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第3回THE NEW COOL NOTER賞文芸部門~7/20講評

第3回THE NEW COOL NOTER賞文芸部門へご参加いただいている皆様。

本日は、短歌部門へご応募いただいた作品について講評させていただきます。

短歌部門は、長谷川美智子さんを審査委員にお迎えしていたのですが、ご多忙でありまたご体調がかんばしくないとのことで、急遽、8月エッセイ部門の審査委員を務めていただいているゼロの紙さん(短歌での商業誌入選(蜷川幸雄審査委員長)のご経験あり)に講評をお願いすることとしました。

長谷川さんの講評を、楽しみに待っていた皆様には、申し訳ありません。
どうぞ、コンテストの残りの期間もお楽しみください。

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<講評>

◆梅雨曇り明けでひとひらふたひらと紋白蝶が空ぞかすめる

今にも雨が降りそうだった曇りがちな空に光の兆しが差して。
見上げる視線が、少し下がるようにして注がれる先には紋白蝶が風のまにまに舞っている。
そんな風景が目に鮮やかです。

作者のつるさんは俳句を学ばれていたご経験から季語の梅雨曇りを発句に用いていらっしゃるところなど、季節の情景を魅力的に表現されています。

2句目の「明けでひとひらと」は句またがりですがリズムある語順でとてもスムーズに詠われています。

梅雨曇りが明けたことの「梅雨曇り明けで」を梅雨曇りと明けでのふたつの語句に分けるのなら、梅雨曇り 明けてと詠まれてみても、音が濁らないことですっきりと曇りが明けていく様を表せるかもしれませんね。

つるさんの作品は眼で追う速度で映像が立ち上がってくる短歌です。
季節に心情を寄り添わせる表現が見事です。
素敵な一首をありがとうございました。

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<講評>

◆子育てを雀に学ぶ春入日

夕陽が落ちてゆく春の黄昏に親子の雀を
見つめる作者の眼差しが伝わってきます。
子育てを雀の佇まいに学ぼうとする、時
間が止まったようなその真摯な姿勢が句
の中にも貫かれているかのようです。

◆ひとり行く菜の花畑の通学路

菜の花畑の通学路を作者のお子様が歩いて
いる様子をその背中から見守っているお母様
である作者の複雑に縫うような想いが目に浮
かびます。守りたい想いと、自立してほしい
想いが上五の「ひとり行く」に込められた愛
情深い一句です。

◆鯉のぼり無人駅の昼下がり

旧暦では夏であった5月。そんな初夏の季語
「鯉のぼり」の句の中に子供を登場させずに
「無人駅」と配置したところがとても魅力的
です。子供達の声も姿も描かないことで、み
えない子供の姿をそこに思わせるアイデアが
素晴らしいですね。

◆走り梅雨レインコートのシャカシャカ音

梅雨の前触れである「はしり梅雨」。
梅雨のはじまりを予感させながらそこに
心情を詠むのではなくて、足早に歩いた時
のレインコートの衣擦れをオノマトペで
表現されています。情景が浮かびながらも
聴覚にも訴える、楽しさがあります。

◆梅雨空とおねしょの布団にらめっこ

梅雨空なのにおねしょのお布団を干せない、
そう思案しているお母様である作者のご様
子がリアルに見えてくるようです。日常を
詠いながらも、読む人の共感を誘うそんな
ユーモラスな一句です。

5句の作品はさまざまな視点で作られていて
素材の配置も面白く、視覚だけでなく聴覚
にも目を配られた作品を楽しく拝読させて
頂きました。2句目と3句目の中七が字足ら
ずと字余りになっていましたが、作句され
る時に中七をなるべく7文字に整えるよう
に意識されてみるのもいいかもしれません
ね。視線のアングルを少し変えることで、
俳句の素材が日常にあふれていることを気
づかせてくれたように思います。
茉叶さん素敵な作品をありがとうございます。

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<講評>

◆雀跳び羽搏く天の高さかな

視線は空に。広がる空を跳ぶ雀が天高く跳ぶことを描写することで人間の心にも自由さを届けてくれているようです。

◆紫陽花の萼へかかりし傘の水

傘の表面を濡らしていた雨粒が、うっかり紫陽花の萼にかかってしまって水の玉を遊ばせている。
咲いている花への愛情も眼差しの細やかさから伺われます。

◆珈琲の混ざり雲行く夏マスク

マスクは冬の季語ですが、もはや「夏マスク」も季語として成立してもいいようなそんな気持ちになる昨今ですね。
「珈琲の混ざり雲行く」句またがりですが。下がっていた視線から、窓の外を見上げた時間の流れ、速度を感じてとても新鮮でした。

◆炎天下ダッシュボードの飴とけて

これも日常でよくみかける風景ですね。
あたりまえのように見える景色も俳句という17文字の言葉で表現することで、一葉の写真のように記憶されてゆくようなそんな一句です。

◆軒近き畳濡れたり夏座敷

涼を感じる日本ならではの夏の設え、夏座敷。襖や障子などを外して、風を感じる広い畳の部屋を想像した途端に風を感じる皮膚感覚に訴える夏の季語ですね。

9句目の「炎天下」からこの表題句に出会うと、たちまち肌にまとわりつく熱から解放された気分になります。
涼しさまでもが、目にも鮮やかに飛び込んでくるようです。下五の「夏座敷」を配したことで、畳を濡らす雨のことが気にならないほどの風の爽やかさをもたらしているんですね。

Ginga Otakeさんの10句の俳句は、1句目から10句までのストーリーが感じられて素敵です。
日常に流れている時間に、こまやかに視線を注いでいらっしゃいます。表題句の夏座敷を堪能したような涼しい風を感じる読後感でした。

Ginga Otakeさん素敵な作品をありがとうございました。

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事務局アカウントでは、過去の記事とKindleで、これまで小説を書いたことが無い、という方でも、始められるようなコツなどをまとめさせていただいています。

どうぞ、ふるってご参加ください。
皆さんとともに、このコンテストを盛り上げ一緒に楽しんでいくことができることを臨んでいます。

*講評は分担制としているため、必ずしも応募順に講評結果が発表されるわけではございません。よろしくお願いいたします。

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応募作品はこちらのマガジンに収録されます。
 他の参加者様の作品もお読みいただき、ぜひ、当コンテストを通して新しく知り合い、また仲良くなった、との声をお聞かせください! 皆様の縁がつながるコンテストでありたく思います。

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