心臓音のアーカイブ-直島旅行記vol.7-
心臓音のアーカイブ
ここで人は様々な想いに浸るであろう
人の命の脆さ 脆さ 尊さ ー
何かを残したいと願いと何も残りはしないという想いとー
心臓音のアーカイブはアーティスト・クリスチャン ボルタンスキーによる作品である。豊島の瀬戸内海に面した場所に作られたこの作品は、ボルタンスキーが世界中から収集した心臓音を使ったインスタレーションである。
のんびりした豊島美術館の雰囲気を引きずったまま、豊島の端にある「心臓音のアーカイブ」に向かった。道中に色とりどりの花々(各々の名称はわからない)が咲いていたので、持ち合わせていた「写ルンです」で何枚か写真を撮った。海沿いに立っている小さな黒い小屋に到着した。これが心臓音のアーカイブであり、中にはインスタレーションが展示されている「ハートルーム」、世界中の人の心臓音が聞ける「リスニングルーム」、自身の心臓音を録音できる「レコーディングルーム」があった。
ハートルームに入った。と同時に強烈な不安感にも似た感覚になった。真っ暗な室内は心臓音が大音量で響いており、中央に天井からぶら下がっている一つの電球が心臓の鼓動に呼応してついたり、消えたりしていた。母親のお腹の中にいるときはこんな感じだったのか。耳に響いているのは世界のどこかの人の鼓動であろうが、その生の生々しさが直に入ってきて気圧された。
リスニングルームでは、パソコンで検索で世界中の人の心臓音を一言とともに聞ける。レコーディング場所を「Japan」で検索をかけて、適当に聴いてみた。「家族で旅行に来ています。またみんなでこれたらいいな。」と一言があり、顔も知らない男性の鼓動を聴いた。「人生の夏休み終了!!」「私が生きた証」などの一言とともに何人かの知りもしないひとの心臓音を聴いた。皆、理由は何であれ確かにそこに生きた”しるし”がアルバムのように残されていた。
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「Are you fine ? I'm in Teshima now. Here is very beautiful!!」
一気に心のダムが崩れ、涙が溢れた。心臓音に共鳴したかのように自分の鼓動が早くなる。生きる意味や脆さ、儚さ、諦念を持って縛られ孤独に感じていた。
「Are you fine ?」
自分に声かけられている気がして、独りではないと勝手ながら思った。
その後、目の腫れがひくのを待って、心臓音を録音しその場で聴いた。ドゥンドゥンと自分の生の強烈さに驚いた。
「元気ですか?いま豊島に一人で来ています。その鼓動は何のため?」
と未来の自分に向けて綴った。
最後まで読んでいただきありがとうございます!! 東海道中膝栗毛の膝栗毛って「徒歩で旅する」って意味らしいですよ