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こびスぺ雑談会~変異ウイルスデルタに対するワクチンの効果、個別症例の因果関係など~(7月8日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年7月8日時点での情報を基にされています。※

2021年7月8日(木)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:峰宗太郎

峰宗太郎
さて、時間になりましたかね。まだかな? ちょっと手元に時計が無いんですが。

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
ちょうど8時半ですね。

峰宗太郎
どうですか? 何か変わったことありますか? ひまみみ先生。


【大阪大学忽那教授-前田先生レポート】

前田陽平先生
実は昨日ですね、*忽那先生にお会いしてきました。それくらいです。

 ※忽那賢志先生・・・大阪大学感染制御医学講座教授(2021.7.1~)

峰宗太郎
おー!
着任されたんですね。どうでしたか?

前田陽平先生
そうです。7月1日着任で。
花に埋もれた教授室でご挨拶して、少しお話をさせていただきました。

峰宗太郎
どういうことでご挨拶だったんですか? 「ネットでお世話になっています」という感じなんですか?(笑)

前田陽平先生
ハッハッハッハッ!
無茶苦茶平たく言えばそういうことですかね。こういうことがなければ「東京へ行ったときにでもお会いしたいですね」という話はあったのですが、長くお会いするチャンスが無くて、このたび「大阪へ来たので」ということでお会いできました。

峰宗太郎
おー! そうなんですね。ネットではお知り合いだったんですか?

前田陽平先生
あ、そうですね。ネットでお話をする機会を得て…実はだいぶ前に「大阪に勤務することになるかもしれないから」と、まだ教授就任が全然本決まりじゃない段階で伺っていました。「大阪で勤務。なるほどなー」とか思っていたら「実は教授選に出ていて」という話にちょっとお会いできたらなって。それで昨日ついにお会いできて、とても良かったです。

峰宗太郎
すごいですよね! 忽那先生も若くして大阪大学の教授ですからね。

前田陽平先生
そうですね。僕と学年で1つしか変わらないのですが、本当にすごいですよね。

峰宗太郎
前田先生いつ教授になります?

前田陽平先生
ハッハッハッ! 予定無いです。ありがとうございます(笑)

峰宗太郎
無いの? なったら面白いですよ。医局員いじめてねぇ、好きなとこに飛ばして。

前田陽平先生
おっとー! 恐ろしい。そんなダメな白い巨塔が今もあるんでしょうか?(笑)

峰宗太郎
白い巨塔のモデルはどこだか知ってますか?

前田陽平先生
ええ、どこでしたかねー。確か浪速大学とかいう大学ですね。

峰宗太郎
浪速大学か♪ 近くかもしれませんね♪

前田陽平先生
いやいや、恐ろしい。

峰宗太郎
忽那先生には僕の代わりに媚びを売っておいてください。こびナビではなく媚び売りで。僕も就職先として忽那先生のところ考えようかな。

前田陽平先生
感染症制御学ですね。

峰宗太郎
忽那先生はね、僕は国立国際医療研究センターのときに一緒だったんですよ。

前田陽平先生
そうなんですね! なるほど。やはり国立国際での人脈は本当にすごいようですね。昨日もちょうどその話が出ました。非常にいろいろな人が出入りするから、多くの人と知り合えてすごく良かったとお話をされていました。

峰宗太郎
はい。国際医療研究センター病院の前に「うん」て付けて言ってみていただけます?

前田陽平先生
いやいやちょっと待……僕が言う係なんですか?それ(笑)
ちょっとなかなか、文字起こしは……(笑)

峰宗太郎
「うん」「国際医療研究センター」って言うんですけど。

前田陽平先生・峰宗太郎
ハッハッハッハッハッ

峰宗太郎
言っちゃったー(笑)

黑川友哉
こら!

峰宗太郎
こら? あ! 誰かに怒られましたね。いま怒っていたのは誰ですか?

黑川友哉
こら! くろかわですよ。

峰宗太郎
どうですか? 黑川先生は今週というか、今日何かありましたか?

黑川友哉
まあ、最近寝不足ですけど……。

峰宗太郎
寝不足! なんでですか?

黑川友哉
最近いろいろと忙しい時期ですからね。申請書とか重なる時期じゃないですか。

峰宗太郎
おおー、なるほど、申請書ですね。新型コロナワクチンの効果は落ちている?

