「さえ」と「すら」の使い分け
「さえ」と「すら」の使い分け
「さえ」と「すら」はほぼ置き換え可能で、意味の上ではとくに違いはないようです。「すら」は書き言葉的で、一般的には「さえ」のほうがよく使われる、というのが定説です。
あらら、終わっちゃう・・・
いやいや、「さえ」「すら」で違う言葉があるってことは意味の上でも何か違いがあるのでは?と思ってしまうのは悪い癖?うー。気になる〜、これは日本語教師のさが!? 私自身、なんとなく使い分けているんですよね。「すら」のほうが強調がより強く、マイナスの気持ちがグッと入っているように感じたり、嫌味っぽく聞こえるのは語感のせいでしょうか。
「でさえ・ですら」の「で」ってなに??
以前「 「でさえ・ですらの”で” って何ですか?」という質問を受けた先生がいました。学習者は「どちらも同じです」「あってもなくてもいいです」と言われるのが一番困りますよね〜。
うーん。学習者向けなら、ざっくりこんな感じでいかがでしょうか。
☆生き物につくときは「でさえ」「ですら」になりやすい
<例>
そんなの、小学生ですら/でさえわかるよ。
家族ですら/でさえ娘の妊娠に気がつかなかった。
最近、日本人ですら/でさえ読めない漢字の名前が多い。
医者でさえ/ですら7割が生活習慣病に陥るそうです。
プロでさえ/ですら難しいのだから、私たちが簡単にできるわけがない。
※日本語教師メモ
主格につくときは「でさえ/ですら」になることが多いようです。通常、主格にくるものは「生き物」のことが多いので、「生き物+でさえ/ですら」は学習者にとってわかりやすい分け方ではないでしょうか。
☆数字につくときは「ですら」「でさえ」が自然
<例>
一匹でさえ/ですら、ちゃんと面倒みられないのに、二匹目なんて飼えないよ。
父はせっかちで、5分でさえ/すら待てない。
学生時代、貧乏でパン一個さえ/すら買えなかった。(「でさえ/ですら」はしっくりこない・・・)
喉が痛くて、水一滴さえ/すら飲めない。
5000円でさえ売れないんだけど…。
※日本語教師メモ
「で」は、時間や期間、数量の範囲を限定するときに、その決めた範囲は超えないというときに使いますね。たとえば、「私は5分で準備するけど、父はその5分でさえ待てない」ということで格助詞の「で」が残って「でも」→「でさえ」になるのかなと考えています。また、「行けなくなったコンサートのチケットを5000円で売りに出した」「でも、5000円でさえ売れないんだけど…」これは対価の「で」とでも言いましょうか。
例文はいろいろ出せるので、「数字+ですら/でさえ」も使えます、と学習者に伝えられそうです。
まだまだ思考の道半ば、無理矢理スッキリさせてみたものの、まだモヤっとしていて、正直ちょっと気持ちが悪いです。この「でさえ」「ですら」になるもの or ならないものは、実はいろいろな理由が考えられるので、その明確な理由(や仕組み)を一つ一つ紐解くのは大変そう。そして、「で」と「さえ」は区切ってしまうと厄介度が増す。これは沼決定!
うー、煮詰まってきてしまったので、皆さんにも意見を求めたいっ!!!(こんな日もあります。ぜひ、コメントください!)
フレーズで覚えたい「ただでさえ」
「ただですら」も言えそうですが、検索ではほぼヒットしません。「ただでさえ」は慣用的な使い方ということで、この形でまるっと覚えてもらいましょう。例文はコトハジメのブログ記事をご覧ください。
言い換えできないケースは「〜さえ~ば」
「Aさえ~ば」は、その条件が満たされれば、十分な結果が生じるという意味です。これは「すら」には言い換えられません。こちらは以前、noteの記事(『これさえあれば』)でも書きましたので、そちらをご覧ください。