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料理家と料理研究家の間

料理家たちのプロフィールを調べると
うちの本屋にはたくさんのレシピ本があります(食の本屋だから当たり前ですね)。レシピ本の著者の肩書きはいろいろです。料理家、料理研究家からフードコーディネーター、フードスタイリスト、インスタグラマーまで様々。
前からわからないことがありました。
「料理家」と「料理研究家」は同じなのか。それとも別なのか?
という疑問です。
そこで、レシピ本の著者プロフィールを少し調べてみました。料理家さん、料理研究家さんは大勢いらっしゃいますが、以下の15人の方に絞りました。(うちの在庫で)レシピ本が複数あり、テレビの料理番組、ネットの料理サイトなどによく登場している方から選びました。絶対的な選択基準ではなく、私見が入っているものとご理解ください。
また、現在活躍されている方(存命の方)から選んでいます。

栗原はるみ:料理家
有元葉子:料理家・料理研究家ともあり
藤井恵:管理栄養士、料理研究家の併記
土井善晴:料理研究家
大原千鶴:料理研究家
コウケンテツ:料理研究家
ワタナベマキ:料理家
高山なおみ:料理家
坂田阿希子:料理家
辰巳芳子:料理研究家
市瀬悦子:料理研究家
瀬尾幸子:料理研究家
若山曜子:料理研究家
飛田和緒:料理家、料理研究家の表記がなし
小田真規子:料理家、栄養士
(すべての本をチェックしきれていないので、正確でない部分があればご指摘くさい)

料理家だったり、料理研究家だったり
この15人で見た限り料理家と料理研究家が半々というところでしょうか、細かいことを言うと、プロフィールも本や使われる場面によって異なることがあります。また、同じ人でも時代を経るにつれ、表記が変わっていることもあります(以下では一般的なことを書くときは料理家を使います)。
例えば、栗原はるみ。言うまでもなく現在の料理家の中でトップの位置にいます。この栗原はるみの代表作であり、ロングセラーの『ごちそうさまがききたくて。』は1992年の出版です。この本のプロフィールには、
「静岡県下田市生まれ。料理上手の母に育てられ知らず知らずのうちに、抜群のセンスを身につけた幸運の持ち主」
という文章で始まり、彼女の生き方が綴られいて、ここには料理家、料理研究家という表現は登場しません。
しかし、最近出版された『わたしのいつものごはん』(2017年刊)では料理家と表記されています。有元葉子、大原千鶴も同様です。
レシピ本では一環して料理家としているワタナベマキが今週「きょうの料理」に出演していました。番組およびテキストでは料理研究家とされています。

料理研究家とは?
そもそも料理研究家とはどのようなことをする人を指すのか。素直に考えれば、「料理を研究する人」です。だから例えばレシピを考案したり、テレビで料理を披露することは求められていません。料理とは何かを研究すればいい。こんなひねくれた考えも浮かびます。
料理家の歴史的な活動を丹念に検証した名著である阿古真理の『小林カツ代と栗原はるみ』。この本のサブタイトルは「料理研究家とその時代」です。阿古真理は料理研究家という言葉を選択して論を展開しているわけです。
料理家と料理研究家の間にはなのがあるのか。それともなにもないのか。結論のない文章になってしまいました。

2019/6/7 クック・バイ・ブック 上村武男

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