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「カルチャーやビジョンを伝え切るため」 Japan CEO 福崎康平が語るクックパッドが横浜に移転する理由

クックパッド公式note

今年で創業24年を迎えるクックパッドは、“毎日の料理を楽しみにする”というミッションのもと、日本を含む世界76カ国・地域、34言語(2020年12月末時点)で料理レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」を展開しています。

クックパッドが掲げるミッションを実現するためには、生活者やつくり手の存在は欠かせません。彼らの近くに身を置くことで様々なインプットを得て、それをさらなるサービス開発につなげていきたい。その思いをより叶えるべく、本社をこれまでの恵比寿ガーデンプレイスタワーから、横浜にあるWeWorkオーシャンゲートみなとみらいへと移転することに決めました。

恵比寿から横浜への大きな移動ですが、この決定の背景にはJapan CEO・福崎康平の並々ならぬ想いと、明瞭な狙いがありました。そこには福崎が考える「オフィスの役割」も見えてきます。

オンラインではカルチャーやビジョンのインフルエンスが難しい

──横浜への移転は、いつ頃から考えていたのでしょうか。

意思決定をしたのは2020年12月で、年が明けた1月にはメンバーのみんなへ共有して、プレスリリースを打ちました。最近になって、自分がした意思決定の「深さ」を噛み締めていますね。

──深さ、ですか。

今回の移転は、単なるコストパフォーマンスの改善が目的ではなく、考えれば考えるほどオフィスというテーマは深いものだなと感じたんです。

──今日はその深さに少しでも迫れるようにしたいと思います。福崎さんはオフィス移転のポイントを、どのように考えていますか。

オフィスは「インフラ」だと僕は思うんです。インフラの変更は悩ましいもので、なかでもオフィスへの投資価値を測るのは究極的に難しい。

たとえば、本社の場所を変えたことで、何人が入社し、何人が辞め、社員のパフォーマンスがどのように変化したかを計測するのは本質的には不可能なはずです。テレビCMの投資回収にかかる期間とか、そういった投資価値なら計算はしやすいんですけどね。

だからこそ、オフィス移転の意思決定で重要なのは「誰が、どういう思いで実現させるか」だと考えています。そもそも、すべては事業の成長のためであることが大前提。僕らのミッションやビジョンに最短距離で向かえるように、事業を加速させることが一番のゴールなわけです。

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──その点で、移転前の恵比寿オフィスは目的に合わなくなった?

恵比寿もとても良いオフィスではあったけれども、事業のフェーズが変わってカルチャーやビジョンを伝えていくために最適な場所ではなくなった、という判断です。

もちろん一般的にイメージされるように、新型コロナウイルス感染症の影響はあります。ただ、何に影響を大きく与えられたかでいうと、僕は会社のカルチャーやビジョンのインフルエンスだと思います。

クックパッドが主に手掛けるのは、BtoCのサービスです。そして、僕はBtoCサービスとは「世界を作り変えること」だと考えています。世の中に新しいプラットフォームを浸透させるのは、政治機構を一つ作り出すくらいに困難なんです。その困難と向き合うときには、会社のカルチャー、働く人の目線やものの見方、向かっていくビジョンへの理解が欠かせません。

でも、その理解につながる社内でのインフルエンスが、オンラインでは無理があると僕は感じました。なぜかというと、オンラインは「話したい話し手」と「聞きたい聞き手」がそれぞれその瞬間の役割を決めないとコミュニケーションが成り立たないからです。

──オフラインなら、聞きたくなくても「聞こえる」状況はありえますね。

そうなんです。僕のようなタイプの人が、事業への思いやビジョンをしゃべっていて、それが聞こえてくる。なんなら、この「聞こえる」オフィスの空間があったとしても、カルチャーやビジョンを伝え切るには不十分だと僕は考えています。

実は3年前にクックパッドへ入社してから、僕はチームメンバーへのオンボーディングに相当の時間を割いてきました。朝9時に横浜駅へ集合して、車で魅力的な生産者や商店街を訪ね、一緒に買い物して回ります。それを夕方みんなで料理したり、材料を持ち帰って自宅でつくってもらったりするんです。

この体験を共有すると、自分が生産者に対してどういった価値観を持っているか、世の中に今起きている変化は何かといったことを、会議室で話すよりわかりやすくプレゼンテーションできる。横浜へのオフィス移転は、僕が注力してきたこういったオンボーディングを仕組み化する試みともいえます。

横浜を選ぶに至った、街への2つの観点

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──オフィスを選ぶ際に重視したポイントは?

2つの観点を頭に置いていました。

一つは、「つくり手」の多様性がある街。僕が指すつくり手とは「食の楽しみをインフルエンスする人」です。だから、生産者はもちろん、飲食店や商店街の店主、料理教室の先生なども含まれます。相対的に都心は飲食店が多く、郊外は生産者が多い。どちらもバランスよく居る、両方の側面を持つ地方都市が理想的だと思いました。その一つが横浜だったわけです。

もう一つの観点は、多様な価値観を受け入れられ、なおかつ職住近接が叶う街。横浜は地形的に、もともと崖地があったところのくぼみを埋め立てて作られた街ですから、周囲に山がある。横浜から桜木町のほうへ出るにも「野毛山」があり、中華街のほうにも外国人居留地で有名な「山手」があります。山がある場所を境にカルチャーが切り替わり、それによって多様性が生まれています。

