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ベトナムでマッサージの勧誘を受けた

10年以上前。夜の10時頃、ホーチミンシティーのハイバーチュン通りを歩いていると、横にスクーターが停まり声をかけられた。

「マッサージ?」

スクーターは125ccぐらいの少し大きいもの。乗っているのはアオザイを着た女性の二人組。マッサージ師というよりホステスみたいな二人のベトナム人女性。化粧品のにおいが漂ってくる。僕はつい、

「How much?(いくら)」

と聞いてしまった。マッサージなどは受けたことがない。相場が気になる。

「テンダラー($10)」

とすかさず返ってきた。ベトナムの通貨はドン(₫)なのにドルで。外国人慣れしている。それにしてもたった10ドルなんて安すぎる。日本円で千円ちょっと。当時ベトナムでは、外国人を相手にしたボッタクリが流行っていた。ひどい場合だと、バイクの後ろに乗って連れて行かれた先で囲まれ、財布の中身を全額奪われ、さらにATMでカードの満額キャッシングさせられるといった被害も出ていた。

「ノーノー」

と言って僕は歩きだした。スクーターは並走してついてきた。「ジャストテンダラー」とか言いながら、こちらを見て微笑する。値段を聞いて興味を示したのがまずかった。もともとマッサージを受けるつもりなんてなかったのに、なんか申し訳なくなってきた。

ホテルへ向かって歩いていたが、スクーターはずっと並走してくる。周りを見渡すと、似たようなバイクがいくつも停まったり走ったりしている。夜のホーチミンシティーは明るくにぎやかで、暑く汗ばむ。

並走していたスクーターは道を遮るように僕の前に停まり、女性が「後ろに乗って」とハンドサインをしてくる。さすがにしつこい。二人乗りの、さらにその後ろに乗れというのか。

スクーターを避けてホテルにたどりついた。買う気がないものの値段を聞くのはやめましょう。

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