
担当デザイナーに聞いた、クックパッドマートのロゴリニューアルの舞台裏
こんにちは。クックパッド広報の武田です。
クックパッドが2018年9月より展開している生鮮食品EC「クックパッドマート」は、2022年4月にロゴをリニューアルしました。
サービス開始から3年半のロゴ変更。その舞台裏にはどんなストーリーがあったのか、クックパッドマートのコミュニケーションデザイナー飛鳥馬(あすま)に話を聞きました。

サービス開始から3年半でロゴリニューアル。広報も驚いた衝撃の新事実
──今日はよろしくお願いします。まずは飛鳥馬さんご自身について、教えてください。
はい。2020年にクックパッドマートのコミュニケーションデザイナーとして入社して、もうすぐ丸2年になります。
私自身、クックパッドに入ろうと思ったきっかけがクックパッドマートで。当時、偶然ニュースでクックパッドマートをみて、コロナ禍で在宅をしていた時期だったので「めちゃくちゃ便利なサービスじゃん!」と思って使ってみたのが始まりだったんです。
──2周年おめでとうございます。レシピサービスではなくクックパッドマートがきっかけで、というのは当時としては珍しかったのではないでしょうか。
そうなんです。面接してくれた方が大興奮でした。笑
当時は今以上に「認知度を上げよう!」「たくさんの人に使ってもらおう!」という動きが活発で、とにかくがむしゃらにパンフレットやポスター、さまざまな紙媒体を作っていました。
──そこから「ロゴをリニューアルしよう」になるには結構道のりが長そうな気がしますが、背景には何があったのでしょうか。
実は、最初からロゴリニューアルの話が挙がっていたわけではなくて。サービスを拡大させていく中で、ブランドとしての考え方が整理されていなかった状況が課題としてあったんですよね。
具体的にいうと、元々レシピサービスの「クックパッド」が母体にあって、なんとなくのトンマナはみんなわかっているけど、クックパッドマートのブランドコンセプトに合わせて「こういうフォントを使おう」とか「色はこのトーンに揃えよう」とか、はっきりと定めていなかったんです。当時のクックパッドマートは、アプリもロゴも赤を使っていましたが、その理由もコレといったものはなかったそうなんです。

──え……?!衝撃の新事実です。笑
笑。ですよね。
正確にいうと、サービス開始当初は理由があって赤に決めたのかもしれないですが、赤にこだわり続ける理由や赤でなければならない理由が明確にはない状態だったんですよね。
そこで、クックパッドマートのターゲット層やクックパッドらしさなどをブランドコンセプトの観点で整理していった時に「赤じゃ……ないよね」という答えに行き着きました。
ではそのまま赤の部分をコーポレートカラーのオレンジに変えたらいいかというと、それもなんか違う。当時のクックパッドマートのロゴは筆記体のような書体で、スタイリッシュな印象だったんですよね。
その議論が出たのが2021年の3月ごろの話で、そこからアプリ内の色やフォントなど細々とした整理をしていって、ロゴに関して実際に動き出したのは7月でしたね。

新たなロゴデザインを決める道のり
──ロゴのデザインで一番苦労したことはなんでしょうか。
「コック帽を保ちながら、クックパッドマートらしい表現をする」というのが一番難しかったです。
コック帽の部分はクックパッドを象徴的するアイコンでもあるので、外さないと最初に決めていて。一見シンボルマークが決まっていたらやりやすいのでは?と思われがちなのですが、そこが意外と大変なんです。
今まで他の仕事でロゴデザインをやっていた時は、全部を変える・一からデザインするものだったので、一部を残して、一部を変えるというのは思っていた以上に制約があって難しかったですし、あまりにもコック帽の認知度が高いので、そこに「ぶつからないけど主張する」要素を組み込むという難しさもありました。
わたし自身もピンとこないまま案を出し続けていたので、一回まっさらな気持ちで向き合ってみようと、デザイナーが集まってワークショップをすることにしました。それが2021年の9月です。

──ワークショップは正直、楽しかったですか?それとも産みの苦しみが強かったですか?
楽しかったですね。
このワークショップ、1時間でやりきったんです。その限られた時間の中で、10分で3〜4案を5回して、最後の10分で良いと思う案にシールを貼って投票したんですよね。悩む暇がなくて、ゲーム感覚で盛り上がりました。笑
一見「なんだこりゃ?」みたいな案も出るんですけど、それも発散できて面白かったです。投票も直感でシールを貼っていく作業になるので、結構バラけた票もありました。
案を出し続けるワークショップを2〜3日やり続けるとみんなクタクタになっちゃうと思うので、1時間でかえってよかったと思います。

