めのスライダーの見極めは、外角と比べればどの選手もタイプの違いに関わらず見極めが悪く、低いレベルの中ではありますが、ビヤヌエバはむしろ見極めはできていることがわかると思います。
ビヤヌエバ(93.3→63.9)、ロサリオ(79.3→65.9)、ゴームズ(70.7→55.9)、ゲレーロ(84.6→84.6)、レアード(70.6→53.8)、ペーニャ(37.5→52.8)、マギー(69.9→50.0)、マートン(70.6→60.0)

纏めますと、ストライクゾーン内の外角そして低めのスライダーには、今回リストアップした外国人の中では最もスイング率が高く、極めてアグレッシブにも振っていく傾向が出ています。
このストライクゾーンに来た球は殆ど全て振っている前提の中、外角のボール球には約60%、低めのボール球には約36%スイングせずに我慢ができています。全体的にみても、マギーやマートンほどではないにせよ、ロサリオやゲレーロやレアードらよりは良好な数字が残っています。
同コースのボール球のコンタクト率に関しても良好な方であり、今回リストアップした選手の中ではマートンについで高い数字が残っています。

右投手のスライダーへの脆さが大きく懸念されていたビヤヌエバですが、 NPBまで球速レベルが落ち、また日本の野球に慣れてくれば、スライダーに関してはついてこれる可能性を感じられるのではないでしょうか。


3.まとめ
今回記事ではスライダーにしか触れませんでしたが、変化球以上にNPB規格のファストボールにどこまで対応できるのかが最大のキー・前提条件だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ファストボールへの対応が良化すれば元々見極めに優れたスライダーへの数字も上がってくるでしょうし、NPBの球速帯にして尚対応に苦しむようであれば変化球への数字も上がってこないと考えられます。
高めへの対応、インサイドへの対応。
ここに要チェックしながらビヤヌエバ選手を楽しんでいただければ幸いです。


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