そして、職住近接も重視しました。おそらく、コロナでみんながあらためて感じたのは、オフィスで働くストレスよりも、通勤のストレスが非常に強いということです。

さらに、この数年間、ずっと東京の住宅は値段が上がり続けています。今、東京で豊かに生活していくには、かなりのお金を稼がなければなりません。そうすると、次第に文化的にも、限られた人のためのものになっていくんじゃないかと……。

それに歯止めをかけるなら、東京よりも家賃が安い場所を選ばなくてはなりません。その点で横浜はすぐれ、地方から上京する人にとっても東京よりは手が届きやすい。そういった職住近接の方針だからこそ、住宅補助は手厚く用意しました。引っ越しに際して50万円、なおかつ月額3万円の補助を出し、近くに住むことを後押しする設計です。

僕自身が横浜に住んで10年くらいになるのもあって、住宅補助の対象エリアもオフィスまでの単純な距離ではなく、町名や番地まで精査して区画を引いています。社員のみんなにはつくり手が身近にいる街に住んでみてほしいですし、会社としての目線をそろえやすい場所に住んでくれることに関しては、僕らも「教育コスト」と捉えて補助を出す、というわけです。

──横浜の価値はわかりましたが、反対もあったのでは?

そもそもオフィス移転は、全員がハッピーにならないことがわかっている決断です。だからこそ、僕が強い思いを抱いて設計し、みんなにその価値をインフルエンスできるようにすることが大事。その点では、横浜なら自信を持てます。

「横浜と東京の間を取って川崎にしよう」とか、「環境は良いから世田谷だな」とか、そういった消去法的な考えではなく、確かな思いのもとに突き進んで意思決定できたことは、プラスだと思っています。

ただ、場所を新しく移すと、カルチャーも見方も変わります。この環境をみんながうまく使いこなしていけるかは、一人ひとりの行動次第だとも考えています。その使いこなしは全力でサポートしますし、一緒に取り組んでいけたらいいですね。

つくり手にも横浜オフィスを使い倒してほしい

──「オフィスの使いこなし」について、もう少し聞かせてください。どのようなことを想定していますか。

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たとえば、僕らが注力している「クックパッドマート」という事業があります。精肉店や鮮魚店、ベーカリーなど地域の有名店、あるいは農家などの様々な食材を、アプリから購入できる生鮮食品ネットスーパーです。

この事業も横浜に関しては、どんどん実験して構わないと言っています。「買い物の新しい仕組みを作りたい」と考えてる人がいれば、地域と連携して試してみてほしいです。

クックパッドのミッションである「毎日の料理を楽しみにする」を実現するためには、「つくり手を増やすこと」が重要だと考えています。つくり手に向けたプラットフォームサービスの拡大は、国内事業の重要施策として位置付けていますし、その展開を加速するためには、つくり手との物理的な距離を縮めていくのが大切ですから。

──福崎さん自身が温めているアイデアもありますか。

僕が今やろうとしているのは、いろんな人を、このオフィスに連れてくることです。

ちょっと逆説的な考えなんですが、クックパッドの社員が何百人もこの場所に移って来るというのは、それだけの数の「おいしいもの」や「料理」が好きな人が集まるということです。たとえば、それを知ったカフェのマスターが、コーヒーセミナーを社員向けに開催してくれたら面白いですよね。

自分の「食」をインフルエンスしたい人たちにとって、これほど絶好の環境もないんじゃないでしょうか?

──それは面白いですね。自分たちがつくり手のほうへコミットしていくだけでなく、つくり手から寄ってきてもらうための場になると。

つくり手のみなさんが、この場所を使い倒してくれればいいですよね!

実際に、オフィスの近くにminato coffeeというコーヒースタンドがあるんですけど、最近はクックパッドの社員であふれ返っていて。なぜかというと、僕が褒めて勧めまくっているから(笑)。そうしたら、自然とみんなが訪れる場所になってきました。

それと、恵比寿にあるように僕らのオフィスにとってはキッチンも重要な存在に変わりありません。現段階ではまだ新しく作れてはいないのですが、この横浜において、どのようにキッチンを設計すべきかを検討しています。クックパッドが横浜に根を張り、地域コミュニティを率先して作っていけるように、長くこの場所と関わり合っていきたいとも考えています。

その関わり合いからも、つくり手や料理にまつわる課題や改善点が見つかっていくでしょう。それはまさに僕らが解決すべきことですし、“毎日の料理を楽しみにする”というミッションのためにも発見しなくてはなりません。

もっとも僕の経験から思うに、オフィスを本当に使いこなせている人は、全体の10分の1くらいかもしれません。でも、全員が全員使いこなせなくとも、それだけの人が実現できていれば、オフィスには意味があると考えています。

だから、クックパッドのオフィスを「こういうふうにしたい」と思った人は、どんどん声にして、実行してくれたら嬉しい。僕はだいたいオフィスをふらふらしてますから、気軽に伝えてほしいです。そして、横浜に来たからこそ「うまく使い倒したい」という新しい人が入ってきてくれてもいいですよね。

──たしかに横浜への移転は、クックパッドのカルチャーを前進させ、プロダクトも発展させるための決断だったと感じました。

だから、この意思決定は深くて、最高なものになると思っています。


※福崎の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記
取材 / 文 = 長谷川賢人

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本社移転の決定とともに、クックパッドのこれからの働き方を定義し、あわせてそれらを発信するウェブサイト『Cookpad Ideas』を開設いたしました。ぜひご覧ください。

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