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「 一期一会! 世界に一点だけ! 3333パターン 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の製作 」

こんにちは。コスモテックの前田です。

コスモテックの note で2回にわたりご紹介させていただいた、シールコレクターであり、オリジナルシールの制作者でもある AGAWA さまの 『 ハッピー天女Ⅳ 』 が2024年の6月15日に発売された後、約15分ほどで完売しました!

驚異的な早さでの完売に製作・加工で携わらせていただいたコスモテックの現場メンバーも驚きとともに、「 短時間でこんなにも多くの皆さまが箔押しシールをお迎えくださったのか! 」 と、とてもうれしい気持ちになりました。ありがとうございます!


◉ 続々と届く 3333パターンの 『 ハッピー天女Ⅳ 』 を見て

X( 旧Twitter )では連日、 AGAWA さまから届いた 『 ハッピー天女Ⅳ 』 について、お求めくださったお客さまがコメント・メッセージを続々と投稿されていらっしゃる様子です。

下記リンクは、お客さまからの投稿をまとめさせていただいたものです。


お手元の 『 ハッピー天女Ⅳ 』 をさまざまな角度から撮ったお写真、箔の光彩感・光沢感を意識して細部にまでわたり撮影してくださった写真、解説付きの動画などの投稿も日に日に増えているようです。皆さまが 『 ハッピー天女Ⅳ 』 を大切な宝物として扱ってくださっているのが感じられ、私もうれしくなりました!

あまりにもたくさんの、そして未だかつてない箔押しパターン数をただひたすら必死に押していたコスモテックの加工現場では、改めて皆さまの投稿で 『 ハッピー天女Ⅳ 』 を眺めて 「 このような箔色の組み合わせもやっていたのか!? 」 と驚いております。目の前で加工していたはずなのに、なぜか はじめて見るような新鮮な気持ちになるなんて不思議です。

注意深く、箔押しシール 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の加工と向き合う
箔押し加工は写真のように、すべてコスモテックの現場にて
一点一点 手加工・手作業で製作


今回、すべてが世界に一点ものの 『 ハッピー天女Ⅳ 』 を 全部で 4352パターン箔押しすることに集中するがあまり、私は他が見えなくなるほどに とにかく徹底的に AGAWA さまの作品づくりに向き合ってきました。

加工中の私の頭の中は 「 正確にすべての箔を押し切るのだ… 」
ただそれだけに意識を集中させていました。


今回お求めいただいたお客さまの中には 『 箔爆発 シールの宝石 』 というすばらしくキャッチーな表現で熱い思いを込めた Youtube 動画( 
ビックリマン倶楽部さまによるもの )を公開してくださるなど、その勢いはとどまることを知らず、今なお SNS を中心に 『 ハッピー天女Ⅳ 』 が大きく注目され続けております。

まさかこんなことになるとは……
製作・加工に携わった私にとっても衝撃的な事態になっております。


全4352パターンという途方もない、前代未聞の箔押しのパターン数に加え、1パターン( 種類 )につき箔押し5工程にもなる加工は長期にわたる工期と製作時間、そして すさまじい根気と集中力が必要でしたので、こうして今 お手元に届いたお客さまからの喜びの声を眺めていると大変幸せな気分になってきます。

お客さまが X( 旧Twitter )に熱いコメント・メッセージを、その興奮が伝わるすてきな写真・動画を添えて掲載、投稿してくださるおかげで、私たち加工の現場メンバーにもお客さまの熱や喜びの声が直に届くので、本当に励みになります!

「 ありがとうございます! 」

◉ お客さまから教えてもらったこと

・ まるでシールの彫刻のよう。これはシールの美術品だ!

X( 旧Twitter )では、『 ハッピー天女Ⅳ 』 が届いたお客さまからのさまざまなうれしいコメントが投稿されています。

コメントの中には
「 5色の箔を押した圧の凹みによってイラストに立体感を感じる!
というものや、見る角度によって変わる 『 ハッピー天女Ⅳ 』 のシールそのものの表情の変化への言及など、箔押しシールをしっかりと細部まで見てくださるお客さまが数多くいらっしゃるのが伝わります。

「 確かに箔押しの押し圧により作品にぐっと立体感を感じるなぁ 」
「 こんな細かい部分まで見てくださったのか! 」

…… お客さまの視点とコメントを通して、今回の加工を振り返りながら改めて感動したり驚いたりしております。

写真は試作( テスト )時の 『 ハッピー天女Ⅳ 』
お客さまより箔押しシールの美術品という反応も!


