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自分の人生を変えた本の増補版に、自分が登場する話

「ホームレス農園」を読んで人生が変わった。

よく、「この本を読んで人生が変わりました!」なんて言葉を目にすることがあります。

「おいおい、本読んだだけでそんな簡単に人生変わらないだろ」といぶかしむことも多いのですが、よく考えたら自分も本で人生変わっていました。しかも結構、目に見えて分かりやすく。

モテモテになったとか、お金持ちになったとかはないんですが、少なくとも「ホームレス農園」(小島希世子著 河出書房)を読んで、仕事と住む場所は変わりました。

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今度その本の増補版「農で輝く!ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す奇跡の農園」が発売されます。

読んだら人生変わるかもしれませんよ?
ということで本の紹介を兼ね、人生が変わった一例として、私の人生がどんな風に変わったか、ちょっとエピソードを紹介させてください。

ホームレスのおっちゃんとの出会い

遡るは11年前、大学1年生だった私は、とある団体の活動に参加し、夜8時ごろ、きたえーるというライブ会場の前でビッグイシューをホームレスのおっちゃんと共に売った。

ビッグイシューというのはホームレスの方の経済的自立を助ける雑誌で、その雑誌が売れたらその半額程がホームレスの方の稼ぎとなる。

その日はBUMP OF CHICKEN(以下バンプ)というバンドのライブの日だったため、表紙がバンプでインタビュー記事も載っている号をおっちゃんは用意していた。

ライブが終わり帰途につくバンプファンの方達を呼び止め、販売を行うとあれよあれよと雑誌は売れた。

こんなに売れることは今までなかったとおっちゃんと喜び合った。

この経験や他にもいろんなホームレスの方に会う中で、私の中で「ホームレスはこんな人」と一括りにまとめられる特別な人たちではなくなった。

住む場所がないことは共通してたとしても、一人一人違い、一緒になって喜ぶことができたり、冗談を飛ばしながら話したりできる人もいる。ウマが合う人もいれば、そうでない人もいる。

特別な人でないからこそ、冬寒そうにしていたりするのを見ると、寒そうだなぁ、何かできないかなぁ、なんて気にかかっていた。

しかし特に行動にも移せず、大学生活楽しいこともいっぱいで、段々と支援の現場からは遠ざかっていった。ただ、駅などで見かける度、なんだかなぁと胸につっかえていた。

農業との出会い

北海道の大学に通っていたが、縁あってサークルのOBである農家さんやその仲間の農家さん達の元に何度か足を運んでいた。

二度目の四年生の頃、その農家さん達が住む士別町の「あるもの探し※」をしようと、高齢の農家さん達からその土地での昔の生活の聞き取りインタビューを行った。

※あるもの探し:いきいきした地域を作ろうと考えた時、ないものねだりをするのではなく、地域の魅力、あるものを再発見しようという考え。地元学の分野でよく使われる言葉。

高齢の農家さん達の話を聴いた。

話の内容もさることながら、お話しされている時の雰囲気に触れると、すごく安心感を覚えた。土地に根付き、色んなことがある中(戦時中の話も聞いた)何十年も生き抜いてこられたからなのか、「何があっても大丈夫」という感じがすごく伝わってきた。

就職のことなど将来へ漠然とした不安を抱いていたのが、「まあ大丈夫だろう」と思えるなど、話を聴いて帰る頃にはなぜか元気になっていた。フワフワ悩んでいたのか、地に足がつくというか。

そういった経験から、農業(という働き方?生き方?)というものには、「何かあるな」と感じた。

「ホームレス農園」との出会い

貧困問題への関心や、農業への可能性を感じていたからといって、支援団体や農業系の会社に行くわけでもなく、それらとは関係のない会社に就職した。

大学を卒業し、その会社で働くこと2年、若者は3年で辞めると言うが、自分も「このままこの会社で働いていてよいのだろうか」と悩み始めた。

「貧困問題など社会問題の解決に尽力しなくていいのだろうか」「でも、支援の現場でバリバリやってる人ほど意識高くないし自信ないな」などずっと胸につっかえていた貧困問題も顔を出してきた。

悩んだ時は大きい本屋を巡回する習性があり、2015年2月のある日、大宮駅の近くにあるジュンク堂内を徘徊していた。

その時本棚を見て目に飛び込んできたのが「ホームレス農園」(2014年10月発売)だった。

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貧困問題などで語られるホームレスと、兼ねてから可能性を感じていた農業という分野、心の奥底を伏流していた二つの流れが1冊の本をきっかけに一つになった!

