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高知を新たな「宇宙県」に!星を通じて天文台で働く女性が増えることを願って。

谷 沙希
三重県出身。兵庫県姫路市の天文台で従事した後、2013年に高知県四万十市のホテル「星羅四万十」スタッフと兼任で新築された二代目天体観測ドーム運営に着任。お客様に星空を紹介する”星憧(しょうせい)アテンダント”の活動の他に、星空の写真撮影、天文台のPR活動を行っている。


ホテルスタッフをしながら、夜は天体ツアーでお客様に星空をご紹介しています

ー具体的なお仕事内容を教えてください。

天文台の運営をしていますが、天文台を運営してるのがホテル星羅四万十になりまして、私の所属自体はホテルのスタッフになります。
基本的には14時から22時までの勤務です。日中帯はホテル関係の仕事が中心で、客室チェック、ご予約対応をはじめ、チェックイン手続きだったり、合間を縫ってミーティングもしています。

その後、夜に1日1回限定で、四万十天文台で行う天体観望会という、星を見るツアーでお客様の誘導・案内をしています。
ホテル業務を一通り終えてから、夜の時間帯にやっと天文台のお仕事が入ってくるという感じですね。

ー天文台のお仕事について教えてください。

天文台は水曜日以外の週6日間開館しており、ツアー予約したお客様をご案内しています。
ツアーの所要時間は約1時間で、コロナの影響もありいまは最大8名程度でご案内しています。
繁忙期の夏は予約が一杯になることもあります。
天文台の担当が私一人なので、もし観望会を2回開催することとなった場合に合間の消毒作業が追いつかず、一般天体観望会は1日1回限定20-21時で開催しています。
さらに、ふるさと納税の返礼品として、ツアー後に40分ほど天文台貸し切りを行っています。望遠鏡にカメラをつけてお客様に自由に天体の写真を撮っていただき、SD カードごとプレゼントしています。
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/39210/5068914#

貸切で天体をみたり写真をとったりする機会ってなかなかないと思いますので、そういった貴重な経験の中で、星の魅力も西土佐の魅力も伝えたいとおもっています。


星にもお野菜や魚と同じように"旬"があります。夏でも冬でも天体観測は楽しめます

ー星の観察は夏がいいイメージがあります

天文台のツアー内でも紹介するのですが、お野菜とかお魚と一緒で星の世界にも旬があります。
冬の時期は湿度が低く、空が比較的クリアな状態であるのと、明るい星が一番多く見られる季節になります。
オリオン座やシリウスなど特徴的な星も多いですね。
逆に夏の時期は天の川が見やすく、晴れの日も多いので天の川が見たいなっていう方にはやっぱり夏がおすすめです。

季節を問わず、形がわかりやすい土星はお客様にすごく喜んでいただけるのですが、惑星は通常の星とは違う周期で動いていますし、春夏秋冬にそれぞれの良さがありますね。

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ーコロナの関係でここ1年、2年ぐらいはいろいろ制限があったかと思いますが、どのシーズンが最も人気ありますか。

ツアー予約が一番多いのは、8月になります。
コロナ前は最大300人/月くらいをご案内していました。
基本的にツアーは1日1回開催ですが、予約が多いときは1日2回開催していました。

星に興味がなかった方から「好きになった」「楽しかった」と言っていただける瞬間が嬉しいです。天文台の運営はプレッシャーもありますが、すごくやりがいを感じてます。

ーお仕事を通じてやりがいや楽しさを感じるところもお伺いしたいです。

やっぱり自分が好きなことを仕事に出来ることが非常に幸せだなと思います。
もちろん好きだからこそすごく辛い時もあります。企画が思うように前に進まなかったり、解決困難な課題があったり。

でもツアーなどでお客様と話をする中で「今日楽しかったよ」とか「家帰ってから星見てみますね」とか言ってもらえるのがすごく嬉しいです!
以前、女性2人組のお客様で、片方が星が好きで、他方は付き添いで来ていたお客様がいました。ツアー帰りには付き添いで来ていた方が「楽しかった。私ね、星なんてどうでもいいと思ってたんだけどあなたの説明聞いてものすごく楽しくてちょっと興味を持っちゃった。また家に帰ったら見てみるね」って言われたのが一番嬉しかったです。

