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インタビュー: ふつうの暮らしに寄り添っていたい ~ 松武陽子さん

株式会社キュリアス・マインズは、元気な女性たちがつくり、働く建築設計デザイン事務所。もちろん、代表の松武さんも、いつも元気な笑顔で迎えてくれます。会社のミッションは「あなたの夢にかたちを与える」。
こんなすてきな会社の建築士! 松武さんがご自分の夢をかたちにするまで…その道のりを聞いてみました。

聞き手: イノウエ エミ  (2019年9月取材)

◆ 二人部屋の模様替えが大好きだった

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―――建築士って、とても専門的な仕事ですよね。どういう道筋をたどってこのお仕事を選び、今の松武さんがあるのか、すごく興味があります。

子どもの頃から、家には興味がありましたね。
双子の姉がいて、9畳くらいの部屋に二人で住んでいたのでたとえば間仕切りをしたり、ベッドをこちら側に寄せて…とか、模様替えが好きだったんですね。
チラシで家の間取り図を見るのも大好きで、「ここ、絶対使いにくいよね?」なんて一人でぼそぼそやってる子どもでした(笑)。

―――やっぱり間取りから入るのですね!

家庭科も好きでした。6年生の時に初めてスカートを作ったんですよ。好きな布を集めて、パッチワーク風に。

―――すごい! 凝ってる~!

つぎはぎしただけの、簡単なものですけどね。中学校になると、好きなペンケースがなかったから、ファスナーを買ってきて、おっきな財布みたいなのを作ったり…。

―――双子のお姉さんも、同じものに興味が?

いえいえ、彼女は文系で、興味のあるものも違いましたね。

―――やっぱり双子でもそんな感じなんですね。

母もまったく別の人間として扱ってくれたので、同じ家に育ってもそれぞれの道を自然に行った感じです。
思えば、母は仕事のかたわら、とにかくひたすら何か作ってましたね。革細工とか紙粘土とか…

―――革細工!

やっていることは違いますが、表現のひとつとして何か作るというのは、子ども3人の中で私がいちばん受け継いでいるかもしれません。

◆ 図面ではなく、まちを歩いて調べる建築

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建築士という言葉を最初に口にしたのは、どうやら中学時代らしいです。
今、ここの経理スタッフをしてくれている同級生が「中学生のときから『建築士になる』って言ってたよね」と。

―――中学生で! 早いなあ~。

私は全然記憶にないんですけどね(笑)。建築士のこともよくわかっていたわけじゃない。
ただ漠然と、家のことをやりたいなとは思ってたんでしょうね。

―――では、大学は建築科に?

いえ、環境設計学科といって、居心地の良い環境の設計というか・・・いろんなまちに調査に行って「今、このまちに必要なものは何だろう?」と考えたり。リノベーションの走りのようなこともしていました。

―――なんだか楽しそう!

楽しかったですね。小さな学校のアットホームなメンバーでまちを歩きながら、建築ってひとつの建物だけで完結するんじゃなくて、歴史を含めてまわりの環境に影響を受けるんだなと、本質的なところを知りました。
今でもまちづくりのようなことに興味があるのはそのころのおかげですね。

―――学校を出てからは…

最初は店舗や施設、イベントづくりなどをする会社に就職しましたが、だんだん違和感を覚えて…。
「個人の資産で建てる住まいというものを、責任をもってやってみたい」と思ったんですよね。
それで数年で転職して、お客さんと打ち合わせをしながら作る注文住宅をやり始めました。

―――そのときは、すでに建築士さんだったのですか?

いえいえ。まず、転職して2年目に二級建築士をとりました。それから結婚、出産して、一級をとったのは子どもが3歳か4歳のとき。実はけっこう最近の話なんです。

◆ 仕事と育児と難関資格、超ハード生活の結果…

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―――注文住宅の会社には12年も勤めたんですね。けっこう長いですよね。

はい。そのままずっといるのかな…と思っていたんですが、問題は自分にあって。
出産して子どもがいる、家庭もある、正職員だから収入もある。なのに、みたされていない。日々どこか不満足なんですよ。

―――そ、それはなぜでしょう…。出産後は、育休をとられたんですか?

