ピンクリボンのデザイン大賞の応募者、コピーを書いた方に伝えたいこと

ピンクリボンデザインフェスティバルのデザイン大賞のポスター部門のグランプリ作品が話題になっています。

画像1

下のツイートが問題提起のキッカケです。


このツイート以降、ピンクリボンデザインフェスティバルのサイトから、過去のポスターやキャッチコピーを引っ張ってきて、問題にするツイートを見かけます。もしぼくが過去の受賞作をつくった人だったら、おびえています。

応募作を見直して削除要請を

主催側は、過去の受賞作を見られないようにするなど、いったん措置をとったほうがいいと思いますが、過去の応募者(ポスター部門・コピー部門)でサイトに名前が出ている方は、いまいちど見直してよくないと思ったら運営側に「削除してください」と伝えましょう。削除してくれなかったとしても「自分は削除要請をした」と人に言えます。誰かに問い詰められたとき、それを言えば、さらにあなたを問い詰めることはないでしょう。ちなみに「こういう意図でつくりました」という説明は逆効果です。「それが伝わってないからよくないよね」と、さらに波風を立てるキッカケになるので。

ピンクリボンフェスティバルだけにかぎらず、公募のコンテストの応募者で、過去の受賞作がネットで見られる状態にある人はよく注意したほうがいいです。あなたのつくった広告が、誰もが写真を撮ってアップできる駅にポスターとして貼ったまま放置してあるのと同じ状態です。昨年10月に品川駅に出た「今日の仕事は楽しみですか」も、広告が出てから数日間はとくに話題になりませんでしたが、問題提起するツイートとセットで話題になりました。炎上する広告は、問題提起のツイートとセットで燃えることが多いです。1年以上前に制作された広告がツイートきっかけで燃えるということもあります。

削除要請したほうがいいと思う例

自分がその広告の制作者だったら削除要請するなと思う例をあげていきます。(コピー部門は、コピーで検索したら制作者の名前が出てくると思うのであげません)

今回のグランプリ作品、

画像5

個人的には、福引きはうれしい「まさか、私が」ですが、乳がん検診はうれしくない「まさか、私が」なので、そこに違和感をもちました。(遅れて発見するのに比べたら、早期発見はうれしい「まさか、私が」かもしれませんが)

それはおいといて「胸をモチーフにデザインしたもの」は、極力避けたほうがいいと思います。

画像2
画像3
画像4

ポスターのデザインコンテストなので、目にとめてもらうことが大事。胸の話題なので胸を使うのはふつうのことに感じますが、よく注意が必要です。まず、生理的にイヤだなと思う人がいます。福引きの表現の是非よりも、そのイヤさがあって嫌われている部分もあるんじゃないかと思います。「ピンク」リボンですが、胸をピンクの前提でデザインするっていうのはよくないんだろうなと思っています。そして、胸を手術した人や、胸の色を気にしている人は、世の中にたくさんいるので、そういう人たちが見るかもしれない、というのを頭に入れておく必要があります。

つぎに「身体的な問題にふれる表現」

画像6

体重など体型を想起するものを引き合いに出す表現は、いまの時代むずかしいでしょう。

つぎに「女性はこういうものという決めつけた表現」

画像7
画像8

「女性ならこうだよね」という思い込みの表現が入っていないか、チェックせねばなりません。


いい作品もあるはず

過去の受賞作品には、いい応募作もあると思うので、それをピックアップしてツイートする人がもっと増えてもいいなと思っています。

個人的にいいなと思ったのは、たとえば、2008年のポスターですが、

画像10

女性だけでなく男性に伝えることで、受診率が上がるかもなと思いました。もちろん「男性の友達がいない女性が見たら傷つく」などの意見はあるかもしれませんが。(この時は20人に1人だったんですね)

画像9

乳がん罹患率のピークは40歳代なので、子供の言葉を使った表現は響くと思いました。もちろん「子供がいない人が見たらどう思う?」と言われて燃える可能性はありますが、1人でも受診者を増やすために、伝えたい人を母親にしぼって広告をするという選択をするのはありだと思います。

