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【コーミンで働くひとインタビュー⑦】morinekiまちづくり事業リーダー(兼コーミン代表取締役)

―――ヤメ子さんと初めてお会いした時は、まだ、この大東公民連携まちづくり事業株式会社ができたばかりの時期で、オフィスも無くて。2017年ぐらいかな。

そうでしたね。ノートPCを抱えて、あちこちうろうろしながら「ノマドワーカーです」って言ってましたね(笑)

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―――ロゴマークと会社名が長くて固い名前だから、社員や市民から親しく呼んでもらえる愛称をいっしょに考えてほしい、とおっしゃられて、その場で、ふたり同時に「コーミンは?」というアイデアが出て、すぐ決まりましたよね。

そうそう!そうでしたよね。で、ロゴマークはとても可愛い、けど、何の会社なの?って必ず聞かれると言う(笑)。目玉焼きの形が大東市の地形を模してて、「公」と「民」を2つの黄味で表してるんですよ~、って説明をすると、みなさんとっても感動してくれるステキなロゴマークなんですよね。

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―――やはり、この会社のいちばんの特長は公民連携ということですよね?

はい。大東市は全国でただひとつ「公民連携に関する条例(2018年4月1日施行)」を持っている地方自治体です。その条例では、次の5つの条件すべてにあてはまる事業を公民連携事業と規定しています。「5つすべて」なので、結構、厳しい条件です。

条件① 複数の地域経営の課題を解決する事業であること
条件② 地域の価値を向上させる事業であること
条件③ 地域経済の発展、および循環に寄与する事業であること
条件④ 公的負担の軽減を図ることを目的とする事業であること
条件⑤ 金融機関等から資金調達をおこなう等、自立的かつ持続可能な事業であること

お役所の言葉なのでこれまた固い表現ですが、かんたんに言ってしまうと「地域や市民のためになることを、行政のお金をあてにしないで民間ビジネスとして、やってちょーだい!」という感じでしょうか。

―――ここ、とても重要なポイントだと思うのですが。なぜ、そういうビジネスとしての公民連携が必要になってきたのでしょう?

ひとつは、人口減少社会や長い低成長の時代となって「お金や人材といった行政側のリソース」が減ってきた。そして、これからも減り続ける見込み。なので、市民への十分な行政サービスができなくなってきた、という理由があります。また、それに反比例して、少子高齢化や相対的貧困、気候変動による災害多発など解決しなければならない社会課題はどんどん増えている。行政の職員もがんばっているけれど、到底すべてには手が回らない。猫の手も借りたい、じゃないですけど、民間企業という「かしこい猫の手」を借りるしかない、という切羽詰まった状況があります。

―――しかし、民間企業はどうしても経済的メリットが無いと動きませんよね。資本主義社会なので。

もちろん、そうですね。儲からなければボランティアになってしまって、なかなか持続性も生まれません。しかし、「公と組む」ということは、公が持っているものをうまく活用できれば新たなビジネスを生み出せる、というメリットがあります。突然ですが大東市の不動産王は、誰だと思いますか?

―――え?不動産王ですか?誰だろう、、。

大東市の不動産王は、大東市。つまり公です(笑)

―――あぁ、なるほど。公園、学校、道路なんかも含めれば、たしかに、そうかもしれない。

公と組むということは、そういう公が持っている土地や建物といった“資産”も、さっきの“厳しい5条件”にあてはまるビジネスアイデアを考え付けば活用できるかもしれないんです。「土地」は一例ですが、「市民」だって、公が持っている大きな“資源”ですよね。大東市を「12万人の多種多様な生活者がひしめきあっている市場」と考えると、そこで、例えば新商品のマーケティング調査をするだけでも、企業にとって大きなメリットがあるんじゃないでしょうか。あくまでも、さっきの“5条件”ありき、ですが。

―――なんか、そういうふうに発想すると、おもしろいですね。どんどん新しいアイデアが出てきそう。

でしょ!?コーミンが実際に手掛けた事例で、もう少し詳しく説明しますね。コーミンでは、4年前からJR住道駅の駅前デッキでナイトマーケット「大東ズンチャッチャ夜市」を開催しています。

―――4年前ということはコーミンができたばかりの時期ですね。住道の駅前デッキ、夕陽が綺麗だし、川風がここちいい場所ですよね。あの場所は「公」の場ですね。

そう。1日の乗降客数60,000人の駅の前、という素晴らしいロケーションです。しかし、行政だけでは、「あそこでこんなコンセプトのイベントをやれば市民のためになり、かつ、儲けもでる」というアイデアはなかなか出ません。また、そのアイデアが仮に出たとしても、実現するスキルもリソースも無いかもしれません。

―――あぁ。そこで「民」の登場となるわけですね。

ですです。民間事業者であるコーミンとして夜市を立ち上げるにあたって、まずメインターゲットを『すっぴん女子』と設定しました。すっぴん女子とは造語ですが、化粧をしてない女性ではなく、心がすっぴんな人(男性も含む)の象徴です。ブランド物には興味がないけど「ほんとうにいいもの」を見極める目は持っていて、平日の夜でも、地元の美味い料理とよき人たちとの交流があれば、進んでその輪に飛び込んで乾杯するような人たちです。毎月最終水曜日の夕暮れ時に開催しているこの大東ズンチャッチャ夜市では、市内の飲食業者さんに多く屋台を出してもらっていますが、そのお店のいちばん自信作を提供していただくようにお願いしています。そして、終了間際の時間になっても値下げをしないでください、とも。これは、ここで新規顧客を獲得していただきたいのと、そのお客様が後日お店に行った時に「ズンチャで食べたほうが値段が安い」と思ってしまわないようにとの配慮です。あくまでも、出店者さんの本業が優先。だから、週末の金曜じゃなくて水曜の夜の開催でもあります。実際、「じゃあ二次会はお店で腰を落ち着けて」という感じの”シャワー効果”でズンチャから市内のお店にお客様が流れる現象も起こってます。

