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少年隊を知り尽くした作家:馬飼野康二特集

裏方である作家さんのバイオグラフィーって殆ど見かけない事が多い。
自分の好きな曲がどのような人達の手によって創作されているのか、
また、その創作過程を知りたいと思うのは私だけではないはずである。
少年隊の楽曲を手掛けている作家陣の中でも、
個人的に好きで深掘りしたいと思う作家は、宮下智さんと馬飼野康二さん。
今回は少年隊の楽曲の作曲、アレンジを多く手掛けられている
馬飼野康二さんについて取り上げたいと思います。

馬飼野康二 1948年生まれ 愛知県出身 
父親が商売の傍ら音楽の仕事をしていた影響から幼少時代より演奏活動を始める。
1967年、CBS・ソニーレコードからグループ・サウンズ「ブルー・シャルム」としてデビュー。
解散後、兄(馬飼野俊一)の影響で、作曲・編曲を手掛け、歌謡曲、CM、アニメ、テレビ・映画など幅広い分野で活躍中。

馬飼野さんが手掛けられた少年隊の楽曲を全て集めてみました。
(メドレーを除く)
バラードのように眠れ 編曲
ストライプ ブルー 編曲
君だけに 編曲
What’s your name? 作曲・編曲
情熱の一夜 作曲・編曲
君がいた頃 作曲・編曲

HOLD YOU TIGHT 作曲・編曲
誘われてEX 作曲・編曲
めぐりゆく夏 作曲・編曲
Dear・・・作曲・編曲
ミッドナイトロンリービーチサイドバンド 編曲
ビロードの闇に抱かれて 作曲

あなたに今Good-bye 編曲(新田一郎との連名)
魔法のウィンク 編曲
雨のスタジアム 編曲
NON STOP!! 作曲・編曲
Holy Spirit 作曲・編曲
Dear・・・ 作曲・編曲
JEALOUS BEAT 作曲
Liar 作曲・編曲
KEEP ON SINGIN’ 作曲・編曲
Prologue(Instrumental) 作曲 (愛史より)
僕はただ・・・ 作曲・編曲
Love history 作曲・編曲
愛史〜羽ばたく勇気〜 作曲・編曲
魂とここにあらん 作曲
楽園の扉〜メモリアルバージョン〜 作曲・編曲
楽園の扉〜閉幕のテーマ〜 作曲
めぐりゆく夏 作曲
NIGHT WING 作曲
Melody 作曲・編曲
ジュリエットへの手紙 編曲
OVERTURE 作曲・編曲 (RHYTHMより)
音楽の精のテーマ 作曲・編曲
星屑のスパンコール 編曲
仮面舞踏会 編曲(松岡直也との連名)
NEVER MY LOVE 編曲
一番小さなプラネタリウム 編曲
HEARTS 編曲
愛の嵐 作曲・編曲

こちらのリストをご覧になられたらお気づきになるかと思いますが、
膨大な数ある楽曲の中でもわりと重要な位置を占めている人気の高い楽曲が多いという印象を持ちました。
そして、その中に錦織さんのソロも結構あって、馬飼野さんと組んで錦織さんが作詞をされている曲も何曲かあります。
このリスト上の楽曲を見ている限りでも馬飼野さんは幅広くて高い音楽性をお持ちの方で、映画音楽をBGM用にアレンジするお仕事をしておられた経験からのアレンジ力の奥深さを感じずにはいられません。