また、 『 ハッピー天女Ⅳ 』 のシールが 『 箔押し加工そのものを知っていただく機会 』 にもなり、「 箔押し加工ってこういうものだったのか! 」 と感じてくださる方も本当に多くいらっしゃるようでした。そして 今回の製作を通して、コスモテックという箔押し印刷会社を知ってくださったり、興味を持ってくださった方もいらっしゃり、うれしく思いました。

箔押し加工のメタリック調の強い輝き、煌びやかで彩り豊かな光彩は作品にぐっと特別感を演出することが得意です。ぜひ皆さまの表現方法の一つとしてご参考になりましたら幸いです。

◉ 実際に現場の加工で大変だったこと

コスモテックの箔押しの現場で全4352パターンの 『 ハッピー天女Ⅳ 』 を製作した後、AGAWA さまによってその中から精鋭部隊が選定され、販売されたのが 3333パターンです。 何度でも言いますが、このとんでもないパターン数の加工は今まで私が経験したことのないものです!

AGAWA さまがエクセルにまとめてくださった箔押しリストを青木(コスモテック)が加工現場での製作管理用にカスタマイズ・情報整理したのですが、この箔押しリストをはじめて拝見した時は度肝を抜かれました。

コスモテックの現場で使用した 『 ハッピー天女Ⅳ 』 のパターンリスト
つくり終えたものに線を引いて、一つ一つ消していった
最後はボロボロに…… 戦い( 加工 )の壮絶さを物語っているよう


「 これは… いろいろ超えてきてるぞ…! 」 と。
箔押し5工程、リストの長さが尋常ではない仕様を物語っておりました。

使用する箔色を絶対に間違えないように、さらには 箔×箔 の組み合わせを間違えないように、箔押しリスト( 青木命名 「 AGAWA フォーマット 」 )と にらめっこしながら、一点ものの作品づくりに没頭しました。

5工程( 5図案を重ね合わせる )という見当合わせ( 位置合わせ )が超絶シビアな仕様のため、加工は慎重に慎重を重ねて 丁寧にじっくり行いました。

箔押し加工の位置を微調整している様子
48×48mm のコンパクトサイズの正方形がゆえの箔押しの難易度の高さを感じる


また、『 ハッピー天女Ⅳ 』 の製作・加工で使用する箔色の種類は膨大なため( 国内外の箔メーカー数社の箔材を織り交ぜて使用 )、それぞれの箔の中で定着の良い接着剤を選ぶということも今回の隠れた重要ポイントでした。

箔材の表面( 色 )が同じでも、いろいろな接着剤の種類をその都度 試しながら定着の良い箔材を選び 加工しているのです。

・ 難易度MAX 「 金属の版が伸びる!? 」

箔押し加工は、専用の機械による熱と圧力によって箔材を熱圧着させるのですが、加工時の熱によって加工で使用している金属版が若干膨張します。

そのため、今回の 『 ハッピー天女Ⅳ 』 のように5工程にもなる超絶シビアな見当合わせ( 位置合わせ )となると、金属版の膨張により正確な位置合わせが非常に難しくなります。

また、48×48mm というシールの仕上がりサイズ内に繊細な図案が所狭しと配置されており、この小さなスペースに5回も箔を重ね合わせることは至難の業です。本当にほんの少しのズレだったとしても 48×48mm サイズ内では目立ってしまうのです。

箔押し機から取り出した大きな長方形の熱板( ねつばん )
真ん中に貼り付けられているのが箔押し加工で使用する金属版
この金属版を5回差し替えて 5層箔仕立ての 『 ハッピー天女Ⅳ 』 をつくる
1パターン5図案をぴったり、どんぴしゃで重ね合わせるには
慎重さ、丁寧さはもちろん さらには職人の経験と勘も必要
職人の手、そして目をもフル稼働させて位置の微調整を行う


一度 箔を押してみては一つ前に押した工程で押したトンボ( トリムマーク )の位置をよく確認して、トンボとトンボの位置がぴったり合うまで目視で確認しながら手作業で位置を調整していきます。 しかし、実はこの位置合わせの方法だけでは、まだうまく仕上がるわけではないのです( そのワケは下の青木の文をご覧ください )

そして 熱のみならず圧力の調整も大変です。 5回も一つのシールに強力な圧力をかけて箔を押すため、材料であるシール素材が加工の圧力によって目で見ても判らない程度ですが伸びるのです。このように 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の加工は、『 実は熱と圧力との戦い 』 でもあったのです。

まるでコンマの世界で戦っているような感じなのです。

写真はシールサイズ 48×48mm に仕上げる前の状態
箔押し表現されたトンボ( トリムマーク )、その横に箔の色玉5色が見てとれる
色玉5色は箔を5回押したことを表している

