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1万5000人の高齢者の「性格の強み」と「人生満足度」を調べてわかったこと

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださりありがとうございます。
本日は「強み」に関する論文のご紹介です。

”高齢化”というキーワードは、耳にして久しいです。
今回の論文は、「高齢者の性格の強みと人生満足度」を調査した研究で、1人暮らし・同居、定年退職後・退職前などで、その強みがどのように変化をしていくのかを、1万5000人以上のデータから調査したものです。
大規模の研究結果、非常に気になります・・・!

結果、「特定の強みが人生満足度に大きな影響を与えている」ことがわかりました。ということで、中身をみてまいりましょう!


今回の論文

Character Strengths and Life Satisfaction in Later Life: an Analysis of Different Living Conditions(後年のキャラクター強さと人生満足度:異なる生活条件の分析)
Baumann, Doris, Willibald Ruch, Katja Margelisch, Fabian Gander, and Lisa Wagner
Applied Research in Quality of Life (2020年)

30秒でわかる本論文の概要

  • 本研究の目的は、高齢者における性格の強みと人生満足度の関連性を調査することです。

  • 特に、老化、退職、一人暮らし、配偶者との死別といった高齢者特有の転換期に注目し、これらの要因が性格の強みと人生満足度にどのように影響をするかを検討しました。

  • 調査は、合計15,598人の46歳から93歳の成人を対象に行われました。

  • 分析の結果、以下のことがわかりました。
    1)ほとんどの性格の強みと年齢には正の相関がある
    2)退職者や一人暮らしの人々において、特定の性格の強み(好奇心や向学心)が人生満足度に強い影響を及ぼす
    こと

  • これらの知見を、高齢者支援プログラムの開発などに役立たせられる。たとえば、1人暮らしや退職者に対して、好奇心や学習欲を刺激する社会参加や自己実現の場を提供することが、人生満足度の向上に寄与できると考えられる。

という内容です。

現代社会の課題にも紐づく、とても有益な内容だと感じます。

「強み」は年齢を経て、高まっていく

これまでの研究から、性格の強みと年齢は、正の相関を示す傾向があることが知られています。また、年齢と性格の強みについての研究は、世界で様々な行われてきました。たとえば、

  • イギリスの大規模サンプルの研究では、年齢が高まるごとに、特定の性格の強み(好奇心、向学心、公正さ、寛容さ、自律心)が高まることが示された(Linleyら)。

  • ドイツ語圏のサンプルでは、同様の調査結果から、年齢が高まるごとに、特定の性格の強み(好奇心、寛容さ、謙虚さ、慎重さ、自律心、卓越性、スピリチュアリティ)が高まることが示された(Ruch, 2010)

  • 地域社会に住む成人を含むサンプル(60歳以上)では、「希望」「チームワーク」「愛情」の性格の強みが人生満足度を予測していた。

  • スイスの成人のサンプルでは年齢が高いグループ(47~57歳)では、「希望」「熱意」「ユーモア」「感謝」「向学心」が人生満足度と最も高い相関を示した 

などです。
ちなみに、文化や年齢を超えて、人生満足度と高い相関がある5つの強みは「希望¥「熱意」「感謝」「愛情」「好奇心」とされていますが、高齢者特有の傾向があるといえそうです。

研究の概要

本調査については、以下の方法で調べられました。

●対象者
46歳以上の成人15,598人(46歳から93歳)
平均年齢: 53.36歳 (標準偏差: 6.26)

●データ収集方法
:
インターネットを通じたオンライン調査(ポジティブ心理学の評価を行うウェブサイト)

●測定尺度:
VIA-IS(Values in Action Inventory of Strengths): 24のキャラクター強さを測定する10項目の質問を含む尺度(5段階評価)
SWLS(Satisfaction With Life Scale): 人生満足度を測定する5項目の質問(7段階評価)

●分析方法
主要変数間の相関分析を行った
・年齢、退職状況、同居状況、結婚状況などに基づくグループ間比較

結果わかったこと

今回、高齢者の状況から未婚or既婚」「退職or在職」「一人暮らしor同居」「年齢ごとの違い」で、人生満足度と正の相関があるものをまとめました

(1)未婚 or 既婚 の特徴

●既婚者(非死別者):
・(人生満足度と)高い相関: 「愛情」「社会的知性」「チームワーク」
・低い相関: 「誠実さ」「親切心」
●未婚者(死別者):
・高い相関: 特に目立った相関は示されていないが、既婚者よりも社会的強みが弱い傾向がある

(2)退職 or 在職 

●退職者:
・高い相関: 「謙虚さ」「慎重さ」「自律心」「感謝」「親切心」「チームワーク」「審美眼」
・低い相関: 「リーダーシップ」「創造性」「好奇心」
●在職者:
・高い相関: 「創造性」「好奇心」「忍耐力」「リーダーシップ」「チームワーク」

(3) 一人暮らし or 同居

●一人暮らし:
・高い相関: 「創造性」「好奇心」「学習意欲」「大局観」「勇気」「忍耐力」「自律心」「審美眼」「感謝」「希望」「ユーモア」「スピリチュアリティ」
●同居者(パートナーと同居):
・高い相関: 「愛情」「チームワーク」「親切心」

(4) 年齢ごとの違い 

●ミドルアダルト(中年、45~65歳)
・高い相関: 「好奇心」「大局観」「勇気」「忍耐力」「愛情」「チームワーク」「希望」「ユーモア」「感謝」
●ヤングオールド(66~69歳):
・高い相関: 「感謝」「愛情」「希望」「勇気」
●オールド(70歳以上):
・高い相関: 「謙虚さ」「慎重さ」「感謝」「審美眼」「スピリチュアリティ」「感謝」「希望」

まとめと個人的感想

基本的に、個人個人が持つ「性格の強み」は比較的安定している(つまり変わらない)といわれています。

一方、今回の研究のように、高齢者の属性ごとに焦点を当てることで「性格の強み」の傾向に特徴が見えてきたり、また1人暮らしの高齢者に特に相関がある性格の強み(好奇心、向学心)があったりする事実もあります。

こうみると、「強みは変化する(成長する)ものである」と感じる次第です。
個人に特徴的な強みだけでなく、年齢ごとに特に重要な強みを、意図的に開発することができれば、きっと人生満足度や幸福感にもより豊かな影響があるのだろう、そんなことを思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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