見出し画像

『今ここにある危機とぼくの好感度について』2話まで

なにげに今期いちばん注目してるドラマ。社会批評色が強いからだろう、私の企画はなかなか通らないと語っていた渡辺あや様(もはや “様”づけ)が書く久しぶりの連ドラ。開始2分で主人公のキャラがあからさまに小泉進次郎で爆笑したw 「スポーツっていうのは体を動かすっていうことだと思うんです」www 
ちなみにNHKで放送していますw 

好感度、命! 
意味のあることは何も言わず、長いものに巻かれ、その場しのぎのテクニックだけで生きている30半ばのルックスのいい男。まさに、小泉進次郎をちょっと若くしたどうしようもない主人公なんだけど、どこかかわいげがある。脚本演出と松坂桃李の匠の技。

「豚も食わない正論」
「いいか、正論に気をつけろ」
「この場の全員が望んでいるのは、ここ(会議)がさっさと終わることであり、今さら本質を語り合うことなんかじゃない」
「とにかく言質を取られないよう、中身のないことを言うこと」
「会見に意味なんかなくていいの! やることに意味があるの!」

パンチのきいたセリフの応酬。すべてが現代社会の風刺なので抉られるんだけど、めちゃくちゃ笑える。

どれくらいおもしろいかというと、うちの10歳が食い入るように見てるくらい。もちろん世の中のシステムも大学という場所も知らない彼だから、このドラマの意味は半分もわかっていないだろうけど、それでも惹きつけられるってすごいよね。

日本でもこんな知的なドラマが作れるんだ! ぜひネトフリで流して海外の人にも見てほしい。

複雑なことの嫌いな彼は、
世界に単純であってほしかった
簡単でシンプルで
自分にもやすやすとわかるものであってほしかった
しかし、残念ながら
世界はそう単純であるはずもないのだった

一話ラストのナレーションがこのドラマのやりたいことを端的に語っている。

私たちがどんなにわかりやすさを求めても、
生存戦略として「愚かである」ことを選んでも、
世界は圧倒的に複雑だということ。
「5分でわかる世界の真実」なんてない。

「最大の悲劇は、悪人の暴挙ではなく善人の沈黙です」

と3話ではっきりセリフにされたが、1話から既に「ハンナ・アーレントのいう“凡庸な悪”」が念頭にあることが窺えた。

暴君の野心や憎悪ではなく、
無思考な凡人が悪をはびこらせるということ。

おそらくこれまで、神崎は無自覚なアイヒマンだった。
保身がすべてだから、上に言われたとおり、システムの一部として動き、結果的に悪に加担していた。

グローバリズムやポピュリズムの前に、
個人はあっけなく飲みこまれ、蹂躙され、敗北する運命にある。
その様子を次々と間近で見ることになる神崎。
世界の複雑さとおそろしさをわかったうえで、
やはりアイヒマンになるしかないとあきらめるのか、それとも‥‥。
彼がドラマのラストでどんな選択をするのか楽しみだ。

そしてもちろん、
神崎的なもの、アイヒマン的なもの(小泉進次郎的なものともいえるw)は
私たちすべての人間の中に宿っているわけですよね。

-----
脚本:渡辺あや(「カーネーション」「ロング・グッドバイ」「ワンダーウォール」「ストレンジャー~上海の芥川龍之介」)

プロデューサー:
勝田夏子(「半分、青い」「「ストレンジャー~上海の芥川龍之介」)
訓覇圭(「あまちゃん」「いだてん」「ハゲタカ」)

プロデューサーの名前を見て納得。NHKドラマ班の矜持を感じる作品です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?