[人工衛星Emmaのキセキ]第6話 死闘!地上局&審査
こんにちは。
あいです。
前回はこのプロジェクトが、
スケジュールにおいても予算においても当初の予定より大きくズレ続けた、というお話をしました。
その根本的な原因は私たちの知識不足と認識の甘さだったわけですが、具体的に大きくスケジュールと予算に影響した要素は何だったかといえば、
周波数申請と、地上局の開設でした。
というわけで、今回は、それらについてもう少し詳しく書いていきます。
周波数申請?地上局?
まずは、「周波数申請」および「地上局」とはなにか?
というところについて書いていきます。
以前の記事でも少し書きましたが、
周波数申請とは
「打ち上げた人工衛星と無線で通信を行うのに、どの周波数の電波を使うのか」
ということをあらかじめ申請するもので、混線を防ぐために必要なものです。
私たちの衛星は多くの方に参加いただけるよう、アマチュア無線を使って通信を行います。
アマチュア無線は日本だけでなく世界各国で使用されているため、世界のアマチュア無線の周波数帯と干渉しないかどうかを考慮する必要があります。
具体的には、総務省に申請を提出し、各国からの異議申し立て期間が設けられました。
異議申し立てって、はたしてどれくらい来るものなのか、と思ったりもしましたが、少なからぬ件数が来て驚きました。
周波数は携帯電話などでも使用されているため、携帯事業者のドコモやau、ソフトバンクも申請を行っていますが、私たちはそういった大企業のような経験やノウハウがそもそもありません。
そのため、周波数の申請はかなり難航しました。
最初はどこに申請すべきかもわからないような状態で、様々な団体に指導を仰ぎながら進めました。
作成すべき資料がとにかく多く、それを作るためにまた膨大な資料に目を通す必要があったり、それでもわからないことを教えていただいたり……
時間もかかりましたし、いろいろなところにたくさんお世話になりましたが、最終的に多くのことを学び、知識も身につけることができ、今後の運用に向けての意味ある一歩となりました。
えっ、うちが作るの!?
そんな風に周波数申請を進めながら、並行して行っていたのが地上局の準備 手配です。
まず地上局とは何かという話ですが、
人工衛星とアマチュア無線で交信をするには、人工衛星側と地上側の双方に、送受信を行う設備が必要となります。
その地上側の送受信を行う設備一式を揃えた拠点が、いわゆる地上局です。
この地上局に関しても、はじめは自分たちで設置する必要があることをわかっていませんでした。
自分達で用意しなかったら一体どうやって打ち上げた衛星と通信するつもりなんだという話で、業界の人が聞いたら呆れられそうなことですが、本当に当初は「えっ、地上局も自分たちで作るの!?」という感じでした。
どこかにある地上局を借りたりできるんじゃないか?
という考えもあったのですが、
機器類の管理責任やセキュリティの観点から、地上局はやはり自前で持ち運用しよう、ということで、私たちは地上局の開設も行うこととなったのです。
地上局開設もラクじゃない
さて、そんな状況で始まったわけですから、地上局開設には大変苦労しました。
この人工衛星プロジェクトの大体全てにおいてそうなのですが、
なにせ、まず何をしたらいいか、何から着手したらいいかもわからないところからのスタートです。
繋がりのできた方々に片っ端からお知恵をお借りして必要なことを洗い出し、そこでようやく実際の課題に直面する、といった具合でした。
具体的にどんなところに苦労したかというと、
場所の確保、アンテナの設置、地上局として構築、などでした。
まず場所についてですが、
交通の便をはじめとした諸々を勘案すると、どうしても都心が望ましいということになります。
一方で、都内は電波がたくさん飛びかっており、また、高い建造物が多く立ち並んでいます。つまり、通信を阻害する要因が重なっているわけです。
このジレンマに悩まされましたが、苦労のかいあって、地平線から15度に人工衛星がきたら通信できるという、かなりイイ感じの場所に拠点を置くことができました。
そうやって場所を確保したら、次はアンテナの設置です。
さすがに自分たちで設置というのはできず、業者に依頼する必要があるのですが、アンテナを立てる工事ができる業者さんというのは数が少ないのです。
その上、寡占状態なためもあってか「一見さんお断り」みたいなところもあり、業者さん探しにも難航しました。
その他にも、必要機材については参考にした機器リストに既に廃番の製品が含まれていたのでなんとか中古で探したり、
そうやって揃えた機器をどうやって使うのかも手探りだったり……
ちょっと進んでは壁にぶつかり、を繰り返しながら地上局を作ってきました。
そんな風に皆で奮闘しながら準備を進めてきて、ようやく打ち上げの日が見えてきた!
というとき、事件は起こりました。
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