[人工衛星Emmaのキセキ]第8話 いよいよ打ち上げ!ハラハラ波乱と感動のアメリカ体験
こんにちは。
あいです。
私たちの人工衛星プロジェクトについてのお話をここまで書いてきましたが、今回はとうとう打ち上げの話です。
前回に書いたように、JAXAへの衛星引き渡しの直前まで思わぬトラブルに見舞われた私たちですが、やはりというかなんというか、打ち上げの際にも紆余曲折がありました。
打ち上げ便のロケットが飛行停止!?
まず、打ち上げ1か月前のことです。
私たちの人工衛星「Emma」を搭載予定だったSpaceX社のファルコン9ロケットが、なんとこのタイミングで不具合を起こし、FAA(連邦航空局)から飛行停止処分を受けるという事態に見舞われました。
ファルコン9ロケットはそれまで300回以上連続でミッションに成功しており、実に7年ぶりの失敗とのことで、「よりによって、なんでこのタイミングで」というのが正直なところでした。
SpaceX社は異常の原因を調査・修理し、FAAの承認を得るまで発射を控えるとのことで、それには場合によっては数週間から数カ月かかる可能性があると発表されており、Emmaは予定通り打ち上げられるのか、延期になるとしたらどれくらいかかるのか、誰にも分らず、気をもむ日々でした。
とはいえもう1か月前です。もし予定通り打ち上げられる場合、もう渡米の準備をしないと諸々間に合いません、
「空振りになるかもしれないけれど、とにかく現地に行こう」と覚悟を決め、打ち上げ予定日のわずか1週間前にフロリダ行きの航空券を購入しました。
現地でも延期!
アメリカに渡ったのは、私を含むコスモ女子のメンバー4人と、Kanattaの代表取締役である井口さん。
アメリカ・フロリダ州のケネディ・スペース・センターに向かうため、各メンバーはそれぞれ異なる経路で渡米しました。
到着したのは打ち上げ当日の未明。空港で合流を果たした後、ロケット打ち上げを見届けるためケネディ・スペース・センターへ移動しました。施設周辺はすでに多くの観衆で混雑しており、駐車場は1時間待ちの長蛇の列。ようやく会場入りした頃には、打ち上げまで残り2時間を切っていました。
見学エリア「Launch Spot」には、観客席やYouTube中継映像のモニターが設置されており、Emmaを搭載する第40発射施設(SLC-40)が正面に見える絶好のロケーションでした。私たちは中継映像が見られるディスプレイ近くにスタンバイしました。
現地の解説員が進行状況を説明し、カウントダウンが始まる直前まで順調に進んでいましたが、なんと打ち上げ15分前に「本日の打ち上げは中止」と突然の発表。
驚きましたが、会場を後にせざるを得ず、切り替えてみんなでケネディ・スペース・センターを満喫しました。打ち上げ前の数時間は安定した天候であることが条件で、見学エリアに移動中の通り雨が延期の原因だったことは後で知りました。
とうとう打ち上げ!
幸いなことに、翌日に再打ち上げとなりました。アメリカに滞在できる期間にも限りがあったため、これは本当に僥倖でした。
その日はホテルで体を休め、翌日再びケネディ・スペース・センターに。
燃料注入が完了し、打ち上げ15分前からカウントダウンが始まると、現地の熱気は最高潮に達しました。そしてついに、ファルコン9ロケットが轟音とともに空高く打ち上がり、音速を超えた際の地響きが観客を包み込みました。
Emmaを載せたロケットが宇宙に向かう姿を見守りながら、4年間の努力が実を結ぶ瞬間は感極まるものがありました。私たちは大いに感動し、互いに抱き合ってその喜びを分かち合いました。
この打ち上げの成功は、私にとって忘れられない人生の一大イベントとなりました。
さらにそこから、分離されたロケットの一部が地球に帰還する光景も観覧。垂直に降下するロケットが着地する際には、打ち上げよりも大きな地響きが観覧席にまで伝わり、その技術力に感動しました。
現地での感想と体験
実際にアメリカまで行き、現地で打ち上げを目にした体験を通じて思うのは、「リアルは別格」ということです。
テクノロジーが発達した今、動画でも鮮明に見えるかもしれませんが、現地で感じた地響きや空気の振動、観客の歓声、仲間との感動の共有は圧倒的でした。
今回一緒に行ったメンバーの1人は、Emmaが宇宙へ向かう姿を見て、自分自身の夢である宇宙飛行士への思いを改めて実感する時間だったと語っていました。
また現地では、宇宙関連の熱量や文化の豊かさも印象に残りました。
日常的に宇宙開発についてニュースで取り上げられ、ロケットが週に何度も打ち上げられている事実には驚かされましたし、たまたま出会った友人が元NASA職員であったり、宇宙関連の職業に就いている人が集う飲食店があるなど、宇宙産業が人々の日常に根付いている様子は、日本との違いを強く感じさせました。
また、宿泊先のホテルでは宇宙旅行を提供しているBlue Originが重要な会議を行っており、まさに「宇宙」が身近なものとして存在している場所でした。
いずれ日本もこんな風にもっと宇宙が日常になればいいな、と思ったアメリカでの体験でした。
そんな風に、とうとう4年あまりを経ての打ち上げを実現したわけですが、はじめの方にも綴ったとおり、人工衛星というのは打ち上げがゴールではありません。
次回は、打ち上げのその後のことをお送りしていきます。