天文台に来られる方全てが星好きではないので、私共の関わりをきっかけに星に興味を持っていただくのが私たちの仕事だと思っています。
先程の事例ではそれができたのが嬉しかったです。

ー大変なこともあったというお話がありましたが、どんなところが大変だったか聞かせてください。

ホテルスタッフが主な業務になるので、天文台の仕事を100%できる訳ではなく、自分の仕事が後回しになってしまいがちです。
四万十天文台は四万十市の持ち物なので、役所とも関わりがあるのですが、市との予算関係の業務が一番大変ですね。

天文台が二代目に新生した2013年は、天文台の運営体制も大きく変わり、観望会の料金設定や開館時間、休館日、利益の設定等、細部に至るまで決定に時間がかかりました。

2018年は四万十市の「星空の街」制定30周年と、天文台も5周年になるタイミングが重なったので、天文台のリニューアル記念日と一緒にPRイベントをしたかったのですが、予算がなかなかつかなくて講演会も出来ないまま終わってしまいました。

しかし、同年6月ごろ、高知県で有名な天文台「芸西天文学習館」の関係の方から天文講演会のお誘いをいただいたのをきっかけに、「あのとき何もできなかった分、何とかしてイベントをやりたいんです」って話をしたら快く協力してくださることとなりました。そして同年12月にコラボイベントを開催し、観望会も大盛況でした。

結果的にそういう一つのイベントとして色々経験が出来て、5年後10年後も見据えるように成長できたのは、大変ながらも達成感があった出来事です。

ープレッシャーもあるが、やりがいも感じているということでしょうか?

おっしゃるとおりです。
四万十天文台はふるさと納税をきっかけに再生ができた天文台です。
同じ天文台でも、予算や運営体制の都合で閉館をせざるを得なくなってしまった施設も結構あります。四万十天文台の復活が、天文台業界の中でいいきっかけになれたらいいなと思っています。
受け継いだからには後世まで残していく責任を感じていますので、長く繁栄させたいと思ってます。

数学などの理系教科は本当に苦手。でも星や自然だけは好きな子供でした。月観測をきっかけに星関係の本を読みあさってハマりました。

ー大学で星の勉強をされていたんですか?

大学では理学部物理学科を専攻しましたが、実を言うと子供の時から理数系の、特に数学がものすごく苦手でした。理科の中では自然関係の分野だけがすごく好きだったんです。
高校の進路選択で理系を希望してたんですけど、成績を見た先生が自宅に連絡してきて、親に間違いがないか確認されるくらい理系の成績はイマイチでしたね(笑)。

ー天文関係に進むことを決めていたのでしょうか。

小学4年生までは全然天文関係に興味がなくて、小学校2-3年生の時にヘールボップ彗星や百武彗星を見たはずですが、まったく記憶にありません。
当時は魚などの水中にいる生き物がすごく好きで、星とかけ離れたところに興味を持っていました。

小学校4年生になって父親が小さい望遠鏡で月を見せてくれたんです。
大気のゆらぎの関係で、お月様がゆらゆらっとしてるところを見て「生きものみたい」って思ったところから興味を持ち始めてからは、近所の図書館で星関係の本をたくさん借りて、どんどんハマっていきました。

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高校生に入る年の春休みに参加した東京大学主催の高校生向けイベント「銀河学校」と、同じ年の夏の国立天文台主催「君が天文学者になる四日間」へ参加をしてやっぱり天文って面白いと確信してから、最初は天文学者になりたいと思っていました。

高校大学と理系で進むのですが、たまたま大学3年生のときに学内に天文台ができたのです。
地域向けの天文台イベントの学生スタッフに採用してもらい、天文には研究以外の働き方があることを体感し、志すようになりました。
ただ、天文台の仕事はそもそも募集がすごく少ないので新卒では難しいと思っていましたが、「姫路市宿泊型児童館『星の子館』」さんで空きが出る話をSNSで知り、ご縁があって仕事をさせてもらうことになりました。

ー学生時代から活発にいろんな活動をされていますが、昔からチャレンジ精神があったんですか?

