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【音楽×珈琲 鑑賞録】10月24日~武満徹 弦楽のためのレクイエム

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【69日】
10月24日のテーマは、【逸話】

とりあげる作品は、
武満徹 /
弦楽のためのレクイエム

です。

武満 徹
1930年10月8日 - 1996年2月20日
日本の作曲家、音楽プロデューサー

「弦楽のためのレクイエム」(Requiem for Strings)は、1955年から1957年にかけて作曲した弦楽合奏曲で、武満徹の初期の代表作とされています。
当時結核を患っていた武満が、親交のあった作曲家早坂文雄の死を悼むとともに自らの死を意識しながら書き進めた作品であり、早坂文雄に献呈されています。
初演の2年後にストラヴィンスキーがこの作品にコメントしたことは作品の評価のみならず内外における武満の名声を高めることにつながりました。

1959年にストラヴィンスキーが来日した際、日本の音楽を研究したそうで、さまざまな音楽を聴いていたなか、この作品に出会いました。
ストラヴィンスキーは、この「弦楽のためのレクイエム」でのコメントを、「厳しい」(intense)と表現しています。
絶賛したのは、福島和夫によるアルト・フルートとピアノのための作品『エカーグラ』で、「これはいい曲だ。実にいい曲だ。」と評価したそうです。
これらが混同されて世に伝わり、武満の作品が世界的に広まったというのだから不思議な話です。

この「厳しい」(intense)という表現はとても興味深いものです。
「弦楽のためのレクイエム」を聴くと、重々しい鎮魂の雰囲気にある音響が続き、時折浮かびあがる動機が浮遊感を与えたりと、捉えどころがないようでありながら幻影を見るかのような具体の表情も窺えます。
ストラヴィンスキーが好みそうな音響であり、深く引き込ませるものがあったのだと思います。だからこそ、ストラヴィンスキーはもう少し深堀りはしたいけど、そんな時間がないというような表現、"intense"に至ったのではないかと想像します。

きっかけをえて、この作品が日本発オーケストラのマスターピースになった功績は計り知れません。
グローバル化が進む社会で、分断と隔絶を目の当たりにすることがより増えてきた昨今、分かり合えないのは共感する機会をもつことができないからだと思ったりします。
食文化やスポーツで感動を分かち合ったりすることはできますが、音楽も言語を超えて感動を共有できる稀有な機会を創り出すことができます。
本当ならば、向こうから与えてもらうばかりではなく、こちらから贈与できるもので喜びを共有したい。日本の音楽は現在でも海外で受け入れられることが難しいなか、かつて扉を開いたフロンティアのような音楽が、しかもオーケストレーションであるというのは、日本音楽の希望の灯みたいなものです。

実証があるからこそ、その光に手が伸ばせる。
日本発の音楽が海外で喜ばれるのは決して不可能な話じゃない。
それを実現するにも行動しなければいけませんね。

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