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【音楽×珈琲 鑑賞録】5月6日~アレクサンドル・ボロディン 交響詩「中央アジアの草原にて」

音楽観を鍛える鑑賞録。
5月6日のテーマは、【音楽史】

とりあげる作品は、
アレクサンドル・ボロディン /
交響詩「中央アジアの草原にて」

です。

アレクサンドル・ポルフィーリエヴィチ・ボロディン
(Alexander Porfiryevich Borodin, Алекса́ндр Порфи́рьевич Бороди́н)
帝政ロシアの作曲家、化学者、医師。

ボロディンは2月6日にオペラ『イーゴリ公』より「ダッタン人の踊り」記事にしていました。
「アルドール反応」でおなじみでございます。
いつもアセトアルデヒドを代謝してくださり、ありがとうございます。

今回とりあげるボロディンの楽曲は、
『中央アジアの草原にて』(ロシア語: В средней Азии)
1880年、ロシア皇帝アレクサンドル2世の即位25周年を記念して、皇帝をめぐる事件を採り入れた活人画の上演があり、その伴奏音楽として依頼され作曲に至ったそうです。
活人画ってなに?
と思って調べたら、適切な衣装を身につけた役者や芸術家の集団が、注意深くポーズをとって絵画のような情景を作ることだそうで、見たことある気がするだけに、そのルーツと発展もまた興味深く調べてしまいました。

さて、この交響詩「中央アジアの草原にて」の楽曲構成ですが、

"荒涼としたコーカサスの草原で、ロシア人と東洋人の交流の様子が描かれている。まず、ロシアを表す主題が呈示され、次に東洋風の主題がこれに答える。この二つの主題が対話しながら発展し、クライマックスでは二つの旋律が同時に重ねられる。ロシアと東方の歌がハーモニーを奏で、そしてやがて辺りは静まる。"

というもので、コーカサスの草原・・・行ったことのない大地ですが、
ロシアの広陵とした大草原を思い浮かべることができる、非常にわかりみの深い作品です。
こうした民俗を彷彿とさせる音楽が19世紀中頃から20世紀にかけて世界各地でムーブメントを起こしたそうで、この機運をもたらした音楽ジャンルを「国民学派」「国民主義音楽」と呼ぶそうです。
グローバルに世界各地へ移動可能になりつつあった黎明期、ナショナリズムの勃興に音楽は一役かっていたのではないでしょうか。

ボロディンのような「日曜音楽家」がこのムーブメントを牽引していたことも注目したいところで、それだけ作曲技法が熟しつつあり、敷居が下がってきていたということでもあります。
バッハの時代のような音楽一族や専門家でなくとも、世界に冠たる音楽を目指そうという機運が出てきたことは、現代に通じるムードの創生ともいえます。

このボロディンの音楽は100年以上の時を越え、現在にも「風」を感じさせてくれます。
音楽が発展し、技術も、人々の気風も変遷していますが、当時に吹いた風は今もなお巡り巡ってわたしたちの世界を駆け巡っています。
そういった歴史の風を想像し、時間と環境を経て生じている今の風を表すもの。
そんな「風景」を描いていきたいものですね。

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