両親が自然が好きで、私も外で遊ぶのは好きでしたし、活発な方でした。
子供の時はザリガニやカエル、トカゲを捕まえるような、自然児というか、アグレッシブな方だったかなと思います。

休日は水族館でリフレッシュ!家事は夫婦でお互いに協力しあっています。

ー休日はどのように過ごしているのでしょうか

毎週どこかに行くのは難しくて、だいたい家事をしています。
家事で終わることも多いのですが、時々ストレス発散のために海に行ったり、大好きな生き物を見るために水族館に行ったりもしますね。
主人とはなかなか休みが合わないので、休みが合う時は一緒に買い物にもいきます。

ー週6の日中〜夜中の仕事をする中で、家庭と仕事の両立で工夫されていることは何ですか?

主人は元々同じホテルで働いていた同僚なのですが、いまは転職して土日休みで朝から夕方までの仕事をしています。
私が仕事で遅くなることはよく理解をしてくれているので、そこは助かっています。
帰宅するタイミングに合わせて料理は分担してますが、洗濯や他の家事は特に役割は決めずお互いに協力しながらやっています。
今後子供が産まれることになれば、保育所の送り迎えなどさらに工夫して協力する必要が増えることになるかなと思っています。

目標は高知を「宇宙県」として有名にすること。女性が来やすいイベント開催を通して天文台業界への女性進出に繫がったら嬉しい。

ーご自身の今後の展望をお聞かせください。

主な仕事は観望会やフロントのお仕事なんですが、天文台自体を教育委員会が管理をしているのもあって、年に1回、小学生向けの課外授業をさせてもらっています。
授業を受ける子どもたちが星に興味を持つきっかけをつくりたいですね。

あと、天文台のお仕事は、プラネタリウムと比べても女性の割合がすごく少ないんです。
天文台業界に女性がもうちょっと増えてくるといいなと思います。もちろん、研究者の中に女性の方がいらっしゃったりするんですけど、施設関係でも女性の仲間が増えてくれると嬉しいです。

星の観測は夜が中心になるのですが、どうしても夜の女性の外出は注意が必要です。特に女性の方向けにその安心して星を見ていただける場所をうちの天文台で提供したいです。
愛媛県の久万高原町にある天文台では女性向け、夜空が好きな女性の方へのイベントをされていて、私も同じような機会を作りたいと考えています。
コロナが落ち着いたら女性限定で天文台貸切や、望遠鏡を使った観測や撮影イベントを開催してみたいと思っています。

あとは、高知県を星空のきれいな場所だと認知してもらえるようにしたい。
日本だと長野県が宇宙県って言われるくらい星がキレイで有名なんです。私自身も子どもの頃に行ったときに天の川のあまりの綺麗さにすごく感動したのですが、高知県も、四万十の星も負けてないなって思っているんです。

いつかは、高知県も長野県みたいに星がすごくきれいな所なんだっていうのを「星見るなら高知県」みたいなので知ってもらいたいなっていうのが私の目標になります。

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ーありがとうございました!


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〇宇宙のお仕事図鑑とは?

このプロジェクトのきっかけは、「宇宙関係の仕事につきたかったけど、宇宙飛行士や天文学者しか知らなかった。」という声がコスモ女子のメンバーからたくさんあがったことでした。
宇宙のお仕事図鑑では、宇宙関連のお仕事をされている方々に取材をした記事を発信していきます。
文系の職種も理系の職種も(文理で区分する必要もないかもしれません)、大きな組織の中でのお仕事から、宇宙ベンチャーや個人でのお仕事まで、「宇宙のお仕事」をこのnoteで発信していきます。

〇コスモ女子とは?

「コスモ女子」は、宇宙業界で活躍したい女性中心のコミュニティです。

宇宙に関する知識を身につける「宇宙の基礎講座」や、宇宙に詳しくなくても楽しめる交流会などのイベントを毎月開催!

コスモ女子から発足した、コスモ女子アマチュア無線クラブが人工衛星を2024年に打ち上げる予定です。

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