黑川友哉
あとは、新型コロナワクチンの効果が落ちているんじゃないかという報道で賑わっている気がしますね。

峰宗太郎
そうなんですねー。

黑川友哉
え、そうなんですねって…(笑)

峰宗太郎
いや、どういうことか解説していただこうと! 今日のスペースは「こびナビの雑談会」と名付けてありまして、お題を用意していないんですよ。

黑川友哉
いや、いつも峰先生はお題を用意されないじゃないですか。

峰宗太郎
(ケタケタと響く高笑い)
いや、すごい笑い声を出しちゃった。バレた!(笑)

ワクチンの効果が落ちていることに関して、黑川先生はどうお考えですか?

黑川友哉
イスラエルからのデータを根拠に、ワクチンの有効性が落ちているという報道が見られます。トータルで見た時に、以前よりも数値上で有効性が落ちていると評価されるのは仕方ないのかなと思います。イスラエルのデータかと思いますが、基本的にはワクチンを接種されていない方の感染や、デルタ型変異ウイルスの広がりが反映された結果でしょう。

ただ一方で、アメリカではデルタが半分以上を占めているという報道がありました。それでも感染は落ち着いてきている状況ですので、一概にワクチンの効果が落ちているというのもどうなのかな、ちょっとわからないなと考えています。

峰宗太郎
そうですね。ワクチンの効果が落ちているのは、基本は「変異ウイルスに対する効果が落ちている」ということですね。

黑川友哉
そうですね。それを反映していると思います。

峰宗太郎
まず、臨床試験の第3相の試験はしっかりしたものでしたし、その後 *effectiveness でもいい値が出て、それが否定されているわけではないですね。

※日本語でいう「効果」について、英語では次の3種類があります。
<基礎研究の観点から>
immunogenicity
免疫原性。臨床検査上は中和抗体ができているか、どの程度出来ているかなどで測る生物学的反応の効果。
----------------------- 
<疫学の観点から>
efficacy
臨床試験(ランダム化比較試験)で検討し判明した効果。 
effectiveness
実社会で実際に接種した時の効果。


黑川友哉

その通りだと思いますし、やはり広くワクチンの接種が行き渡ることで、数字は変わってくると考えています。

峰宗太郎
そうですね。効果については様々な報道がありますが、あまり心配せず、ワクチンを打たないよりも打った方が遥かにましなのは間違いないです。

ワクチンを貶めたい方は喜んでいらっしゃるようですが……ツイッターで見ていると、なんか喜んでますよね。

黑川友哉
喜んでるんですか?(笑)

峰宗太郎
うん。人の不幸を見て喜ぶような人たちが多いじゃないですか。ワクチンの接種が進まないと「ほら!ほら!」とか言って喜んだりしてね。

黑川友哉
確かに、自分の主張に合うようなニュースが出てくると自己肯定にも繋がるのかなという気はするので、そういう感情の表れなんでしょうね。

峰宗太郎
そういう方向に振れず、人の幸せを喜ぶように人間性を得ていきたいと僕は思ったりします。まあ、それは人の価値観に踏み込む余計なおせっかいなのでアレですね。

谷口先生、何か最近の話題がございますか?


【コロナバックの論文】

谷口俊文
NEJM(The New England Journal of Medicine)で、チリで使われた中国製ワクチン「コロナバック」(シノバック社)のデータが出てきて…

※参考:
Effectiveness of an Inactivated SARS-CoV-2 Vaccine in Chile
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2107715
出典: The New England Journal of Medicine 2021/7/7

前田陽平先生
(興奮した様子で)めっっちゃその話聞きたかったです! めちゃくちゃいいっていう話ですよね。

峰宗太郎
谷口先生、簡単にどういう状況なのかだけ教えていただいてもよろしいですか?

谷口俊文
あ、ごめんなさい! いま(資料が)手元になくて。

峰宗太郎
全然数値とか無くていいです。具体的でなくても、どんな感じかだけで大丈夫です。

谷口俊文
有効性に関しては70%程度で、重症化を防ぐ有効性に関しても90%程度でしたっけね。割と良くて驚いたというのが正直な感想です。これが本当であれば非常に有効だと思いますので、接種が広がるとそれなりに感染を抑えられます。コロナバックについては既に普及している国があります。実際に使われた国々での実績が今回の臨床試験とマッチするのかどうかが微妙かなと感じています。

峰宗太郎
なるほど effectiveness と efficacy の差がありそうだということですね。

谷口俊文
そうですね。僕は詳しくないのですが、峰先生はモンゴルがシノバックとシノファーム、どっちのワクチンを使っているかご存知ですか?

