【short-short】悟ったネズミ(489字)
しまった…捕まった…
毛並みの良い猫に咥えられながら、僕は後悔していた。
花や木の実、虫がたくさんいる餌場を見つけたと思ったら
そこは猫が住んでいる家の庭だった。
幸い、猫は僕をすぐに食べるつもりは無いようで、
僕を咥えたままどこかに、おそらく人間のもとに、運ぼうとしている。
庭の手入れをしていた人間は、猫に誇らしげに僕を見せられて驚いていた。
僕は助けて!と声を張り上げる。
チュウ!!
「……まあ!さっちゃんが捕まえたの?狩りが出来て偉いわね。
ご褒美のおやつをあげるから、そのネズミを逃がしてあげて。」
僕の言葉が通じたのか、猫と人間は僕を解放してくれた。
ほっとして巣に帰ろうと歩き出したとき、僕の身体はふわっと
浮き上がった。
??
悔しそうにこちらを見上げる猫と、呆気にとられた様子の人間を
見下ろしながら、僕は自分を浮き上がらせているものの正体をみる。
カラスだ。
僕はカラスの爪につかまれて空を飛んでいた。
爪は僕の身体にぐいぐいと食い込んで、カラスが僕を
逃がす気が無いことが分かった。
僕は空から街を見下ろす。
こうならなければ、一生見ることのない光景だろう。
そう考えると、悪くない最期かもしれない。
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