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「東京 里帰らない人応援プロジェクト」をやってみた

COVID-19の非常時に、妊産婦さんを助産師がオンライン、対面(訪問)でサポートするプロジェクト

東京 里帰らない人応援プロジェクト
https://myjosanshi.sakura.ne.jp/tokyo/

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大しはじめた時、感染者を受け入れるために医療体制が見直されたり、医療サービスに制限がかかったりしたことで、日本のお産は医療機関が99%と言う現実を鑑みて、これから出産を控える妊婦さんたちに多大な影響が出るかもしれないと思い、東京で開業する助産師さんたちと議論をスタートしました。

助産師からの視点では、立ち合い出産ができなくなったので助産院で対応できないかと言う相談が増えたり、助産院で感染者がでたら、助産院をクローズして、自宅分娩ができるようにと準備したりといろんな対応をされている時期でした。ただ、COVID-19がどんなウイルスでどんな症状が出て、どのように治療できるかもわからない未知のモノとの戦いであるため、全てが手探りであり、医療従事者として助産師も人命を救うために何でもしますという感じで、可能なことは全部しようと言う感じでいろんなことを検討していました。
医療従事者ではない私は彼女たちの討議に、自分の無力さを痛感し、自分にできることがあれば協力しますという感じでいました。

私は私で3月に母乳に関する研究をアカデミアと進めていたこともあって、頻繁に大学病院の産科を訪問していた。日を追うごとに医療現場の緊迫感を感じるようになっていきました。産前の両親学級が中止となり、面会や立ち合い出産が中止となって、出産による入院期間を短縮し、早く自宅へ返すと言う対応がされるようになっていたので、ただでさえ育児の「ぶっつけ本番」と言う課題がいろんな課題を引き起こす原因であると考えているため、この非常時においてさらに「ぶっつけ本番」が深刻になり、このままではまずいと思い、何か行動を起こさなければならないと考えていました。

このような経緯から東京の開業助産師の有志と共に、COVID-19で影響を受ける妊産婦さんたちに何ができるかを考えるようになりました。その討議の中で、出産の前後で実家を頼りにしている妊産婦が政府の非常事態宣言により移動が制限されることで、分娩のために実家へ帰ることができない妊婦、出産後に実家へ帰ることができない産婦が東京にかなりの人数いるのではないかと考え、ざっと試算してみたところ、出産前後に実家に帰る人たちは全体の7割いることがわかり、東京都で考えると毎年新生児は10万人いるので、7万人も影響があるかもと言うことになり、ゾッとしました。

だから東京で赤ちゃんを産み、育てると決めた妊産婦さんをなんとかサポートしていこうと決めて、産前から助産師が妊婦とコミュニケーションをとり、産後も継続してサポートするアイデアが4月中旬にメンバーから出されて、「東京 里帰らない人応援プロジェクト」を発足し、5月1日にはサービスを提供すると言うスピード感で立ち上げました。

「東京 里帰らない人応援プロジェクト」の活動に賛同頂き、協力を申し出て頂いた助産師は35名ほどいて、東京都の開業助産師のおよそ10%となるます。それぞれの助産師が対応するエリアを決めて、妊産婦から依頼があれば、いつでも駆けつけると言う体制ができました。ちょっと意外なのですが、地域の助産師同士が連携すると言う仕組みはこれまであまりなかったと言うことで、このプロジェクトが個人の意思でつながるネットワークとして初の試みかもと言うことでした。

また非常時の緊急支援という目的でプロジェクトを発足した背景もあり、多くの方からマスクや防護服などを支援頂いたり、寄付を頂くこととなり、活動を支えて頂きました。

本当に皆様のご厚意に感謝しております。ありがとうございます。


妊産婦へこのプロジェクトの存在を届けること、ほんと大変でした。
困っているだろう妊婦が助産師の存在、係り方を知らないことと、通常でも妊娠期に産後の育児の立ち上げのことを心配し、事前に対策をとっておかなければならないと思う人は少ないからです。InstagramやTwitterを使って発信し、「妊産婦に届け!」と念じていましたがどれくらい届いたかはわからないので、もっと前準備をしっかりしないとインターネットでプロジェクトを短期間で周知することは難しいことを改めて知りました。
とは言え、「東京 里帰らない人応援プロジェクト」について幾つかのメディアで取り上げていただけたことで、時間が経過するに連れて認知度が上がっていきました。

東京新聞 2020年6月13日(電子版)

毎日新聞 2020年7月2日
https://mainichi.jp/articles/20200702/k00/00m/040/136000c


また、この非常時に妊産婦のために支援しようと言う動きは、「東京 里帰らない人応援プロジェクト」以外に、全国の助産師がWebミーティング(Zoom)を使って、妊産婦からの相談を受けますと言う活動が活発になりました。両親学級が中止になって、事前に知識を得る機会がなくなったことを補い、また妊娠出産に関することで困った時に、助産師に相談できるのだと言うことを多くの人たちが知りました。またパートナも在宅で仕事をしていることが多かったので、助産師によるオンラインでの相談やセミナーのい夫婦で参加する機会が増え、男性も出産、育児について考えるきっかけができ、夫婦で話し合うことができたと言うことをよく聞くので、非常に有意義な活動であり、新しいスタイルの出産準備が出てきたと思いました。

「東京 里帰らない人応援プロジェクト」は非常事態宣言も解除され、少しずつ経済活動が再開され、医療機関における体制も当初と比べると対応できる準備ができてきたこともあり、非常時の緊急対応という目的が合わなくなってきたこともあり、見直すタイミングにきているように感じているので、一度文章にまとめてみました。

非常時の緊急対応でプロジェクトを立ち上げた経験を活かし、COVID-19の第2波、第3波に備えた対応を考えるだけでなく、産前、産後に存在する課題をこれまで以上にパワーアップして考えて、実行していく予定です。

余談ですが、
このプロジェクトを運営するメンバーは6名いますが、まだ一度もリアルに全員で会ったことがなく、プロジェクトの発足から運営までをオンラインだけで実現していて、ちょっと不思議な感じの活動となっています。みんなで集まれる日、楽しみにしています。

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