峰宗太郎
あー! 僕もモンゴルでの製品名はわかんないですね。中国製ワクチンが多いとしか聞いていません。

谷口俊文
モンゴルには中国製ワクチンが普及していて、既に人口の60%以上が接種しています。その割には感染者数のみならず死亡者数も高いままなので、effectiveness という観点ではイマイチかもしれず、その辺りの裏がまだ取れていなくて、どうなのかなと思っています。今回発表された論文が本当であれば、非常に嬉しいニュースですね。

峰宗太郎
ありがとうございました。中国製ワクチン、ロシア製ワクチン、インド製ワクチンは、実は世界で結構なシェアを占めています。だから使用する国も多いですし、中所得国とか、中国やロシア、インドがワクチン外交を展開したため、一般的に言うとそれらと仲の良い国がそれぞれの国のワクチンを使っているわけです。そういった国々で
「接種はしたものの感染が広がってるんじゃないか」
「効果はどうなんだ」
と皆が疑問を持っていました。WHO も中国製ワクチンを承認していますが、実際の効果がどうなのかについては欧米でも話題になっています。専門家の間でも意見が分かれていたところに論文が出てきて良かったです。

しかし、データをどこまで信用するかについては不明点もあります。やはり実施する体制、国等によって、しっかりと管理ができているかは気になりますね。
実際、論文の内容によっては完全に信用して良いのか分からないこともあります。以前「ロシアのスプートニクというワクチンは非常に良い効果」という論文が出ましたが、その後いろいろ「ちょっと違うんじゃないの」と疑義が出て、解決はしていませんが問題になった前例もあります。1個の研究だけでバシッと何かを言ってしまうのは危険なので、いくつか見ていきたいですね。

その点、メッセンジャーRNAワクチン(以下 mRNAワクチン)などでは、確かに第3相の試験の論文は1本にまとまっていることが多いですが、その後リアルワールドで投与した effectiveness のデータがきれいに出て、情報が集まっています。
新型コロナワクチンは製品によって差がかなりある状況ですが、少なくとも中国製ワクチンについては情報不足で、どうなんだろうと皆で言っていたところに判断材料が少し増えたのも素晴らしいと思います。

安川先生は何かありますか?

安川康介
3時間半前まで峰先生とずっと話をしていました。

峰宗太郎
はい、僕はずっと絵を描いていただけですけどね(笑)

安川康介
谷口先生に紹介していただいた NEJM(The New England Journal of Medicine:世界で最も長い歴史を誇る査読付きの医学雑誌)のコロナバックのデータですが、
・発症予防効果・・・65.9%
・入院予防・・・87.5%
・集中治療室に入るのを予防・・・90.3%
・死亡を予防・・・86.3%
と出ています。

前田陽平先生
アストラゼネカとかに近い数字ですよね、その数字を信用するとしたら。

峰宗太郎
アストラゼネカのワクチンもありますし、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンも、その辺は近い値を示していますよね。安川先生は、このワクチンに対するコメントがありますか?

安川康介
このように情報がしっかり出てくるのは良いと思います。発症予防効果はやはり mRNAワクチンに劣りますが、重症化予防効果や、死亡を防ぐ効果はかなり高いです。 mRNAワクチンにアクセスできない国にはこういうワクチンが普及しているので、それは良いことだと思います。

峰宗太郎
はい、ありがとうございます。他に何か最近の話題はありますか?

安川康介
最近はやっぱりデルタ関連が多いですね。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のデータでも最近はデルタがアメリカだと51.7%でマジョリティになってしまいました。前までいたアルファは28.7%になったようですね。

峰宗太郎
そうですね。アルファが出てきた時は、それはもう大層大騒ぎしましたよね。覚えてらっしゃいます?