応募者だけの責任じゃない

応募しただけでは、まだ世の中に出ていませんし、審査や運営側のチェックを経て、受賞作として発表されるので、Twitterで応募者だけを責めてもしょうがないです。応募者の方には初めて広告をつくる方もいますし、いい悪いは自分ではハッキリわからないけど、とりあえず出してみようという気持ちで応募する場合も多いからです。

受賞作を乳がん患者にチェックしてもらう

★追記:1次審査のあと「患者会審査」というのをやっていることがサイト内に書かれていましたので、患者さんの目は通ってうえで、受信作が選ばれています。

コンテストの運営側としてできることですが、審査する側のプロセスで、乳がん患者さんなどを入れることは、マストだと思ってます。もしぼくが乳がん検診の啓蒙広告をつくるとしたら、必ず見てもらいます。もしかしたらすでにやっているのかもしれませんが、そのことをサイト内に書いておくことが大事です。「乳がん患者さんの意見を入れずに審査している」というだけでよくない印象は加速します。乳がん患者のチェックも入れてるとわかれば、その広告を見た乳がん患者の中に、不快に思う人もいれば別にいいと思う人もいる、と理解できます。ふつうの広告が、不快に思う人もいれば別にいいと思う人がいるのと同じように。

コンテストを続けてほしい

49〜69歳の乳がん検診の受診率は、2010年39.1%、2013年43.4%、2016年44.9%、2019年47.4%と上がっています。このコンテストの影響がどこまであるのか、このコンテストにいくらかかっているのかはわかりませんが、続けてほしいなと思います。
国民生活基礎調査より)

あなたのコピーが否定されても、
あなたが否定されているわけではない。

ピンクリボンのコピーを書いた方にいちばん伝えたいことです(ポスターのデザインをされた方はデザインに当てはめて読んでください)。

ぼくはコピーの公募をしたり、コピーライターのサークル「コピサー」で、いろんな方たちにコピーを書いてもらったりして、コピーのダメ出しをすることがあります。そのときにいつも思っていることですが、「このコピーは良くない」と言っても「あなたの人間性が良くない」とは1mmも言ってないので、そこを取り違えないでほしいのです。ぼくはコピーを見るとき、書いたコピーしか見てません。そのコピーを書いた人がどんな人かはどうでもいいです。

ぼくもコピーのダメ出しをずっとされ続けて生きてますが、コピーを否定されると、それを書いた自分の人間性が否定されたように感じます。書いた言葉が薄っぺらいのは、自分が薄っぺらいからではないか。なんで自分はこんなに想像力がないのか。でも、それはただのカンチガイです。書かれたコピーとそれを書いたコピーライターとは何の関連性もありません。

コピーに正解はないと言われますが、コピーはひとつの見方の提示でしかありません。ダメ出しとは、その視点はべつの視点と比べて「良くないよね」というだけのことです。あなたが探したたくさんの視点の中のひとつが良くないと言われても、それはあなた自身が良くないということにはなりません。視点は、たまたまのキッカケで見つかることもありますし、同じ視点を見つける人は他にもいるわけで、自分自身と結びつけて考えてしまうのはカンチガイです。

自分の実体験を込めてコピーを書くこともありますが、もしコピーと自分を切り離して書くことができないとしたら、つまらないと思います。自分と切り離してコピーを考えられるから、楽しい部分もあると思います。たとえば、ぼくはお酒を飲めませんが、お酒のコピーを何回か書いてます。自分が経験できないことでも、人に聞いたり調べたりしながら書けるのは、コピーを書くことのおもしろいところだと思います。せっかくコピーを書くたのしみと出会ったあなたには、これからも、おびえずにコピーを書いてほしいなと思います。そのうえで、コピーを選ぶときに、誰かをキズつけてないか、自分の思い込みで書いてないか検証してみてください。

コピーを書く人を増やしたいと思って始めたサークルです。
https://note.com/copy/circle
「この表現どう思う?」というチェックもサークル内でできるので、ぜひ入ってみてください。


個人的なサポートはいりません! 日本一のコピーライターサークルのメンバー募集中です! メンバーとしてサポートしてくださいませ🙇 https://note.com/copy/circle