見出し画像

映画メモ『ハウルの動く城』 呪いじゃなくて白魔法だったかも

・テレビでやったのを録画して見た。15年ぶり3回目って感じ(一度目は劇場で見た)。
「さっぱりわけがわからない」と匙を投げたくなるような展開が5分に1回は出てくるのに、目を惹きつけて離さないのがこの映画のすばらしさである。大いなる想像力と教養、そして剛腕で謎の世界観が作り上げられている。

・でも、年を重ねたせいか昔より腑に落ちたかも。しょうもないハウル。そこが素敵なのだ(←それだけは昔からわかっていた)。

・木村拓哉のアテレコもいい。ドラマではぶっきらぼうな役を振られることが多いキムタクさんだけど、優しい声なのだなとよくわかる。

・今回見て、「荒地の魔女」の意味がわかった気がする。ソフィーも魔女もハウルに恋する類友だけど、その思いは互いに違うベクトルで歪んでた。彼女がソフィーにかけた呪いは、結果的には白魔法だったんだよね。だからこそ、ソフィーは本来の姿に戻ったあとも彼女を大切にし、最後は強く抱擁する。

・ソフィーもハウルもマルクルも、呪いをかけられているようで実は「本来の自分」でいることがとても難しくてつらいくてしんどい人だった。違う姿だから楽でいられるということ。

・美しく享楽的な母と、その美貌を受け継ぐが働き者の妹、そしてひとりだけ、地味な容姿に生まれついたソフィー。という母娘の構図。

・母子三人がそれぞれ、その生き方しかできないのも今見るととても腑に落ちる。特に母親の無邪気な残酷さ‥‥と見せかけて、本当は自分の残酷さも自覚しているんだけどなすすべもない無力な感じ。海街diaryのお母さんを思い出したな。

・帽子職人として実直に暮らすソフィーだが容姿ゆえに自分を諦めきっているところがあって、彼女がハウルに気負いなく対峙できたのは、90歳のおばあちゃんの姿になったからなんだよね。美しくある必要がないから。

・で、気負いなく仲良くなっていくうちに、どんどんハウルを好きになって、「あなたの役に立ちたい」「助けたい」と思えるようになった。

・「あなたの役に立ちたい」と言葉に出して本人に言えるってことは、「私はあなたの役に立てるはず」と思えてるってことなんだよね。泣ける。

・それと対応しているのが、ハウルの「なぜ? 僕はもう十分逃げた。ようやく守らなければならないものができたんだ。君だ」である。

・「美しくない若い娘」のソフィーと、「美しく強大な魔法使い」のハウルとを完全に同じライン上で描いているのが、凡百の「プリンス萌え」作品と一線を画しているゆえん。しょうもないハウル。そこが素敵なのだ(2回目)。

・サリマン先生と国王、そして戦争。戦争は賢く闊達な権力者たちの私欲で起こる(だから、権力者の鶴の一声で終わらせることもできるという‥‥)。

・権力者の触手につかまらないよう、心と引き換えに手に入れた魔力を駆使して逃げてきたハウル。サリマン先生の知的な狂気が怖かったな。彼女が女性なのが、むかつくのといいなと思うのと半々。

・イマイチわかんなかったのは、ラストのカルシファー。再建された「動く城」は過去とどう違うのか。火器を(戦争に、ではなく)正しく使えるようになったってことなんだろうけど‥‥。「もののけ姫」の不可逆な感じと対照的だ。

・てか、書いてて、昔見てさっぱりわかんなかった私の娘時代は、なかなかおめでたかったのかもしれないな、と思うなど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?