安川康介
覚えています。「アルファでほとんど置き換わるのでは」と言っているうちにデルタが出てきて、それが優勢になった流れですよね。

峰宗太郎
そうそう。そして最近はまたラムダ(C.37)も話題になってきていますね。ラムダは南米から報告され、これも伝播性の上昇がかなりありそうだと言われています。現在警戒をしているので、WHO の VOI(Variant of Interest;注目すべき変異ウイルス)に指定されていますかね…僕も記憶が定かではありませんが……。

安川康介
VOI だと思います。VOC(Variant of Concern;懸念される変異ウイルス)ではないです。

峰宗太郎
VOC ではないですね。

次々と新しい変異ウイルスも出てきて話題になり続けていますが、これに関してはいつも通り、言うことはたった1つでです。予防方法は大きくは変わりません。ですから騒ぎ過ぎずにやっていただければ一番良いですね。報道の方は騒ぐのが大好きですからガンガン報道しますけれども、一般の方は騒ぎすぎず、いつも通りの予防策をさらに徹底することが大事です。

さて、今日は本当に雑談なのですが、何か話題提供したい方、これについて今日話したい!という方はいますか?

誰もいないと、「こびナビの冊子ガイドブックがもうすぐ完成する」という話になって、安川先生に振られて安川先生がいっぱい話すことになっちゃうんですよ。安川先生、何か話題ありますか?

安川康介
これ、どっちにしても僕が話す感じになっちゃうんじゃないですか?

峰宗太郎
そうですよ。どっちの話題がいいかなっていう話ですね。

安川康介
あの……黒川先生、お願いします。

黑川友哉
ええと、ガイドブックの話をするんですか? それとも、これも結局私が喋ることになる?(笑)

峰宗太郎
はい! どっちでも大丈夫ですよ(笑)


【個別症例での因果関係評価はグラデーション】

黑川友哉
こびナビのコミュニケーションツールの Slack で今朝知った情報ですが、副反応検討部会という、ワクチンの副反応の因果関係を評価している部会についてです。
先日行われた部会の資料の中で、死亡例の中に α(アルファ)という評価がなされた症例が1例だけ認められまして、今後もしかしたら報道機関の中で大きく報道される可能性があります。変な不安が広がらないためにも早めにお話をしておきます。

図1

「新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要」より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000802339.pdf
出典:厚生労働省 2021/7/7

峰宗太郎
おっ! 大事ですね。
黑川先生、それはどんな事例だったか簡単にご紹介いただけますか?

黑川友哉
私は事例の詳細な経過までは確認できていませんが、新型コロナワクチン接種を行った後に血小板減少が起きて、最終的には亡くなられたというお話です。
これについて、「予防接種との因果関係を否定することが難しい状態」すなわち「α」と評価がなされています。これまでも多くの死亡が報告されていますが、今まで全部「γ(ガンマ=評価不能)」というラベルが貼られていましたが、今回初めて「α」というラベルが貼られたんですね。

今までずっと「γ」だったものに初めて「α」が出くると、「おニュー」な状況なので、報道機関は注目して報道しちゃうのでないかと思うのです。個別の症例での因果関係の評価はグラデーションだということを、皆さんによくよく理解いただかないと、この報道をしっかり解釈できないと考えています。

峰宗太郎
「グラデーションとは?」というところを詳しくお聞きしたいです。

黑川友哉
グラデーションというのは、Taka先生が繰返しおっしゃっていて、私も完全に同意しているお話です。

個別の死亡やワクチン接種後に何か副反応らしきものが起きたとき、因果関係を評価する際に完全に白黒をつけることは不可能なんですよね。その理由は「タイムマシンが無いから」です。
タイムマシンがあって過去に戻ることができるとします。ワクチンを接種せずに過ごして副反応が出なければ、もしかしたらその副反応にはワクチン接種との因果関係があったのかもしれません。しかし、現実にはそういうことは不可能です。

以上のことから、個別の症例が起きた後に評価する際、白黒を完全につけるのは難しく、起きた経過や、個々の患者さんの既往歴(これまでにかかった病気)、今までどんな病気をされてきたのか、今どんな病気でどんなお薬を服用されているか、あとはその病気自体がどういう状態であったのか、そういったことを総合的に評価する必要があります。