箔の色玉をご覧ください!( 文 コスモテック 青木 )

今回は1種の箔押しシールを仕上げるにあたり、金属版5枚を使用し、5層( 種 )の箔をぴったり重ね合わせて 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の図案を完成させております。

上の写真のトンボ・色玉は5工程の位置を合わせるための目印のような役割を果たしています。

「 色玉の部分をよーくご覧ください! 」
正方形の色玉がなぜか一直線ではなく、いびつにデコボコして並んでいるのが分かります。 
これは熱圧による金属版とシール素材の伸縮と現場の職人が 『 戦った痕跡 』 でもあります。

データのままに正方形がぴったり横並び一直線状態になるように箔押し加工をしようとすると、なんと 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の図案にズレが生じてしまい、美しい図案を台無しにしてしまいます。何度も加工を繰り返すうちに目印が目印の役割を果たさなくなってしまう恐怖の現象……

今回の場合、トンボ・色玉の位置にとらわれ過ぎず、 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の図案が美しく成立する方に重きを置いて加工します。

『 ハッピー天女Ⅳ 』 の図案の中に
4色の箔がぴったり合わさることで円形が成立する部分がある
トンボ・色玉が位置合わせの役割を果たせなくなっていく中、
図案の中に目安となる箇所を見つけて照準を定める

箔押し加工の熱の影響で金属版が膨張することで、トンボや色玉の本来の役割( 位置合わせ )が曖昧となっていく中、加工を成功させる最後の砦は現場の職人の目と感覚なのです。

「 うーん、色玉の位置は揃わなくなるけれども、ここからコンマ1 横にずらせば図案の重なりはどんぴしゃ位置が合うかなぁ 」 このような目視による微調整を繰り返し何度も行い、今回の 『 ハッピー天女Ⅳ 』 3333パターンが完成したのです。

・ ケースの箔押しも実はコダワリ満載!

そして今回は、『 ハッピー天女Ⅳ 』 のシール本体以外にも、シールを封入するケース( 封筒 )にも箔押し加工をさせていただきました。

こちらは、2色の箔をケースのベロが折られている面 全面にわたって箔押し加工しております。なんとすでに成形、製袋( せいたい )された状態のケースにどん!と箔を押しているのです。

成形された状態のケース( 封筒 )の全面に2色の箔押しをどん!
実はこれもまた非常に難易度の高い箔押しを試みているのだ


加工の特性上 特に難しいポイントが、ケースのベロが本体と重なり合っている部分への加工です。 紙が重なり合うことで段差ができるため均等に圧力をかけることが困難になり、これによって箔をきれいに押すための調整が必要になります。箔が均一にのるようにするには職人の腕と経験が不可欠です。

実は当初の仕様ですと、もともとはベロが折られている面への箔押し加工ではなく、その裏面のフラットな面( 封筒の宛名面にあたる )への箔押し加工というご依頼だったのです。

校正( テスト箔押し )の段階で 「 AGAWA さま、実はこういうこともできますよ! もしかしたら、表現したいものにマッチするかもしれません! 」 とサンプルを提出させていただいた際、「 これはあり! 良いです! 」 と AGAWA さまに即ご採用いただけたのがこの難易度が高いベロが折られている面への箔押しなのです。

ケース( 封筒 )のベロを折りたたむことで 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の図案が出現!


ベロを折った状態で図案が出現するというさり気無くも粋な仕様になっております。そしてもちろん 『 ハッピー天女Ⅳ 』 のシールと同様にケースも一枚一枚 手作業・手加工で箔押し加工しています。

◉ 加工の現場から感謝を

『 ハッピー天女Ⅳ 』 クレジット
企画・制作 : AGAWA [ https://bikkuri-man.com/ ]
イラスト  : チョ麻Cop.
製作・加工 : Cosmotech Inc.

とてつもない根気と精密さが必要だった 『 ハッピー天女Ⅳ 』 の箔押し加工でしたが、お客さまがお手にとって喜ばれている様子を拝見すると、「 また加工を、仕事を頑張ろう! 」 という前向きな気持ちになります。

AGAWA さま、全4352パターンという類を見ない加工に挑戦させていただき、本当にありがとうございました!  そして、お求めくださった皆さまに幸( ハッピー )あれ! 一期一会、お手元にある世界に一点だけの 『 ハッピー天女Ⅳ 』 を皆さまの宝物にしていただけるとうれしいです。

◉ 関連記事 / まとめ

【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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