ワークショップで出た案をわたしが回収して、よりクックパッドマートの考え方に近いものを絞り込んで、清書して、みんなに見せて……を繰り返し、最終的に「手描きの味のある雰囲気のロゴが、クックパッドマートの考え方に近いよね」となりました。
そこから次の壁にぶつかるんですが……笑
──次の壁……
あんまり手描き風のロゴって、みないじゃないですか。笑
一筆、ペンでスッと描いたようなデザインのロゴはあるんですけど、シャシャシャシャ〜っと複数の線で筆跡を感じるようなものって世の中にほとんどなくて。ロゴはいろんな媒体で表示されることが多く「シンプルでわかりやすい構成」が基本となるので、当たり前なんですけどね。
そういう意味で、どれほどの手描き感・ペンの感じがあるとロゴらしく見えるのか、と。そのバランスが難しかったです。
元々は2021年以内に終わらせたかったんですけど、9〜10月に方向性が決まった後は、ロゴとして「見え方の整理をする」検証作業をやっていきました。
その検証作業も、通常のロゴより作業量がすごく多かったんです。モニターで見ていると良くても、実際に出力してみると「手描き風の部分が潰れちゃうね」とか「このくらいなら手描き感が残っていい感じだね」とか。
もうこれで終わりにしようと思っても、別の出力の仕方をするとダメだったりして。終わりが見えない状態でしたね。笑
──それはツラそうです……もういいやってなっちゃいそう。
そうそう。笑
それに線を多くして、繊細にすればするほど、データとしても重くなっちゃうんです。ロゴっていろんなところに多用するものなのに、何か制作するときにロゴを開くたびに時間がかかるとか、フリーズするとか……そんなの扱いにくいじゃないですか。
最初は手作業で線の数を減らしてみたりして、行き詰まっては社内の他のデザイナーにも調整方法を相談したりして。
最終的にはプレスリリースの日が決まっていたので、それでやっと収めたというか、やっと終えられた感じです。笑


育て甲斐があるから面白い。クックパッドマートのコミュニケーションデザインとは。
──ロゴリニューアルの大仕事を終えた今、クックパッドマートのコミュニケーションデザイナーとして、心がけていることを教えてください。
そうですね。わたしはクックパッドマートが好きで、料理も好きで……という、ある意味ユーザーとしては理想的な人物だと思うんです。だからこそ、俯瞰して視野を広くすることを心がけています。
俯瞰して見ると、食材の買い物が苦痛な人だっているし、料理がそもそも好きじゃないという人も想像以上にたくさんいるので、そういう人たちを蔑ろにしないような、親切なデザインをすること。
デザイナーが視野を広く持てば、サービス自体の価値も上がっていくし、ブランディングとして、ファンもより増えていくのかなと思いながら、デザインしていますね。
──視野を広く持つためにしていることやルーティーンなどはありますか?
ユーザーさんからのご意見が流れるSlackのチャンネルがあるのですが、そこはよく目を通すようにしていますね。
「これは使いにくかった」「〇〇を期待してアプリをダウンロードしたのにダメだった」とか、全部に向き合って全てを叶えられる訳ではないのですが、デザインで解決できそうなネガティブなご意見は必ず「忘れないようにしよう」という気持ちでウォッチしています。
一人ご意見をくださるということは、きっともっとたくさんの方もそう感じていると思うので。
クックパッドマートは新規事業だからこそ、良くも悪くも「ベンチャー感」が強く、自分達の目指す方向に勢いや力強さを持って進んでいく気質なので、その中のコミュニケーションデザイナーの役割として、ネガティブなご意見も心に刻んでデザインに生かすことを心がけています。
──なるほど。さまざまなユーザーさんのご意見や、事業として自分たちが実現したい世界をデザインに落とし込んでいるわけですね。最後に、クックパッドマートのコミュニケーションデザイナーの醍醐味を教えてください。
クックパッドマートがサービスを開始してからもうすぐ丸4年になりますが、入社した頃(2年前)は外に対して「クックパッドマートをとにかく知ってもらおう」という動きが強くて、クックパッドマートの"ブランド"については社内の人でさえもしっかり整理しきれていなかったんですよね。
今もまだインナーブランディングの観点でやることがたくさんある状態で。
生活者の方々のブランドを見る目線だけではなくて、まずは社内の人が同じ目線でブランドを見ることができるように整備することを、今わたしが所属するブランドデザイングループで向き合っています。
"THE デザイン"というイメージとは離れていると思いますが、ブランドをデザインする仕事を幅広くできるので、それが醍醐味のひとつだと思っています。
勢いよく走りながらブランドを創り上げるというフェーズなので、やりがいがありますね。育て甲斐があるというか。笑
──広報の目線や動きにも通ずるものがありますね。なんだかすごく親近感が湧きました。今日はありがとうございました!
クックパッドでは、さまざまな角度で「毎日の料理を楽しみにする」メンバーを募集しています
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飛鳥馬がデザイナー目線でロゴリニューアルプロジェクトの詳細を綴った記事です。デザイン観点での詳細が気になった方はぜひご一読ください。
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