「あんまり他の要因考えられないよね」とか、「これは実はもともと冠動脈が心臓に栄養を送る血管が狭くなっていた」といった情報があると、「ワクチンとの因果関係というよりも、別の疾患が原因なんじゃないか」という評価がされます。それでも、完全に「予防接種との因果関係を否定するのが難しい」ことは、なんとなくご理解いただけると思います。同様に、予防接種後に亡くなった方について「これは完全に予防接種のせいだ」と決めつけることもやっぱり難しいです。

以上のことから、個別の事例の因果関係については白黒完全につける事は難しく、グラデーションのように評価せざるを得ません。重要なことは、症例をしっかり記録しておくことです。

元々は紙ベースで、事例を1枚1枚記録されたものをExcel などにまとめ、因果関係が否定できない似たような副反応がたくさん積み重なったときに、「あ、この副反応は新しく認められた副反応ではないか」と注意喚起がなされます。

日本だとその辺がかなりアナログで、1例1例積み重ねていくしかない状況なのですが、世界、特にアメリカではこのシステムが非常に進んでいます。デジタル化されていて、アメリカのいくつかの病院の診療情報(電子カルテの情報)を集めて監視しています。何か注意すべき副反応の疑いが出たときには、疾病の自然発生率、つまりワクチンを打っても打たなくても発生する率を即座に算出し、今回このワクチンを打った後に出た「副反応の疑い」が、本当にワクチンによる影響なのかについて、比較的早く評価できるシステムが確立されているんですね。

このような事例の蓄積や、自然発生率との評価という手順を経なければ、因果関係というのは、なかなかハッキリとお知らせすることはできないのです。
国内で今回 α と評価された症例が出てきたということですが、α、β、γ とラベルが用意されていて、今まで γ がずっと続いてた中で α が突然出てくると「いや、これは危険なんじゃないか」と思いがちですが、全くそういうことではありません。
今まで全てが「ほとんど評価できないよ」とか「考えにくい」というものがほとんどだった中で、ようやく「これは副反応の可能性はあるかもね」というものが出てきた、と理解頂ければありがたいです。以上です。

峰宗太郎
ありがとうございます。非常にわかりやすかったです。今回 α と評価されたからといって、これが必ずしも副反応であると今の時点で断言されたわけではないことにも注意が必要なのですね。

黑川友哉
そういうことですね。

峰宗太郎
実際難しい話で、よく因果関係、因果関係と言いますが、個別の事例で決めるのは本当に難しいというか、これって原理的に無理なんですよね。なので、そこのところはうまく伝え続ける必要があります。本当に大事なことですよね。ありがとうございます。

そういう報道がおそらく2~3日のうちか、今日くらいから出てくるのではないでしょうか。

黑川友哉
どんなふうに報道されるか、皆さんも是非ご注目ください。

峰宗太郎
なるほど。それは今日これを聞いた甲斐がありますね。1つくらい聞いた甲斐があることがないとただの雑談会で終わっちゃいますものね。ありがたいです。

α、β、γ についてですが、因果関係があるか検討した結果を分類するお話です。変異ウイルスとは関係ないので、皆さまご注意ください。


【こびナビガイドブック】

さて、既にいい時間になりました。今日の雑談会、ここからは、現在制作中のこびナビガイドブックについて、安川先生にご紹介いただくコーナーです。安川先生が中心になり、最終的な詰めを行っています。

こびナビはクラウドファンディングで3000万円を超える資金を皆様にご提供いただき、情報提供活動を進めてまいりました。その中の1つがガイドブックの制作です。その時点では時期的に高齢者中心の予定でしたが、今はワクチン接種が全世代に広がっています。全世代に、できるだけワクチンの正確な情報を届けて接種に臨んでいただきたい、接種後も含めて知っておいていただきたい情報をまとめようと考えて、ガイドブックを作っています。
どんな状況か、どこに魂を込めているかを、安川先生、明後日の記者会見の予行演習として軽くご紹介いただいてもよろしいでしょうか?

安川康介
わかりました。ちょっとその前に α の血小板減少についてお話ししていいですか?

