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「イラストレーター SOLANI(ソラニ)さまの名刺制作」

こんにちは、現場の前田です。

今回、箔押し加工でお手伝いさせていただいたのは、イラストレーター SOLANI(ソラニ)さまのお名刺です。

SOLANIさまの Twitter はこちら


SOLANIさまの名刺制作には、名刺に使用する紙のアドバイザーとして平和紙業株式会社の紙谷 刷太郎( かみたに すりたろう )さまが加わり、紙谷さまとコスモテックが一緒になって制作に挑みました。

◉ 紙谷 刷太郎さまの note 『 なるほどなPAPER 』
作家やデザイナーとコラボすることで 「 紙ってこんなふうにも使えるんだー、なるほどー! 」 を目指した、今までありそうでなかった新しい場所


◉ 紙と紙を合体させて

名刺で使用している紙は、2種類の異なる紙を合紙(ごうし)加工しています。これは、紙と紙を合体させる加工のことで、今回は合紙加工でオリジナルの紙をつくり出すところから製作をスタートしています。

2種類の異なる紙を貼り合わせて作られた紙

紙谷さまがご提案した紙はこちら
紙の解説文は 平和紙業株式会社ホームページ より

紙 ジェントルBOX(ホワイトフェイス) L判T目27㎏
パッケージ用途に向け、使い勝手の良いL判規格としました。高級塗工印刷用紙 「 ジェントル 」 と同様に、微塗工を施しているため印刷再現性も良く、加工適性も良好なパッケージ用紙です。

紙 ケンラン(くろ) 4/6判Y目265㎏
44色の多彩な色揃えと7連量の厚さで、幅広い用途に対応する色カードの定番です。プレーンな肌合いのため、印刷適性も良好です。定番44色の他、キラ加工を施した6色もあります。ケンランは合計50色を取り揃え、あらゆるシーンで活躍します。

ジェントルBOX(ホワイトフェイス)は白色で、手触り感はしっとり。
ケンラン(くろ)は黒色で、ぱりっと硬質な印象を受けます。

これら性質の異なる2種類の紙を合体し、モノクロのオリジナルの紙をつくり出しました。紙の厚みはなんと約0.8mmほどもあるため、名刺を横から見た時の断面のインパクトも抜群です。

積みあげた時に現れる断面の縞模様が印象的

◉ レイヤー感がすさまじい

SOLANIさまの名刺は片面(黒紙面)に上記に挙げた SOLANIさまのイラスト、裏面(白紙面)には情報というデザイン。

なんと今回の製作においては箔押し4回押し!という驚異の仕様なのです。

無題 (1)

黒紙面(イラスト面)
黒紙の輪郭の余白が約0.5mm残る状態で、透明ホログラム箔を用いてベタの箔押し。その上にイラストを反転させた状態で白箔押し。白箔押しのベタ白抜きの部分から見えるのは黒色に透明ホログラム箔押しした部分。

白紙面(情報面)
黒箔押しで SOLANIさまの情報を箔押し。その後、黒箔押しした情報部分の上に透明ホログラム箔を見当合わせ(位置合わせ)でどんぴしゃに箔押しするというもの。

このように、上のデザイン案を見てもわかりますが、「 箔・箔・紙・紙・箔・箔 」 の全6層のレイヤーで SOLANIさまの名刺を製作するのです。6層合わさった時、シンプルなモノクロの名刺ではありながらも、要所に良い意味で箔押し加工を感じさせない、『 技術 』がさりげなく光る・薫る名刺となりました。

加工に使用する金属製の箔押し版
版選びにも、実は見えない工夫がされている

◉ 制作の一つにあるキーワード 『 黒ホロ 』

少し前まではあったのに、今は残念ながら廃盤となってしまっている黒色のホログラム箔 通称 『 黒ホロ 』 。 SOLANIさまの名刺制作の一つにあるキーワードは 『 黒ホロ 』 の再現です。

