67. ウクライナ人はどうして命がけで国を守るのか。
「私は生きている。そして戦い続けます。」
これは今ロシアの軍事侵攻で大怪我を負った女性の発言である。
ウクライナでもし日本が他国から攻めてこられたらあなたは自分の命を懸けてでもこの国を守ろうと思うだろうか。
命は一番大切であって、犠牲にするくらいならおとなしく降参したほうが良いと考える人も多いのではないだろうか。
現在、ウクライナではロシア軍の侵攻による軍事被害が相次いでいる。
ロシアの軍事侵攻当初、3日から10日で首都が陥落してしまうだろうと考えていた。
しかし、ウクライナでは多くの国民が祖国を守るための兵士となり、その団結力や他国からの武器の支援などによって力を発揮し、ロシア軍を後退させている。
当初、ロシアは首都キエフの陥落を目指し、ヨーロッパよりの政権を潰すことを考えていたが、ウクライナ軍の徹底抗戦で攻略できなかったロシア軍は、ウクライナ南東部の親ロシア派地域支配地域の拡大に重点を移す方針に変更した。
このようなウクライナ軍の強さの根源には士気の高さが大きく影響している。
ではなぜ彼らは命を懸けてでも祖国を守ろうとするほど士気が高いのか。
それらを理解するために、まずは両国の特徴と関係性に注目する必要があるのでそれらを説明していく。
ロシア・・・強権主義(国のトップ、中心が大きな力を持っている)。とても広いが寒すぎて周りの海は凍っている場所ばかりで凍らない港が欲しい。強かった時のロシアに戻りたい。
ウクライナ・・・民主主義(国民が大きな力を持っている)。地中海に面した凍らない港を持っており、肥沃な土地で農作物が大量に取れる。
大まかな両国の歴史
①昔はウクライナが中心の大きな国(キエフ・ルーシ大公国)があった。
②その国が崩壊後、現在のウクライナに位置する国と現在のロシアに位置する国に分かれ(当時リトアニアの支配下)、ロシアに位置する国(モスクワ大公国)が強くなってきた。
③その後、周辺国を脅威に感じた弱い立場にあったウクライナはロシアに助けを求めたことがきっかけでウクライナとロシアに上下関係ができてしまった。(ロシア>ウクライナ)
④のちにロシア帝国ができウクライナの領土はこの国の一部になる。
⑤ロシア帝国で革命が起き、平等の国を目指すソビエト連邦(国のトップが強力な力を持つ強権主義国)ができる。
⑥ソビエト連邦はウクライナ地方は土地が肥沃であることから、あまりにもたくさんの農作物を要求し、その行き過ぎた要求に苦しめられたウクライナでは、豊富な作物が取れるウクライナではありえない大飢饉が起き、国民の8分の1が餓死した。(ホロドモール)
⑦ソ連が崩壊し、ウクライナは強権主義のロシアから独立し、アメリカよりの民主主義国家を作る。
⑧約20年後ロシアが凍らない港を求めてウクライナのクリミア地方に強引に侵攻。このときもう戦争はないだろうと思っていたウクライナは対処できずにすぐに占領され、ロシアの領土になってしまう。(クリミア併合)
⑨このままではまたロシアの思い通りにされてしまうと思ったウクライナは徴兵制(国民を強制的に兵士として軍隊に入れる制度)を導入し、世界軍事力トップのアメリカ軍の指導の下、軍を鍛えなおし、いつ来るかわからないロシア対策をする。
⑩ウクライナがNATOに入ろうといったタイミングでロシアが軍事侵攻。ロシアは当時のクリミア併合の時のように簡単にすぐに征服できると思っていたが、鍛え抜かれて対策も完璧なウクライナ軍に返り討ちにされている。
これが両国の歴史の大まかな流れである。
これを人間関係に例えるとこのような話になる。
同級生にいじめられそうになったため、近所の喧嘩が強いロシア先輩に助けてほしいとお願いした。
するとロシア先輩はその時、味方になってくれたが、それからは毎日パシリとしていいようにこき使われ、精神的にも体力的にも耐えきれないくらいロシア先輩にいじめられ続けた。
しばらくするとロシア先輩が同じ学校を卒業し、やっと解放されたと思ってほっとしていると、ある日、ロシア先輩がまた目の前に現れて、ぼこぼこに殴られてカツアゲされた。
このままではいけないと思い、ロシア先輩と仲が悪い、アメリカ先輩に弟子入りする。アメリカ先輩は格闘技経験があり、仲間になりたがっていた。アメリカ先輩は体を鍛られ、対ロシア先輩の戦い方を伝授してもらっていると、どんどん強くなり、ムキムキになってきた。
アメリカ先輩達の仲間になると宣言すると、それを嫌がったロシア先輩がそんなことをしたらまた痛い目に合わせるぞと脅してくる。
しかし、ロシア先輩にいじめられた経験はトラウマになるほどのものであり、絶対にロシア先輩の手下になりたくないので強気に立ち向かう。
ロシア先輩はかつてボコボコにしてパシリにしていた自分が立ち向かってきたので、これまでのようにボコボコにしばこうとして殴りかかった。
しかし、アメリカ先輩に鍛えられたり、アメリカ先輩の仲間にたくさん声をかけて助けてもらっているおかげでなんとか立ち向かえている。
ウクライナはまさに今このような状況なのではないだろうか。
あなたはこの状況でロシア先輩のいいなりになるだろうか。
言いなりになれば、またあの地獄の日々を送る。
あの生活に戻るくらいなら命のリスクを冒してでも殴り返して戦ってやる。
生きるか死ぬかの二択ではない。
生涯いじめられる日々を送るか、命懸けで戦って自由な人生を送るか。
ウクライナ人はこのような心境であると私は考える。
そうであると、ウクライナ人の士気が非常に高く、命がけで戦うことも理解できるのではないだろうか。
そして世界中の援助を受けることでロシア軍を返り討ちにしつつある現状も理解できる。
最近、日本ではゼレンスキー大統領の徹底抗戦の姿勢を批判し、降伏を促すような声も聞こえてくる。
しかし、それはあくまで安全な場所で一切責任のない第三者の立場から言っている意見に過ぎないと私は思う。
その意見はこれまでウクライナが経験した歴史や、ロシアの支配下になることによって奪われる言論の自由や人権なども考慮したうえでの発言であるのだろうか。
もちろん、人命を守ることは大切であることはウクライナに住んでいる人たちは百も承知である。
そのうえで、自らの命を懸けてでも国を守りたいというウクライナ人の立場を理解し、その歴史や立場も理解しようとすることが第三者として大切であると私は考える。
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