峰宗太郎
どうぞどうぞ。もう好きに。雑談会ですから。

安川康介
今回 α とされたのは、因果関係が否定できない例ですよね。これは80歳の女性の方で、基礎疾患として関節リウマチ、慢性腎臓病、橋本病、間質性肺炎、気管支拡張症があり、既往歴として卵巣がんがあった方のようです。詳細な時系列は分かりませんが、とにかくその方がワクチン接種後に血小板減少症が認められ、くも膜下出血があったという報告です。

その血小板減少症が、アメリカなどしっかり副反応をモニタリングする国で mRNAワクチンと関連付けられているかというと、そうではないんですね。さらに、一般的な血栓症も関連付けられていない状況があることは、皆さんにお伝えしておきたいです。
ただ、最近 Annals of Internal Medicine というそこそこ有名な…少年ジャンプほどではありませんが有名な医学雑誌で、モデルナの mRNAワクチンを受けた後に65歳の男性の方が、アストラゼネカ社で認められたような VITT(vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia:ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症)が起きた、という症例報告が出ました。VITT について報告されたのはこの方だけです。

VSD など、ワクチンを受けた方と受けていない方を比較し、血小板減少や血栓症が統計学的に多く起こっていないかを調べるシステムがあります。そこでは今のところピックアップされていないのですが、そういう症例があったということで、今後も詳しく調べられていくでしょう。
ただ、いずれにせよ、既に何億人という方が接種したのに、シグナルとして上がってきていないので、起きるとしても本当に非常に稀ではないか、と考えています。日本の α の80歳の方に関しては僕ももう少し詳しく調べてみたいと思います。

峰宗太郎
重要なことをありがとうございました。実は Annals of Internal Medicine に掲載される前にも、報道ベースでは ITP(idiopathic thrombocytopenic purpura:特発性血小板減少性紫斑病)の発症は mRNAワクチンでもあったんですよね。

安川康介
そうですね。産婦人科医の方が1人亡くなっていて、もしかしたら関連があるかもしれないと言われましたが、今のところメッセンジャーRNAワクチンとはっきり関連があるとは言われていません

※参考:Thrombocytopenia including immune thrombocytopenia after receipt of mRNA COVID-19 vaccines reported to the Vaccine Adverse Event Reporting System (VAERS)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34006408/
出典:2021/4/30

峰宗太郎
56歳の方ですね。そういうこともあるので、しっかり調べるべきは調べるべきで、絶対に何でもかんでも安全だと根拠なく言うわけでもありません。ただ、割合としては非常にレアなイベントであるのは間違いないことも強調しつつですよね。

安川康介
そうですね。

それでは新型コロナワクチンのガイドブックについてですが、今こびナビのメンバーと…峰先生、岡田先生、黑川先生も含め、かなり時間をかけて詰めている段階です。タイトルは「いま知っておきたい新型コロナワクチン」という冊子で、合計60ページ程度を予定しています。

前半が基本的なワクチンに関することです。ワクチンや感染のメカニズム、あとは中和抗体がどういうものかなどですね。例えば mRNAの仕組みのところでは、左にかわいいイラストがあり、右に短い説明文が入っています。あとは有効性と副反応に関しての情報もあります。

後半は、こびナビによく寄せられる質問というセクションになっていて、
・mRNAワクチンを打つと私の遺伝子って組み変わっちゃうんですか?
・何年も経ってから副反応が出る可能性がありますか?
・接種できない人はいますか?
・ワクチン接種後に死亡という報道に不安を感じています。
……と、いつもお伝えしていることをギュッとまとめた冊子になっています。

こびナビの Twitterスペース等を聞いてくださっている方には、情報量としては正直物足りないかなと思います。というのは、朝の8時半からこの医者の雑談を聞いている方は相当マニアックな方だと思うからです。
ただ、高齢者の方を含め、より若い方でも、あまりワクチンについて考えたことがないとか、あまり馴染みがなくてワクチンの仕組み等について全然知らない方に手にとっていただいて、少しでもワクチン接種に興味を持っていただければいいなと思いながら作っています。

頑張って、おそらくあと10日ぐらいですかね……それくらいで、最初は自治体に配布して有効にご活用いただきたいと考えています。

何か峰先生から追加はありますか?


※編集注:
こびナビガイドブックは製作が完了し、現在自治体様、医師会様からの配布の申し込みをこびナビHP上で受け付けています。
ご希望の自治体様、医師会様は以下のURLをご覧ください。
https://docs.google.com/forms/d/1lWFAeYNIcNOglo5q5WeMaVViws2hpl0BdYUfSfkAdWI/viewform?ts=6102177f&edit_requested=true


峰宗太郎
安川先生、これを初期にどれくらい印刷するかという内部情報をこっそり、近い値で良いので教えていただいていいですか?

