ダリ語
どこの国の出来事か覚えていないけれど、戦争の多い乾いた貧しい土地で、それまでなかった学校が建ったようです。そのニュース映像の中で、レポーターが現地の子供にインタビューをしていました。
「学校で何を勉強したいですか?」
マイクを向けられた瞳の大きな女の子は、
「ダリ語を学びたいです」と答えました。
「どうしてダリ語を勉強したいの?」と問われると、女の子は、はにかむように笑って言いました。
「じぶんの国のことばだから」
ぼんやりとニュースを見ていた私は、女の子の答えを聞いて水を浴びたような気持ちになりました。もう十五年あまり前のことですが、そのときの小さな衝撃と大きな瞳とをかつて忘れたことはありません。
女の子の言葉はいまも私の心に引っかかって、豊かな先進国の弛緩した精神へ、その鋭い切っ先を突き付けています。
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