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―――クラフトビール600円、炭火焼BBQ1000円。それなりの値付けですね。

そんな高い値段設定じゃ売れない!と言われましたが、そこは「売れる!」とマーケットを読みました。「ふだんは市道である駅前デッキ × 川に夕陽が沈むマジックアワー × 各店の凝った逸品が味わえる屋台」という、いままでにないシチュエーションが家族や友人たちと過ごす時間を何倍にも楽しくさせる。これは必ず売れる、と。

―――読みが当たりましたね。市場価値があったんですね。

マーケット、という考え方が好きなんです。「付加価値の高いモノ、ニーズの多いモノに対して、高い対価が支払われること」と、ある人に教わった時に、美しいとさえ感じました。行政にはない、このマーケット感覚が民間企業には自然にあります。

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―――“5条件”を満たした公民連携ビジネスの事例として夜市をご紹介いただきましたが、morinekiでの新しいまちづくりも考え方は同じですね。規模は大きいですが。

築50年近い市営住宅の建て替えを民間主導でおこなった、おそらく全国初の再開発プロジェクトです。市の持っている土地を借りて、そこに民間会社として建物を建築して、賃貸料などで返済してやがて黒字化していく事業スキームです。

―――まさに、「公」の資産である土地を使った、公民連携ビジネスですね。

はい。公民連携ビジネスであるためには、市民のためになる、地域のためになる、もっと言えば「周辺エリアの価値が上がる」ものを建てなければ成立しないので、そこが知恵と根性の見せどころです。

―――まず、勉強するために「子連れ留学」されたとか。

6才、9才、11才のこどもを連れて、9か月間、縁もゆかりもなかった岩手県紫波町で勉強しました。紫波町には、駅前の何もなかった土地をまさに公民連携で再開発して年間80万人以上が訪れる場所に再生した「オガール」プロジェクトというのがあり、その手法を実地で学びに行きました。オガールの立役者である岡崎正信さん、私は師匠と呼んでるんですが、この岡崎師匠に徹底的にしごかれまして。そこで得た知見を大東市に持ち帰って、おなじ手法で、morinekiのプロジェクトを推進しました。

―――お子様を連れて留学するまで、ヤメ子さんを駆り立てたものは何だったのでしょう?

これまでの昔ながらの行政主導の市営住宅建て替えでは、せっかく大きなお金をかけているにもかかわらず、「四角いのっぺらぼう」な市営住宅しかできず「もったいないな」という意識があって。建て替えるなら入居者の生活がジャンプアップして、近隣住民にも喜ばれ、これからの人口減少社会でも本質的な価値が長く続く、まさにオガールのような場所をつくりたいと思ったんです。

―――色々あると思うのですが、具体的なアイデアとして、どんなことをされたのでしょうか?

まず、『大東市に住み、働き、楽しむ、ココロとカラダが健康になれるまち』という基本コンセプトを立て、株式会社ブルースタジオという実績ある設計事務所さんに設計をお願いしました。同時に、「こんな素敵な構想をもった街ができますよ~!」という触れ込みで営業をかけて、アパレルメーカーである株式会社ノースオブジェクトさんとアウトドア関連事業を手掛ける株式会社ソトアソさんを、テナントとして誘致しました。どちらも素敵な企業さんなので、彼らがこの場所で働いてくれるだけでも大きなイメージアップになりますし、入居者さんにとってもいい影響が生まれると考えています。

―――行政だけだとどうしても公正を期すために入札を主とする業者選定となってしまって、「とがった」プランや「目新しい」コンセプトは、前例がない!みたいな感じでなかなか採用されませんし、テナントを営業して誘致、なんてことも難しそうですもんね。

私ももともと市役所に勤めていた人間なので、さまざまな事情でそうなってしまうのは十分わかっているのですが、税収や人的リソースが減っていくこれからの社会では、行政職と言えども「本質的なことにお金や時間を投資する価値観」で動かなければ成り立っていかないと思います。その選択肢のひとつとして、公民連携があるんだと思いますね。

―――マーケット感覚だったり、時代の空気を読むセンスも、大事ですね。

そうですね。コーミンは、ソーシャルビジネスを次々と創造するスタートアップ企業だと思っています。公と連携して、お互いの強みを活かしながら、社会課題をビジネスで解決していく。楽しみながら、ね。

―――最後にあらためて、いよいよ街びらきとなったmorinekiのご紹介をお願いします。

四条畷駅から歩いて5分、生駒山系の緑が美しい旧東高野街道沿いに、morinekiの街が誕生しました。飯盛山や森林を表す「もり」と、河内弁で「近く」を表す「ねき」を組み合わせて、もりねき。山と川がある自然のそばで暮らしを営むことに愛を感じてほしい、との思いからネーミングしました。およそ1ヘクタールの土地に、74戸の木造の低層賃貸住宅(市が借上げた市営住宅)とテナント企業やレストランが入る商業施設棟、そして自然豊かな公園があります。どうぞみなさん、遊びに来てください!

―――苦節5年、ついに完成しましたね!

ご協力いただいた方々のおかげです。本当に。でも建物は完成しましたが、まちづくりはこれからです。新しい考え方と手法から生まれたこのエリアに、どんな新しい価値を育んでいけるか。ほんとうに未来が楽しみです!

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※このインタビュー連載はこれにておしまいです。読んでくださったみなさま、ありがとうございました。今後ともコーミンを、よろしくお願いいたします!

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