見出し画像

『こんな雪の夜に君を見ていると』

地球の裏側では干ばつだというのに外は雪
こんな夜に君を見ていると、一体しあわせって何だろうって思う

〈楽しみはあるかい?〉

自分のことはさて置いて、朝から晩まで立ち動き
周りの人たちの幸福を祈って床に就く

〈自分への祈りは忘れちゃってさ〉

人には人の総量ってものがある
それはそうなんだろうけど、君の総量はまるっきり人のためだけだ
少しは自分の喜びに費やしたっていいんじゃないか?

〈いったい誰のための人生なんだい?〉

それでも救いは君の身なりだ
生きることに対するように精一杯で、いつでも乱れがなく、
君は君であることを忘れていない。
少しはホッとするけれど
それすらも、人に不快な思いをさせまいとしているからなんだろう?

〈ちょっとくらい人のことは忘れちまえよ〉


=======
雲が僕たちの心に懸かり、
空は泣いていた。
ちっぽけだった僕の中の大きな存在は、
混沌を愛し、歴史に反抗した。
しかし、みすぼらしい旗を翻して砦を守る僕は、
まるっきり孤立無援だったのではない。
君がいた。
君だけがいた。
真面目で包み隠しなく、平かなその眉の下から僕を見つめるその瞳には、
理屈抜きの責任感が宿っていた。

孤立と、一人の味方を得ることとの間には、
いかなる言葉をもってしても言い表せない深淵が横たわっている。
2は1足す1ではなく、
2は、1掛ける2千なのだ。
それが君だった。
僕は、やっと当たり前のものを見つけた。
そして、結婚と信条を。

君は悲しみを生きてきたが、僕はその君が喜びだった。
反抗し続けてきた人生。
それでも根を下ろすことには力があり、
年を取ることにも良さがある。
だから今、僕は安心してこれを書き、君も安心して読むことができる。

ホラ、どこからか鐘の音が聞こえるよ。

〈祈りの鐘だろうか?〉

地球の裏側の祈りが今雪となって
僕らに降りかかる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?