安川康介
今のところ3万部くらい刷る予定です。

峰宗太郎
3万部とは結構な冊数ですよ。凄い枚数なんですよね。いくつかの自治体が既に採用してくれたというか、配布のお約束をいただいています。実はある自治体から…小金井市なのですが、小金井市と記者会見をやるんですよね。いつですかね?

黑川友哉
日本では明日です。

峰宗太郎
そう、記者会見を行うんですよ。いま緊急事態宣言が始まったり、大変な土砂崩れなどの災害があり、ニュースがたくさんある中ではありますが、もし報道の方がお聴きでしたら、是非ご注目ください。小金井市が独自に取り組んでいるインセンティブというか、ワクチン接種を促す試みについての発表も一緒に発表されます。それから今回のこのガイドブック…「ガイドブック」と呼ぶんですよね、我々の間では。

黑川友哉
そうですそうです。

峰宗太郎
このガイドブックを手にとってみたい方も多いと思いますが、これはしばらくはレアなものになるでしょう。他にご要望があれば増刷される可能性もありますので、どうしてもと言う方は是非色々なところからアプローチしていただきたいですね。

ガイドブックを作るぞと決めたの自体は結構前で、クラウドファンディングの前からの計画でしたので、ようやくということですね。
なかなか大変で、プロのイラストレーターさんや編集者さんも入っていますので、手にとってご覧いただけると大変嬉しいです。何か黑川先生から追加することはございますか?

黑川友哉
いや本当に、3月の末にクラウドファンディングで約2000名の方から3000万円を超えるご支援をいただき、感謝しかございませんでした。しかしその後、皆様からいただいたご支援を明確な成果物という形でなかなか出すことができず、我々も焦りや申し訳なさを感じつつ取り組ませていただいていました。
本当に今回、この最後の最後に安川先生、峰先生、岡田先生をはじめ、皆さん身を削る努力でようやく皆さんにご披露できるところまで持ってこられて、非常に感慨深いです。このガイドブックには本当に力を入れ、読みやすく、手に取りやすいサイズ感、分かりやすさまで非常にこだわって作り込んでおります。ぜひ報道関係の皆様にはご注目いただければ幸いです。私からは以上です。

峰宗太郎
この朝のスペースを聞いていただいている方には物足りないかもしれませんが、全くコロナのワクチンについて知らない方や、知って欲しい方に皆さんが説明するツールとしてもご活用いただけるのではないでしょうか。皆さんにどこかでお手に取っていただけると大変ありがたいです。
安川先生は、魂を削って取り組んでおります。今日も安川先生はガイドブックに時間をたくさん使って「自分の時間が取れなかったよー」と泣いていましたので、ぜひお読みいただきたいですね。

ということで、今日は本当に雑談で時間が来てしまいました。毎日コロナ関係のニュースはどんどん出てきます。テレビに出たりしたときに私も繰返しお伝えしていますが、とにかく基本的な予防策をしっかり取ってください。コロナの流行はまだ全然収束しておりません。収束していないんですよ。だから油断せず、もう一度毎日気を引き締め直し、安全に、リスクをどこまで取れるか、それぞれ考えた上で行動してください。つまり、危険な行動をしないことを大事にしていただきたいのです。

それから、ワクチンを打てる機会があれば是非前向きにご検討ください。
ご自身と、自分の大切な人も、そして社会も守ることができます。パンデミックを収束させ、社会を良い方向に変えられると考えています。ぜひいつも通り情報を正しく取って考えていただきたいと、テレビ等でも繰返し申し上げるようにしています。ここの皆さんには当然おわかりいただけると思いますが、再度強調しておきたいです。

最近またちょっとパニックになったマシュマロ等が増えています。変異ウイルスなんかの話題でパニックを起こさずに、まずは落ち着いていただければ大丈夫です。落ち着いて判断して予防策を続けていただきたいですね。

それでは、今日はここまでで雑談会は終わりといたします。日本の皆様、良い1日をお過ごしください。ではまた明日。

全員
ありがとうございました。


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