見出し画像

「京極夏彦さま『 姑獲鳥の夏 ゴールド 』」

こんにちは、現場の前田です。

今回ご紹介するのは作家 京極夏彦さまの作家デビュー25周年記念を飾る、京極夏彦さまデビュー作 『 姑獲鳥(うぶめ)の夏 』(講談社) の特装本製作です。


なんと、一冊 十万円の本!!!

一冊 十万円の超豪華な特装本!金箔に覆われた限定特装本で、装丁はブックデザイナーの坂野公一さまによるものです。

ブックデザイナー 坂野公一さま
「 本を金箔で覆う 」 ことを発想の起点に、「 黒には闇、赤には姑獲鳥、金には児 」 のイメージをなぞらえ、 「 姑獲鳥 」 自体を体現する装幀こそが最適解と考え、デザインをまとめました。


本革の表紙に総金箔、三方金加工も施され、さらにこの金色に輝く本には本を収めるための重厚感のある外函も付いています。 今回、コスモテックではこの外函への箔押し加工をお手伝いさせていただきました。

画像7
画像7


坂野さまが独立後に初めて手がけられたのが、京極夏彦さまの 『 豆腐小僧双六道中 ふりだし 』(講談社)。 その頃から京極夏彦さまの作品を数多く手がけられており、坂野さまがこの度の京極夏彦さまデビュー25周年記念特装本にかける熱い思いを特装本のデザインや仕様からもうかがうことが出来ます。

夢のような出来事が・・・

金色の本を収める外函の蓋には羽根の図案と本のタイトルがレイアウトされているのですが、この羽根の部分… なんとなく見おぼえがありませんか?

実は、コスモテックの WEB STORE で販売されている、箔便箋「 白鳥・黒鳥 」( レイアウト:前田瑠璃、画:辻優子 )に使用されている図案をご採用いただいたものなんです!


そして、外函に外装箔加工/意匠協力 前田瑠璃+辻優子(有限会社コスモテック)のクレジットまで入れていただけたことに、とても感動いたしました。ありがとうございます。

画像7

細部にまで細心の注意を払うこと

外函に使用されている紙は、ハンマートーンGA(黒)4/6判Y目<100kg>。
黒紙に箔押しすることには、ちょっとした問題が。

黒い紙に箔押しをすると、黒紙に使用されているカーボンと箔に含まれているアルミの化学反応によって、箔が錆びてくすんでしまうなどの経年劣化を引き起こす可能性があるのです。特に長期保管するアイテムである場合は対策が必要です。

今回は大切に保管される特装本であることを考慮し、紙に 「 Jスクラッチマット 」 という傷が付きにくい処理を施された特殊フィルムを貼り合わせています。黒紙と箔の間にこのようなフィルムを挟み込むことで、箔の錆びに対しても回避することが出来るのです。

画像7


ハンマートーンGA 特有のテクスチャーに 「 Jスクラッチマット 」 のヌメッとした質感が、おどろおどろしくも荘厳な雰囲気に感じられ、不思議な用紙となっています。

驚異の3回押しを実現!

箔押し加工では、羽根の重なり具合を立体的に見せるため、シルキールージュ箔を2回に押し分けて加工し、タイトル部分をシルキーパイン箔で1回押しする、合計3工程となっています。

画像7
画像7


函が展開されている状態で箔押し加工するため、紙のサイズは大きく、紙の厚みも薄いため少しの衝撃で紙が折れてしまいます。

加工の際は1枚1枚折れないよう慎重に作業を進めながら、また、羽根の図案の繊細さとタイトル文字のシャープさにも気を配りながら加工をおこないました。

画像7


黒地に赤、金の3色のコントラストが美しく、また、随所にこだわりのあるデザイン、加工が施され 『 姑獲鳥の夏 』 を体現した特装本となっています!

坂野さま、講談社さま、この度は京極夏彦さまの記念すべき貴重な作品の加工をお手伝いさせていただきましたこと、羽根の図案をご採用いただきましたこと、またクレジットに名前を載せていただきましたこと、本当にありがとうございました!!

= 下記、ブックデザイナー 坂野公一さまよりコメント =
 

「 姑獲鳥の夏ゴールド( 正式名称:本革金箔装 姑獲鳥の夏 ) 」 の函に、「 赤い羽根 」 をどのように定着させるかを検討していた時、SNSでコスモテックの 「 箔便箋 『 白鳥・黒鳥 』 」 という商品に出会いました。

本物の羽根を貼り込んだかのような立体感と、羽根が紙面をぐるりと取り囲むレイアウトの強烈な 「 圧 」 に魅了されました。

「 赤い羽根 」 の表現にはこれしかないと確信した僕は居ても立ってもいられなくなり、コスモテックの青木さんに 「 このレイアウトごと使わせていただきたいのですが… 」 とご連絡を差し上げました。

すると青木さんは既に 「 姑獲鳥の夏ゴールド 」 のことをご存知で、待ってましたといわんばかりに即ご快諾下さいました。そして 「 一度テストしてみますよ! 」 と黒い用紙に赤い箔を押したテスト版をマッハで作って下さいました。

届いたテスト版は異様な迫力を放っていて、箔を重ねて押す技による羽根の重層的な仕上がりと、箱の正面を取り囲むようなレイアウトにあらためて心を奪われました。そして 「 これはイケル! 」 と強く確信。

果たして素晴らしい函が完成しました。そうそう、何気なく見えるかもしれませんが、タイトルの細い文字も高い技術がないと美しく仕上がらないのです。

デザインと羽根の図案作成を担当されたのは前田瑠璃さんと辻優子さん。お二人の高いデザイン力と極められた技術力、そして情熱に最敬礼を。コスモテックの皆さんには紙と箔の相性のことや、箔に適したデータの作り方などもご教示いただき、大変貴重なお仕事体験をさせていただいたことにも御礼申し上げます。


【 箔押し加工 】

有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?