靴作りの道具#7『革包丁』
今回は、靴作りで使用している『革包丁』について述べたいと思います。
革包丁とは?
革の裁断や漉きなどに用いる皮革専用の包丁で、裁ち包丁とも呼んだりします。
見た目はのみ(鑿)の先を少し大きく平たくしたようなもので、一般的に幅24mm~48mmでサイズ展開されています。
先端の刃物部分は両刃でなく片刃となっており、平面の部分の硬い鋼(刃裏)と斜め面の部分の柔らかい軟鉄(しのぎ面)の2層構造です。
使用されている鋼材※1は、硬さ(切れ味の持続性)や研ぎやすさが重要視されて選ばれており、主に合金鋼(青紙)と炭素鋼(白紙)が使用されています。
使用用途
靴作りでは、主に革の裁断や漉き、中底加工などで使用します。
アッパーやライニングに使用する革厚1mm前後の革を裁断したり、アウトソールやヒールに使用する革厚約3~6mmの革を裁断したりします。
また、アウトソールやヒール接着した後に大まかに形成する為に、余分な革をカットしたりします。
革の漉きは、ガラスの上に革の銀面層※2を下にして置き、肉面層の余分な部分を削ぎ落とすことを言います。
これは、アッパーで革の重なる部分の厚みを重なりのない部分とほぼ同じ厚みにすることで、靴となった時に変な段差が出ないようにしています。
中底加工は、革厚約5mmの革を木型の底面にクセづけした後に木型からはみ出した革をカットしたり、すくい縫いをするためのリブを作ることを言います。
リブとは、アッパーとウェルト、中底を繋ぐ土台のようなものです。
実際には、革の種類やデザインなどにより道具を使い分けており、カッターを使用して裁断することや革漉き機で革を漉くこともあります。
使用方法
革の裁断は、包丁の刃を垂直に立て手前に引くイメージです。
裁断した革の断面が垂直で平らなことが重要であり、仕上がりの見た目に影響します。
革の漉きは、包丁の刃を寝かせて手前に引くもしくは奥に押し出すイメージです。
漉いた革の断面が平らなことが重要であり、裁断同様に仕上がりの見た目に影響します。
革包丁を研ぐ際は、刃裏と呼ばれる平面に見える部分(実際は少し凹にカーブしている)を真っ平らにします。
この時、刃裏を砥石に垂直に押し当て、手前から奥に押し出し、奥から手前に引くといった動作を繰り返し行います。
次にしのぎ面と呼ばれる斜め面の部分を砥石にしっかりと押し当て、刃裏同様の動作で刃を研ぎます。
最後に刃裏としのぎ面を交互に研ぐことで、微量のバリを無くすことで刃をつけ仕上げます。
革包丁が使いづらいと感じた時は、自分の手の大きさに合わせ、持ち手部分を加工することによって改善することもあります。※3
note : 村上紀之
※1:鉄はそのままだと不純物が多いことから、サビやすく脆いとされています。
そこで、不純物を取り除き、耐久性を向上させる(硬さを出すこと)ために炭素を加えます。
そうすることで炭素鋼と呼ばれる状態のものができます。
その炭素鋼に切れ味の持続性を向上させるためにクロムとタングステンを加えます。
そうすることで合金鋼と呼ばれる状態のものができます。
切れ味の持続性(硬さ)と研ぎやすさには反比例の関係性があります。
・切れ味の持続性(硬さ)
合金鋼(青紙)>炭素鋼(白紙)
また、鋼の号数順に並べると、下記の通りです。
青紙スーパー>青紙1号>青紙2号>青紙3号>白紙1号>白紙2号>白紙3号
つまり、号数が低いほど硬く切れ味の良い鋼材といえます。
しかし、硬くなるにつれて、欠けやすく研ぎづらいといったデメリットもあります。
・研ぎやすさ
合金鋼(青紙)<炭素鋼(白紙)
鋼の号数順に並べると、下記の通りです。
青紙スーパー<青紙1号<青紙2号<青紙3号<白紙1号<白紙2号<白紙3号
つまり、号数が高いほど研ぎやすい鋼材といえます。
※2:革の銀面層と肉面層について
銀面層(きんめんそう):
革の表面に位置し、動物の皮膚の外側の層です。
非常に滑らかで、しばしば自然のしわや毛穴が見えます。
耐久性があり、高品質の革製品に使用されることが多いです。
仕上げ加工(染色、コーティング)によって光沢や質感が異なります。
肉面層(にくめんそう):
革の裏側に位置し、銀面層の下にある層です。
銀面層よりも粗く、柔らかい質感です。
通常、見えない部分や内部構造に使用されます。
銀面層よりも強度は劣りますが、しなやかさがあります。
※3:過去ブログに「革包丁の持ち手を加工した結果」をまとめています。
<https://www.cornoblu.info/single-post/%E9%9D%A9%E5%8C%85%E4%B8%81%E3%81%AE%E6%8C%81%E3%81%A1%E6%89%8B%E3%82%92%E5%8A%A0%E5%B7%A5%E3%81%97%E3%81%9F%E7%B5%90%E6%9E%9C>