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限築杯 観戦記事 準決勝 よしか@チームボムエッグ vs Gallow ~天使が笑むのは一人だけ~

text by いちごピザ


本来の開始時間の30分前に、主催者である添削はこうつぶやいた。

まるで参加者たちの気持ちを代弁するかのように、大会への期待が詰まったツイートだった。

しかしながら楽しい時間というものは得てしてあっという間に進み、100人近くいた参加者も4人まで絞られた。多くのものはプレイヤーから観戦者へと代わり、このイベントの最後を、勝者の姿をその目で確かめようとしている。

前置きが長くなったが、決勝進出をかけてぶつかり合うのはこの2人だ。

準々決勝でBBBを倒したGallowと、R1のフィーチャーマッチからもわかる通り対コントロールに絶対的な腕を持つよしか@チームボムエッグ(以下、よしか)だ。

コントロール vs クロックパーミッション。古来より続く、青同士のマッチアップをみていこう。


Game1

先手よしかはマリガン。BBBの重要な初動であるB(Bear)を展開できないが、Gallowのアップキープに《氷/Ice》キャストしてお互いに第2ターン目をスキップした形を作る。続く3ターン目には《カヴーのタイタン/Kavu Titan》が最初のクロックとして召喚された。

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しかし、それを待ち受けていたのは対緑への切り札《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》。もちろん火力で焼かれないように黒マナは確保済みだ。

するとよしかは地上を捨て、《ガイアの空の民/Gaea's Skyfolk》を召喚して勝負を上空へと切りかえる。とにかくGallowがゲームを支配する前に、ダメージレースで先行する必要があるためだ。

対して、Gallowがボードよりもまずは後続を断つことに注力する。《ジェラードの評決/Gerrard's Verdict》で《排撃/Repulse》と《予言の稲妻/Prophetic Bolt》を奪うと、《名誉回復/Vindicate》で土地を縛る。互いにカウンターを交えてカード交換しつつも、Gallowがボードのクリーチャーを丁寧に除去し始めると、いよいよ優位は不動のものと思われた。

よしかは《疾風のマングース/Blurred Mongoose》をコツコツと地上に並べていく。現状《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》で完全に止まっているとはいえ、単体除去とカウンターに耐性を持つこのクリーチャーが複数体横に並びだすと、そのプレッシャーは尋常ならざるものとなる。よしかはその時が来るまで、じっと息をひそめていた。

そして、《調査/Probe》を《神秘の蛇/Mystic Snake》で対処した返し。唐突にその時はやってきた。

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2つ目のB(Bounce)である《排撃/Repulse》を一方の《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》へ打ち込むと総勢4体のクリーチャーでフルアタック。幸い《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》2号機で《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》を打ち取ることに成功するが、6点が通り残りは4。《総くずれ/Rout》をケアした《暗影のボブキャット/Penumbra Bobcat》を追加する。

Gallowは《総くずれ/Rout》の後、トークンを止めるために《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》を召喚。その代償としてほとんどの土地を寝かせてしまう。

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よしかはその隙を逃さない。自身のターンに入ると最後のB(Burn)である《予言の稲妻/Prophetic Bolt》を提示し、見事にライフを削りきってみせたのだ。

よしか@チームボムエッグ 1-0 Gallow


Game2

互いにテイク1マリガンで始まったゲーム2。緑マナが出ないよしかを尻目に、Gallowは先手の利を生かし《名誉回復/Vindicate》でマナを締め上げる。よしかはスタックして《氷/Ice》でキャントリップして返すターンに《森/Forest》を引き込むことに成功、《疾風のマングース/Blurred Mongoose》を召喚する。

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青同士のマッチアップだからこそ、このタップアウトのチャンスは見逃せない。Gallowは《嘘か真か/Fact or Fiction》で手札に《反論/Gainsay》と土地を追加した。

ハンドアドバンテージは遅れたとしても、ダメージで先行を画策するのは常によしかだ。《ガイアの空の民/Gaea's Skyfolk》で上空へクロックを用意し、《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》は無視を決め込む。残念ながら《ガイアの空の民/Gaea's Skyfolk》は《名誉回復/Vindicate》が打ち込まれ、《排撃/Repulse》で救出を試みるも《反論/Gainsay》にはじかれてしまうのだが。

よしかの懸念は飛行クリーチャーとマナの不足だ。3マナで止まってしまい、なかなかクロックを守りきれない。なんせ《神秘の蛇/Mystic Snake》をプレイできないのだから。
だからこそGallowは《はね返り/Recoil》まで使ってマナを徹底的に締め上げていく。途中《十二足獣/Dodecapod》を捨てられてしまうが、たまらずマナが無いうちにと《総くずれ/Rout》し、戦場には平穏が訪れた。

手を止めるわけにいかないよしかもクリーチャーを追加するが《足縄/Hobble》、《除外/Exclude》と徹底的に後続を潰され、しかもアドバンテージでも圧倒されてしまう。

《頭の混乱/Addle》で《反論/Gainsay》を捨てられると、残るはクリーチャーのみ。カウンターがないことでGallowは流れるように《嘘か真か/Fact or Fiction》へと繋ぎ《十二足獣/Dodecapod》と《撹乱/Disrupt》が手札へ加わった。