人生が変わった時

早速購入し本を読んだ。

本には、ホームレスの方やずっと引きこもり状態にある方などが農業を通じて自信を取り戻し、農業界に進んで行くという話が書かれてあった。

大学の頃に感じていた農業パワー(!?)、それを貧困問題に活かしている人がいたとは!

と感激し、本を読み終わってすぐインターネットで農園のことを調べた。

なんと毎週日曜に農園の見学ができるのではないか。早速、問い合わせフォームよりメールをし、藤沢にある農園に訪れることにした。

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そして日曜日に農園を見学し、帰る頃には体験農園コトモファーム会員になり、畑を一区画利用することになっていた。
(注:体験農園は「コトモファーム」、ホームレスの方や引きこもりの方が農業界に行くサポートをするのは「農スクール」。スタッフは一部重なっているが別の団体。代表は同じ。)

そこから後は流れに身を任せた

当時、営業をかけられるがままに、大して飲まないのに飲料水宅配サービスの契約をしており、社宅寮の部屋に水の入ったボトルが積み上がっていた。それを見た会社の同期から私は「騙されやすいやつ」とからかわれていた。

騙されると言うと人聞きが悪いが、コロッといくタイプなのは確かで、農園まで家から片道2時間半かかるなどはあまり考えず一年契約をした。

その日を境に、週末は畑に行ったり、別の縁があって知った山梨の田植え体験などに出かけたりするようになった。
(山梨でたまたま知り合ったYさんも実は元々コトモファームを利用しており、しかも私が利用する区画の前の利用者だったという偶然も!)

さらに、コトモファームには上級者コースというものもあり、農業の理論的な知識や経営について学べるコースもある。そこにも参加し、これから自分はどう生活を組み立てていくのかと考えていった。

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(上級者コースではトラクターを練習したりもします)

週末に土に触れ、野菜が育っている姿を観察したり、育ったものを食べたりしていると、なんだか安心した。大学の頃出会った農家さんたちの雰囲気から感じていた安心感。不安に思うことがあっても、「まあ何とかなるだろう」といった感じ。

段々と思いが積もり、「自分も農家になって、ホームレス農園に書かれていたようなことをやろう」と会社を辞め、藤沢市にある有機農家さんのもとに研修に行かせてもらうことにした。

2015年の12月、藤沢近くに引っ越し、そこから研修に通い、週に1度は農スクールにも関わった。

1年間の研修が終わる頃、やりたいことが近いのなら一緒にやろうと小島さんに誘ってもらい、株式会社えと菜園とNPO法人農スクールに入社することとなった。

自分の人生を変えた本の増補版に、自分も登場

えと菜園に勤め、農スクールのトレーナーになって約4年、今に至るわけだが、そこでのことが今回発売になったホームレス農園の増補版「農で輝く!ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す奇跡の農園」に記載されている。

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「本読んで訪れた青年」みたいな位置付けで、私も出てくる。

新版には、奇跡の農園、なんて大それた名前が付いている。奇跡のようなエピソードは本の中に出てくるのでそちらを読んでいただきたいが、人生が変わるきっかけとなった本の増補版に自分が出てくるって、これも一つの奇跡みたいなものかもなと思う。

よかったら買ってくださいませ〜

題名にはホームレス、引きこもり、って書いてあるんですが、広く働きづらさや生きづらさを感じる人や、なんとなく「農業って何かありそうだな」と思う方に読んでいただきたい本です。

8月上旬〜中旬に発売予定です。もう予約もできるので、よかったら買ってくださいませ〜


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