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コンビニにて

数年前のお話です。
※ かつてFacebookに投稿したものです。多少の加筆修正をしています。コロナ前の出来事なので、今の状況とは異なることがあります。


まだ私が駆け出しだった頃、演奏を終えた汗だくのトランペッターに言われたことがある。

「のんちゃん、JAZZで汗かこうぜぇ」

当時の私は、え、ジャズで汗かくとか嘘でしょ、と思ったものだが、今になればジャズは汗をかくとわかる。あのトランペッターのようにダラ汗になる人もいるだろう。でも私は、頭の中に汗をかく。

歌っている時、私の脳内は忙しい。メロディ、テンポ、リズム、コードの流れを理解しながら、時には挑戦的な音でミュージシャンの演奏と会話をし、声を調整し、響きを作り、更に英語の歌詞を理解し共感し、表現しているのだ。

だから(?)仕事終わりはわりとお腹が空く。
痩せたいのにお腹が空く。

その日も私は仕事終わりでお腹が空いていた。私はコンビニに立ち寄り、小腹を慰めるサンドイッチを手にした。

レジに行くと、一人の男性が私より一足先にレジに向かい、クリーミーモンブランをカウンターに置いた。

バイトの女の子がレジに立った。

ピピピッ

バイト女子「250円いただきます。…ストローはお付けしますか?」

男性「え?」

バイト女子「ストローはお付けしますか?」

男性「ス、スプーンをお願いします」

バイト女子「え?スプーンですか?」

彼女は腑に落ちない様子でクリーミーモンブランとスプーンをレジ袋に入れ「ありがとうございました」と男性に手渡した。

この子は、モンブランをストローで食べる民なのだろうか。

私は、ストローもスプーンも添えられなかったサンドイッチを多少不憫に思いながらもコンビニを後にした。


実話です。

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