黒紙のケンラン(くろ)の上に透明ホログラム箔を箔押しする。
黒箔の上に透明ホログラム箔を箔押しする。

上記二つの方法で紙の色・箔の色に透明ホログラム箔をかぶせることで 『 黒ホロ 』 の再現を目指しました。黒の中に微かに見える、ホログラムの光彩の変化は独特のインパクトを残します。なかなか文章や言葉に表すのが難しいのですが、その輝きに気づくとハッとして感動が溢れてきます。

◉ 黒紙面(イラスト面)加工の詳細

黒紙の輪郭部分の余白が約0.5mm残る状態で、透明ホログラム箔でベタの箔押しをした後、その上に見当合わせでピッタリ位置が合うように反転させたイラストを白箔押ししています。透明ホログラム箔押しも白箔押しもどちらもピッタリ位置を合わせることが難しいのですが、特に難易度が高いのが透明ホログラム箔押しです。

紙に箔押しされた部分が抜けている
遠目では見えにくいが、名刺のフチは素の紙地が見えている

黒紙の輪郭の余白がぐるりと0.5mm残るように、四方を均等な幅に位置を合わせるのは至難の業です。

また、白箔押しは繊細なイラストをベタ白抜きで箔押ししているため、白抜き部分が箔で埋まらないように、加工に取り掛かる前の箔押し機の加熱・加圧具合の調整にも特に注意を払いながら本番の加工に臨みました。

白箔を押し終えた箔の抜け殻
白箔は数種類ある銘柄の中から作品イメージに合うものをセレクト

白箔押しのベタ白抜きの部分からキラリとのぞくのは、紙の地の黒色とその上から押した透明ホログラム箔が重なったものです。

◉ 白紙面(情報面)加工の詳細

白紙の上に黒箔押しで SOLANIさまの情報を箔押し加工。その後、黒箔押しした情報部分の上に、同じデザインで透明ホログラム箔を見当合わせでピッタリ重なるように箔押し加工しています。

黒箔を押した上にぴったりと位置を合わせて透明ホログラム箔を重ねる

1工程目の黒箔押しは文字のエッジやシャープさが際立つように意識を集中して箔押し加工し、2工程目のホログラム箔押しは1回目と同じ位置にどんぴしゃで合わせています。少しでも押し位置がズレてしまうと目立ってしまうため加工時は緊張が走りました。

しっかり目視し、ゆっくり慎重に時間をかけて位置を合わせながら箔押しすることに心がけました。

◉ さりげない 『 技術 』 の結晶

手加工で一枚一枚名刺サイズの紙に丁寧に箔押ししている
仕上がりフチから約0.5mm内側へ箔押しするのは至難の業!

こうして、完成したイラストレーター SOLANI(ソラニ)さまのお名刺は、金箔や銀箔の 「 箔押ししてます! 」 というきらびやかさは極限まで抑えられ、目に飛び込んでくるのはシックでクールなモノトーンの色彩です。

しかし、よーく名刺を見ると黒色の中にキラリと光るホログラムの光彩を見つけたり、さりげない 『 技術 』 の結晶に気がつくことができます。

「 おっ! この名刺、もしかして箔押し加工してるの!? 」
「 おっ! この黒い部分、もしかして黒ホログラム箔なのかな!? 」 と。

ただの黒じゃない! 見る角度によって黒色の中から虹色の虹彩が飛び出す

名刺を受け取った方の心に 「 !? 」 という驚きや微かなひっかかりを与えることで忘れられない深い印象を残すことができるのです。

箔押し加工らしからぬ控えめな表現であり、箔押し加工だからこそ成し得る芯の強さを感じる表現でもある… 真剣に目の前の加工に向き合いながら、驚きと発見がたくさんある名刺制作でした。

平和紙業の紙谷さま、今回も多大なる制作のサポートをありがとうございました! そして、イラストレーター SOLANI(ソラニ)さま、今回チャレンジングな仕様で頼っていただき、本当にありがとうございました!

完成したイラストレーター SOLANI(ソラニ)さまのお名刺


【 箔押し加工 】

有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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