それではここで昨年筆者が書いた馬飼野さんの作品である「情熱の一夜」と
「君だけに」についての解説を載せておきたいと思います。

情熱の一夜 99.6.23発売 オリコンチャート24位
作詞 松井五郎 作曲・編曲 馬飼野康二 
累計売上枚数 23,090

ラテンは少年隊のイメージにピッタリなのですが
意外にもラテン系の曲が少ないのですね。
メキシコ辺りのムードラテンやサルサまで、肉食系の情熱的なサウンドは
少年隊に似合うと思うのだけど、ラテンはジャニーズの色ではない、という事なのでしょうか。
作詞は松井五郎氏。男性として脂が乗ってきて、その魅力が一際輝く時代に入っているので、安全地帯の歌のようにグッと渋くて大人っぽいものに仕上がっています。
作曲者の馬飼野康二さんは、60年代後半から70年代にかけてブルー・シャルムというグループ・サウンズのバンドで活動されていました。
馬飼野さん曰く、ブルー・シャルムは派手さはないけれど、ジャズっぽいコーラスを取り入れたお洒落なサウンドのバンドだったようです。
その後、シングルリリースのみで1970年にバンドは解散。
実はブルー・シャルムはCBSソニーの契約第一号のアーティストだったようで、バンドの初めてのレコーディングに若き日の初代CBS・ソニーレコード社長、東京フィルハーモニー交響団名誉指揮者である大賀典雄氏が現れてタクトを振ったという逸話が面白い。
グループ・サウンズはいつか掘り起こそうと思っていたジャンルでしたのでこの際時代を遡って漁っていますが、演奏技術、サウンド、歌の上手さが素晴らしい。
今聴くと、歌詞が垢抜けていない感が否めないので時代の波に乗り遅れて消えてしまったのかと推測しますがサウンドは抜群ですね。
今ほどテクノロジーが全然発達していない時代なので、単純に高い演奏技術で勝負するしかなかったのでしょう。
60年代のサウンドって余計なものがなく研ぎ澄まされている音楽で溢れていた時代だったと私は見ています。
ただ、やっぱり暗さはありますけどね。
はっぴいえんど誕生前のエイプリルフールというバンドなんか今聴いても色褪せないです。【 小坂忠(Vo)菊池英二(G)柳田博義(Keys)細野晴臣(B)松本零(松本隆)(Dr)】
ブルーシャルムの活動時期と時を同じくしていますが、この辺で音楽もGSから一皮も二皮も剥けて洗練されたものになって行った。そのような印象があります。
そのひと昔前に「ジャニーズ」というグループが活動していましたが、(1962〜67年の活動期間)言わずと知れたジャニーズ事務所から初めてデビューした初代グループですね。
彼らの映像を初めて観てみたら、それはそれは素晴らしいパフォーマンスです!

先ずコーラスのハーモニーが美しくて驚きました。
特に英語の発音が上手くて本来のネイティブ寄りの発音で自然な感じなのですよね。
ジャズ歌手ですら日本人の英語の発音ってアクセントが強くて聞き辛い人が殆どなのに、昔の時代の方がむしろアメリカに近いのか。
音の捉え方も全然違っていて驚きました。
踊りも複雑な動きはしていないのに華やかなんですね。
これがジャニーズの王道だとしたら、少年隊はその系譜を受け継いだ、王道のど真ん中を走っていたグループだった。
この映像を見たところ、それはほぼ間違いないでしょう。


『君だけに』 87.6.24発売 オリコンチャート1位
作詞 康珍化 作曲 筒美京平 編曲 馬飼野康二
累計売上数 287,500枚

個人的にはもっと再評価されるべきと思っている作詞家の康珍化さんの作品ですが、女性が男性から最も聞きたい言葉をアイドルに言わせているのがニクイ。
わかっちゃいるけど聞くのをやめられない。
そしてエンディングのSpace感、この余韻の持たせ方に職人技を感じる。
この曲は少年隊主演のSF映画「19ナインティーン」の主題歌にもなっていたので
どこかムード音楽っぽい浮遊感のあるアレンジになったのでしょうか。
編曲者の馬飼野康二さんは映画音楽をBGM用にアレンジするお仕事をされていたようなのでここが腕の見せ所だったのかも知れない。
ちなみにこの映画の原作と脚本は作詞家の康珍化氏が担当。
「君だけに」は美しい振り付けでも有名ですが、
振付師の山田卓氏は譜面が読める方で、あの振り付けは楽譜を見ながら作られていたのだそう。あの指を鳴らすチップ音も山田氏のアイデアとか。
少年隊メンバーの錦織氏曰く、この曲はそれまでのようなリズミカルな曲調とは違うスローな曲で結構物議を醸した曲だったらしい。
それをあの振り付けで美しくまとめたのが振付家の山田卓氏。
記憶に深く刻まれている方も多いのではないだろうか。曲と踊りが一体となり、 全てが有機的に機能した作品。これはヒットしないはずがない。
後に少年隊の代表曲の一曲となった。


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