両陣営にひたすらクリーチャーが並び膠着するが、これを最後に打ち破ったのはやはりインスタントトリックの多いGallowだった。エンドにキッカーの《総くずれ/Rout》をキャストして、よしかの手からカウンターを炙り出すと、自分のターンへ入り再度《総くずれ/Rout》。
盤面を平にした後に、《荒廃の天使/Desolation Angel》が舞い降りたのだ。

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戦場にたたずむは、戦乙女ただ一人。勝負は最終ゲームへと移る。

よしか@チームボムエッグ 1-1 Gallow


Game3

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これまでの不運を払拭し、遂によしかは2ターン目にクロックを配置することに成功する。しかも極上の《疾風のマングース/Blurred Mongoose》と好発進だ。続くクロックは《暗影のボブキャット/Penumbra Bobcat》。

Gallowは《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》でスローダウンを目論むが、それを許さず《排撃/Repulse》をキャストして4点。再召喚された《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》も《排撃/Repulse》されてしまい、5ターン目を前にライフは半分となる。やはり先手のBBBの押し込みは半端ない。

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三度目の正直と、《急流/Rushing River》を《反論/Gainsay》ではじくと《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》が定着。バウンスが切れたところで、2体目の《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》が召喚されるに至っては、完全に地上は止めることに成功する。
ここからGallowは1ターンに1枚ずつ、マナを残しながら丁寧に《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》を追加していく。4枚目をプレイした瞬間は対戦中にもかかわらず、お互いに思わず噴き出してしまったほどだ。

地上は止まった。「ならば」と、よしかは再び上空へとクロックを放つも壮絶なカウンター合戦の末、ならず。

繰り返そう、地上は完全に止まってしまった。だが、見方を変えれば支えているのはタフネス1の4体の《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》だけだ。よしかは《火/Fire》でダメージを稼ごうと再々チャレンジするも、レスポンスされた《嘘か真か/Fact or Fiction》は無情にも《ドロマーの魔除け/Dromar's Charm》をめくってしまう。ここにきてGallowのドローは冴えわたり、防衛線を維持したのだった。

よしかの手札に有効なアクションスペルはないが、これ以上待っていてもゲームが好転するとは思えない。わずかにダメージを蓄積させることで、今後の火力のトップデッキを活かす道を選択する。相打ち上等、5体のすべてのクリーチャーを攻撃へと送り出す。その中に複数体の《暗影のボブキャット/Penumbra Bobcat》がいたことで、頭数を減らさずに2点ずつライフを詰めていく。

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この時Gallowは長時間に渡る疲労からか、わずかにミスをしてしまう。《暗影のボブキャット/Penumbra Bobcat》のトークンを《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》でブロックした際に、再生の起動を忘れてしまったのだ。《暗影のボブキャット/Penumbra Bobcat》は緑だが、生まれたトークンは黒なのだ。
この機を逃さぬよう、よしかは再度4体攻撃し、残るライフは4。《予言の稲妻/Prophetic Bolt》の射程圏内まで引きずり落とす。

だが、Gallowも座して死を待つ男ではない。着々とマナを貯め、自身の優位を確固とする瞬間を待っていたのだ。ライフが4となったよしかのエンドに、《総くずれ/Rout》。そしてこれが通ると、返すターンに《頭の混乱/Addle》をキャストする。

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よしかはここに《神秘の蛇/Mystic Snake》を使わざるを得なかった。《荒廃の天使/Desolation Angel》のために我慢に我慢を重ねて持ち続けたが、カウンターはほかになかったのだ。

蛇の着地を見届けると天使が降臨し、《ハルマゲドン/Armageddon》が吹き荒れる。《総くずれ/Rout》からの天使の黄金パターンを前に、勝負あったかと誰もが思ったことだろう。

それでもよしかの目は死んでいなかった。残る4点のライフを削るため、片っ端からクリーチャーを並べていく。幸いにして《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》はすべて使いきっており、相手は重い立ち回り。カード交換を続けていけば、いつかは隙が訪れるはずだった。《嘘か真か/Fact or Fiction》にスタックして《火/Fire》をキャストして、Gallowの残ライフは2。クリーチャーの頭数は上回った瞬間に勝利が確定するのだ。

Gallow S「墓地に《火+氷/Fire/Ice》は何枚ですか?」

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2枚と返事をもらうと、Gallowは一転して天使で攻撃に打って出てよしかのライフを11とし、キックなしで《荒廃の天使/Desolation Angel》を追加する。Gallow Sは自身の土地が消し飛ぶことをいとわずに、短期決戦を仕掛けたのだ。そして、たとえ土地がなくともこの5/4クロックは十分すぎるほどだった。

よしかも何とかクリーチャーを召喚するも、すべて地上のみ。丁寧にブロッカーを残しつつ単体で攻撃されて残るは6。《氷/Ice》すらもケアして《名誉回復/Vindicate》を土地へと打ち込むと、マナこそ出すもよしかの手からレスポンスはなく…。

《荒廃の天使/Desolation Angel》が攻撃へと向かい、80分に渡る熱戦に終止符が打たれた。

よしか@チームボムエッグ 1-2 Gallow