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関西弁で読む遠野物語

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『関西弁で読む遠野物語』(エクスナレッジ)の著者、畑中章宏さんにインタビューしました。
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『関西弁で読む遠野物語』その5|災害のあと、これからの話

『関西弁で読む遠野物語』その5|災害のあと、これからの話

ーー東日本大震災は地震も大きかったですけど、原発事故っていうのも新しい体験でしたよね。

原発って発生地帯は、はっきりしてるじゃないですか。放射能も目に見えへんけど、コロナと違って、どこからきてるっていうのは。安全だ安全だっていうことに対しては、安全じゃないって僕は思ってるし、危険だ危険だっていうのも言い過ぎやっていうくらいのバランスで割と多くの人が平均してる。
福島の問題については、民俗学者っ

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『関西弁でよむ遠野物語』その4|話題は民俗学からコロナ、シン・ゴジラへ

『関西弁でよむ遠野物語』その4|話題は民俗学からコロナ、シン・ゴジラへ

ーー編集者をされてましたが、どうして、民俗学をやろうと思われたのですか?

民俗学者を名乗り出したのは『蚕』(晶文社)の頃からで、その前は著述家とか編集者って書いてあるね。
大きな契機になったのは東日本大震災。僕は東京で体験したんやけど、あれだけ多くの方が巻き込まれた災害、多くの亡くなった魂を、どう鎮魂して供養してきたのか、それから先、どういう風にして共同体を復興させてきたのか。あるいは、亡くな

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『関西弁で読む遠野物語』その2|『遠野物語』って、ほんとにあった話ですか?

『関西弁で読む遠野物語』その2|『遠野物語』って、ほんとにあった話ですか?


ーー『遠野物語』は、「河童」とか「ザシキワラシ」のような妖怪がよく知られてますけど、全体読むと、噂話のようなものから危険を避ける知恵みたいな話もたくさんありますよね。『遠野物語』っていうのは、大人が子どもに語るお話なんですか?

この本の最後にも「昔々」という章があるんですけど、昔々っていうのは昔話。この前の114話は昔話やない。序文の有名な一節で「これは現在の事実である。目の前の出来事であ

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『関西弁で読む遠野物語』その3|昔話の本質っていうのは

『関西弁で読む遠野物語』その3|昔話の本質っていうのは

ーー「山人(やまびと)」は、すごく深い断絶があるお話ですよね。里の娘をさらって、何人も子どもが生まれるんですけど、みんな殺してしまう。こういう話をどう受け止めたらいいんでしょうか?

『遠野物語』って、禁忌とかタブーを言わんとしているものではないんですよ。子どもに聞かせるのに教訓を見出すとか、何かを禁止したり、あるいは何かを勧めたりとか。それを、わかりやすく伝えるっていうことのために昔話が伝えら

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『関西弁で読む遠野物語』その1|なんでまた、『遠野物語』を関西弁に?

『関西弁で読む遠野物語』その1|なんでまた、『遠野物語』を関西弁に?

『遠野物語』が柳田国男の手によって出版されてから、今年で110周年になります。
柳田と同じく、関西出身の民俗学者、畑中章宏さんの新刊『関西弁で読む遠野物語』について、お聞きしました。

ーー『関西弁で読む遠野物語』ですけれども、そもそも、なぜ関西弁にすることになったのですか?

柳田国男って「遠野」の人っていうイメージが強いけど、ほんまは関西人だってイメージ、みんな、もってへんよね。

ーーは

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