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25年の伴走者~編集者へ感謝を込めて~

”いつもの”編集者A氏と一緒にオンライン・ミーティング。
参加者より「田中さんとAさんは、いつから仕事されているんですか?」とご質問。

「20年くらい前かな?」私が答えると、「いや、最初の本をつくりはじめたのは25年前ですね」とAさん。

あとから聞いた話では、「新人著者の会計本」を担当することになったAさん、「なんだ、会計か」と思ったそうな。

そこから25年が経ちました。彼とは長い付き合いの中で20冊以上の本を世に出しました。業界通の質問者は、「ええっ!25年で20冊以上!なんか文芸みたいですね」と驚いています。

言われてみれば、これはビジネス書業界では異例の長さかもしれません。
ミーティングが終わってコーヒーを飲みながら、その小さな奇跡について考えていました。

やっぱり長いぞ、25年

著者と編集者が25年にわたってビジネス書でコンビを組み続ける--これは、たしかにすごいことなのです。25年も経てば、どちらかが「脱落」していても不思議ではありません。というか、それがふつう。

どんな商売でもそうですが、「①売る→②儲かる→③続ける」をすべてクリアしないと商売が持続できません。

著者と編集者、それぞれの立場で仕事を「続ける」ことは、そう簡単ではありません。
著者側からいえば、「書き続ける」ことはなかなか難しい。1冊書くことができたとしても、2冊目、3冊目になるとネタが切れてきます。また、それらがある程度売れなければ、「次、お願いします」の声が掛かりません。

実は私、著者を続ける上で、誤解していたことがあります。初著作が運良くホームラン級のヒットになったことで自分のことを「ホームラン打者」と思い込んでしまった。しかし、それは大きな勘違いであり、出版社が期待していたのは、「ヒットを量産する高打率打者」だったのです。

出版社幹部との食事で「田中さんは会計という地味な分野で次々とヒット出してくれるからな」と言われてハタと気が付きました。それからバッティングフォームを修正、「ヒットの延長がホームラン」打法に切り替えました。
たぶんいまも「ここという場面で打ってくれる勝負強さ」を期待されているのだと思います。ならばその期待に応えることが重要。そこへ軌道修正ができたのは、いつも伴走してくれながら的確なアドバイスをくれたAさんのおかげ。

一方、いまや有名編集者となったAさんも、よくぞここまで幅広い分野でヒットを連発してきたものだと感心します。そこには彼なりの時代を読む嗅覚があったことは間違いありません。
はじめ「なんだ、会計か」と思った彼も、いまや「会計書ならA」と言われるほどになっています。これはぜったいオレのおかげだ(笑)。

あと、大手出版社の場合、他の仕事への異動もあるし、歳を重ねると管理業務をやらされるし。現場での本作りをやむなく離れてため息つく編集者を何人も見てきました。
それをなんとかやりすごし、部下の管理業務をこなしつつ現場の本作りを続けている彼の”実力”のおかげで私は一緒に彼と仕事ができています。

フリーランスにとって貴重な「仕事の相棒」

お互いの場所でそれぞれ苦労しながら、25年もコンビを続けてこられたこと、それはちっぽけではありますが、やはり奇跡だと思います。
会社の同僚ではなく、フリーランス同士でもなく、「会社員&フリーランス」コンビで彼と仕事を続けてこられたことは、私にとって本当に幸運でした。もしかしたら夫婦や家族より「仕事の相棒」を見つけることのほうが難しいですものね。

最近、電子出版関係、自費出版のオファーも数々いただきますが、そちら方面にはまったく興味がありません。私にとって書籍づくりとは「編集者と一緒に歩む」仕事に他ならないからです。編集者無しで本を作るというイメージがまったく沸きません。

さて、25年経って、「あと何冊書けるか」を考えてしまう年齢になりました。おそらく彼もそうだと思います。実のところ、著者仲間でも編集者でも、体調を壊して仕事から離れた人が何人もいます。お互い健康に気を付けつつ、好奇心を絶やさず、まだまだ一緒に仕事を続けていきたいな。

ここから久しぶりに彼とのコンビで2冊ほどつくる予定です。落ち着くことなく攻めようと思います。昭和コンビの実力をみせるべく、久しぶりに「三振覚悟の大振り」しようかと思案中。

そうそう、私とのコンビのせいで彼は、数々の奇妙奇天烈な出版記念講演会を何度も経験することになりました。落語家の立川晴の輔さんや講談師の神田京子さんとの会では座布団をひっくり返す前座的な仕事も経験済み。おっかなびっくりだった司会も、最近は立て板に水のごときになり、不必要な笑いまで取っています。これもぜったいに私のおかげ。

これからしばらくのち、コロナが収まった頃には新作を出版できると思います。その際は彼と一緒に出版記念講演会をやりますので、どうぞ「25年コンビ」の応援に来ていただければと思います。

皆さんもそれまで健康に気を付けてお過ごしいただき、会場まで足を運んでくださいませ。お目に掛かれる日を楽しみに。

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