見出し画像

クックパッドのサービス開発における、オフィスと働き方

クックパッドは新型コロナウイルス感染症が広まる中、いち早くリモートワークを開始した企業のひとつでした。その後、1年以上にわたり在宅勤務を中心とした働き方を経験した上で、2021年5月に横浜へオフィスを移転し、「オフィスを中心としたサービス開発」を再始動しました。

オフィスの減床や完全在宅勤務体制への移行を検討する企業が多い中、クックパッドはなぜ積極的にオフィスを活用する方向に舵を切ったのか。クックパッドのサービス開発におけるオフィスとリモートワークの考え方を、執行役CTO 兼 人事本部長の成田一生に聞きました。

※記事中の写真に登場する社員は、撮影時のみマスクを外しています

画像1

リモートワークでは、何かを失っていることに気が付きにくい

──リモートワークを中心とした働き方を始めて1年以上経ち、今月から横浜の新オフィスでオフィスを中心とした働き方を再始動させました。働き方の方針について、これまでどういった変遷を遂げてきましたか?

新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた2020年2月18日から、1度目の緊急事態宣言に先駆けて全社でリモートワークを開始しました。

その際は全社員が原則在宅勤務という運用だったんですが、落ち着いたらすぐに以前のようなオフィスを中心に働くスタイルに戻りたいという思いがあったので、2020年7月からは感染対策をとった上でリモートとオフィス勤務を組み合わせた働き方へと移行しました。具体的には、オフィスが密にならないよう部署ごとに出社する曜日を分散させ、週1回は出社するようにしたんです。

2021年1月に関東1都3県を対象にした2回目の緊急事態宣言が発令されて以降は、恵比寿の旧オフィスでは、出社日は設定せず、各自の判断で必要なときに出社可能としていました。

現在は、横浜に移転した新オフィスで、部署ごとに出社頻度を策定しています。週5回出社の部署もあれば、週1回出社の部署もあります。

──全社的なリモートワークを実施して気がついたことはありましたか?

みんなの様々な工夫で、リモートにもいいところがあるという発見が得られましたし、一定のパフォーマンスは出せていたような気がしました。その一方で、「何かを失っていること自体に気がつきにくい」ということも感じていたんです。

──例えば何を失っていたように感じましたか?

一番感じたのは、情報のインプット量ですね。リモートが中心だった頃、久しぶりにオフィスに行って、久しぶりに会う仲間とちょっとした立ち話をしたんですが、仕事の話やその周辺のなんてことのない話、その中の細かいニュアンスなど、得られる情報量がリモートとは圧倒的に違うなと感じました。オンラインだとちょっとした話だけのために、わざわざZoomを繋がないじゃないですか。

そのときに、こういう細かなつながりとか、情報のインプットの機会が失われていたんだなと気づきましたね。

_DSC9753レタッチ済み_リサイズ

──確かにリモートワークでは、ちょっとした雑談とかは減りましたね。

僕は特にミーティングが多いポジションなので、5分で済む話でも、リモートだとスケジュール調整が必要だったりするんです。それでカレンダーがびっしり埋まってしまう(笑)。

チャットで済む話ならいいのですが、仕事柄事情の込み入った話題を扱うことが多いため、時間をかけてテキストに起こすより話して解決したくなることが多いんです。

だけど、出社すると隙間の時間ですぐに話ができるし、それによって意思決定のスピードがかなり変わるなと感じました。気づかないうちに時間が無駄になっていたんだなと。そこを解決しない限り、リモートでスピードを出すことは、本当に難しいですね。

クックパッドが目指す「オフィスのあり方」

──世界的に新しい働き方の模索が続いています。フルリモートに振り切る企業もあれば、感染対策を講じた上でオフィスへ戻る方針を打ち出す企業もあったり。クックパッドは具体的にどのような方針としていますか?

移転で大きく環境が変わったばかりなので、やりながら方向性を決める部分や、コロナの感染状況も見ながらですが、現在のところ、プロダクト開発に携わるチームは、オフィスに集まっている状態をつくるよう、週5回出社としています。

画像3

──週5回の出社というのは、最近あまり聞かないように思います。

多くの会社と逆行する考え方かもしれないけど、世界規模のテックカンパニーでも同様にオフィス中心のカルチャーに戻すと表明していたり、対面の重要性をトップが伝えていたりするところもあります。

週5回の出社は、僕たちの事業、ユーザー、ミッションにとって、最適な働き方だと思っています。

一方で、リモートでもパフォーマンスが出せる部署や業務が、多くあることもわかっています。例えば技術基盤や広告の営業のチームであったり。クックパッドはほとんどペーパーレスを実現しているので、コーポレートの部門もですね。それらの部署は基本的に週1回出社とし、部署ごとに曜日を分散させて定期的に直接顔を合わせてもらう形態を取っています。

──今月から再始動したばかりのオフィスを中心とした働き方ですが、実際に始めてみてどうですか? また今後、どのような期待をされていますか?

クックパッドはtoCのプロダクトを主軸としている会社で、日々の繊細な意思決定が必要です。機能をどうするかという話だけじゃなくて、アプリの手触りや使い心地など、細かな改善がサービスを使い続けてもらうことにつながると考えています。なのでトップダウンですべてを決めるのではなく、現場の一人ひとりがユーザーに向き合い、また自分の日々の生活の中での発見やインプットを業務に活かすことがとても大事なんですよね。

メンバーとの何気ない雑談の中での気付き、普段料理や買い物をするときに思っていることなど、仕事や生活の中のあらゆることから、常にインプットをしていてほしいんです。実際、オフィスに集まるようになって、こうした気付きやインプットの量は格段に違いますし、意思決定の質やスピードも上がったと思います。

そしてもっと言えば、それをどの場所で行うのかが重要だと考えています。移転先である横浜という場所は、昔から食にまつわるつくり手が集まる、歴史ある場所です。そういう土地にクックパッドが根を下ろし、社員もその近くに住み、そこで生活をする人がどんどん増える。それによってみんなの生活に対する感性が長期的に磨かれることを期待して、横浜という場所を選びました。業務の外側にある細かな刺激を、プロダクトに反映していきたいですね。

IMG_2317Aレタッチ済_リサイズ

──クックパッドにとって、オフィスの「あり方」はどのように考えていますか?

会社として、メンバーが集まる価値のある「場」を用意することが大切だと思っています。

コロナ以前は、オフィスがあるのは当たり前、行くのも当たり前だったけど、これだけ長期間リモートワークを経験すると、なんで行くんだっけ?行くと何があるんだっけ?という感覚になります。なので、今ってこれまで以上に、「オフィスに行く理由」が重要になっています。これはクックパッドに限りませんよね。

その中でクックパッドのオフィスは、プロダクト開発において「濃い場」であるべきだと思っています。熱意のある仲間がいたり、視座の高いプロダクトオーナーとすぐディスカッションできる環境であったり。

そんな熱量の高い場があるからこそ、自分がそこに行く方がモチベーションが上がるし、そこに行く価値があると思える。そしてその場があるからクックパッドに入社したい、また居続けたいと思える。

オフィスという熱量の高い「場」が、クックパッドを働く場として選ぶ理由にし続けるためにも、場の力を生み続けたいし、保ち続けたいですね。

画像5

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

クックパッドのこれからの働き方を定義し、あわせてそれらを発信するウェブサイト『Cookpad Ideas』。ぜひご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?