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発送したら費用を計上するのか~経理現場あるある#4~

こんにちは。公認会計士の大塚です。
今回も経理現場であった費用計上のタイミングのお話をしたいと思います。

いつ義務が発生するのか?

決算を控えた3月中旬のある時、こんな相談がありました。
(3月決算の会社が前提です)

営業部の経理担当者A(以下、営担A)
「こんにちは、大塚さん。少しご相談があるのですが。」

大塚「こんにちは、Aさん。今日はどうしたんですか?」

営担A「またまた費用計上についてのご相談です。
じつは1月から2月末までX商品の販促キャンペーンを開催してまして、3月15日までに応募したお客様の中から抽選で100名様にオリジナルQuoカード1,000円分をプレゼントすることになっているんです。
ただ、抽選が3月末なのでQuoカードの発送は4月上旬になります。
この場合、Quoカード購入代金10万円については、発送する時である(翌会計年度の)4月に費用計上すればいいかなと思ってるんですけど、あってます?」

大塚「なるほど。キャンペーンはすでに終了しているんですね。
ちなみに応募者はどのくらいいるのですか?」

営担A「キャンペーンは好評で、正確な数字までは覚えてないのですが、応募者は10,000名を超えています。」

大塚「そうすると、100名へのプレゼントは確実なんですね。今の時点では誰が当選するか決まってないけど、3月末の決算までには決まっているという状況なわけですね。」

営担 A「はい、そうです。」

大塚「なるほど。
それではQuoカード代金10万円は3月に費用計上してください。」

営担A「え?そうなんですか??」

大塚「はい。プレゼント代金は2月末で終了したキャンペーンの対価として発生した費用です。
それに3月末の時点でQuoカードを受け取る人も100名確定しているわけですから、当社が当選者にQuoカードをプレゼントする義務は3月末で確定しているわけですよね。
Quoカード代金をいつ計上するかについては、Quoカード発送のタイミングはあまり関係ないんです。

仮にQuoカード発送のタイミングで費用計上できるとすると、費用を計上したいタイミングまで発送を先延ばしすることが可能になってしまいます。
そうすると利益操作できることにになってしまいますのでNGなんです。」

営担 A「なるほど、たしかにそうですね…。
わかりました、3月の費用に計上します(予算枠あったかな…)」

キャンペーンの内容や義務をきちんと把握しよう

今回のケースは、キャンペーンがすでに終了しており、かつプレゼント当選者も3月末までに確定するので3月に費用計上すべき事例でした。

ただし、実務ではもっと複雑な事例が起きます。

例えばキャンペーン期間が2月1日~4月30日までの場合のように3月決算時期を跨いだ期間である場合や、キャンペーンの当選対象者が決まるのが4月以降になる場合などが考えられます。

キャンペーンはビジネスですから、キャンペーンをやるのに一番効果的な期間を設定するのが通常です。
会計期間に合わせてキャンペーンをやるというのは(経理担当者は助かりますが・・・)考えにくいですよね。

その際会計処理を考えるうえで一番大切なのは、キャンペーンの内容、実施時期、どんな義務があるかなどをきちんと把握することだと思います。

例えば今回の事例でキャンペーン期間は3月末までに終了しているが、100名の当選者は未確定でも、応募者が10,000名を超える以上、商品代10万円の発生は確定しており、3月末に費用計上すべき、ということも考えられます。

ただし、ひとつ気をつけたい点があります。

それは、会計上では費用処理しても税務上は損金算入が認められない場合もありうるということです。
例えばプレゼント対象者が確定していないと支払い義務が確定していないとみなされ損金算入が認められない場合もあります。
そのため、判断に迷ったら顧問税理士にご相談することをお勧めします。

まとめ

今回は販促キャンペーンを題材に、費用の計上タイミングについて書いてみました。
少し込み入った内容でわかりにくかったかもしれません。

販促キャンペーンは、営業担当の方が商品を売るために知恵を絞って行うものであり、その形式は一律でない場合が多いです。
経理担当者としては、きちんとキャンペーンの内容を把握したうえで、適切な会計処理をしたいものですね。

迷ったときは、その事象からいつ、どんな義務が発生するのかをきちんと整理してみてください。

そして、ややこしい話は悩まずに監査法人や顧問税理士などの会計専門家にご相談することをお勧めします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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