はい。でも5か月で復帰しました。出産前にそう決めていたんです。戻らないと不安だったんでしょうね。

―――そのころ、仕事にはやりがいを感じられていましたか?

やりがいはあったと思います。当時、設計で働いている女性は私ひとりで、私の出産がきっかけで育休制度を作ってもらったり…。とても大事にしてもらっていたんですが、自分では自信がない。今のままの自分では戦えないと思っていて、そんな不安を補うように、一級建築士の資格をめざしました。

―――仕事と育児と難関資格の取得。大変だったでしょうね…。

水曜日にお休みをもらって製図の学校に行って、缶詰めになって勉強。仕事もして、週末は子どもがいる。
何年かかけて計画すればよかったんでしょうが、私は気長じゃないので1年でやろうと決めたんですね。体を壊しちゃって会社は退職…。死に物狂いでがんばって試験には合格しましたが、自己肯定感という点では根本的に何も変わっていなかったんです。

◆ 自分にプレッシャーをかけていた

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―――それまで、「こうなりたい」という先輩や、思い描く働き方はあったのでしょうか?

最初の会社で、東京の広告代理店さんと一緒に仕事をする機会があって、その人たちは本当にすごかったんですよ。朝から晩まで缶詰めになってフル稼働、その場でどんどんアイデアを出して問題解決して。夜は夜で飲みに行って、寝ないまままた仕事スタート…みたいな。

「これがプロなんだな、こんなふうに夢中で働くっていいな」と思って、20代は自分が本気で情熱を傾けられる仕事を探していました。それで、家づくりのほうにいったのはまちがっていなかったと思うんですが…。

―――広告代理店的なエネルギッシュな働き方に惹かれる反面、家庭や子どもをもったときに、そういう働き方ではどこかで無理がくるというか、ジレンマに突き当たるときがくるように思います。特に女性は…。

子どもが生まれてから会社はいろいろ考慮してくれるけど、「役に立たなきゃ」、「成果を出さなきゃ」と自分で自分にプレッシャーをかけていたんだと思います。本当は、誰から文句を言われたわけでもないんです。

―――男性が多い業界なので、そういう思考になっちゃいますよね。

理系に進んだ15歳くらいから男子が多い環境にいたせいか、男性と対等に仕事ができないとダメだと思い込んでいたんですよね。

『美味しんぼ』ってマンガ知ってます? 女性の寿司職人のエピソードがあったんですよ。最初はつんけんしていて、女性である自分を本人が受け入れきれていないところから、だんだん変わっていく。
すごく印象的でした。私も、男性中心の建築業界というものに、勝手に戦いを挑んでいたのかな、と。

―――(「キュリアス・マインズ」スタッフさん) “女性経営者あるある” なんでしょうね。

―――そう、通らざるを得なかった道なんでしょうね…。松武さんのような方が増えてきた今、これから建築士になる女性は、もう少し近道ができるようになりそうですね。


◆ 心ある事業を

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独立しようといろいろ学んで、「等身大の事業、心ある事業をしよう」と思うようになりました。ないものねだりではなく、あるものを見直そうと。
前の会社を辞めるころは、私自身がからっぽになっていたんです。

「私はどんな建築士として生きていくんだろう?」と、技術じゃなく、自分の心と初めて向き合ってみました。自分の存在みたいなところを自分でちゃんと認めてからでなければうまくいかないんだなと気づきましたね。

―――向き合って、何が見えてきましたか?

建築士ってふたつに分かれるんじゃないかと思うんです。
建物のフォルムだとか、何でできているかとか…建物のかっこよさを追求することが大好きな建築士もいると思うんですね。

―――松武さんは、そちらではなくて…。

私は、建物にかかわる人に興味をもっているんです。「そこに住む人たちがどんな暮らしをするのかな」とか。
家の数だけ、ただただ普通の暮らしがたくさんあるわけで、そちらに寄り添うほうが自分には向いているし、それが私の仕事だなと思っています。

たとえば自分のインスタを見ても、ずばり建築!みたいなことはそんなに出てこないんですよね(笑)。

―――確かに!

図面を描くこと自体ではなく、そこに住む人のことを考えている時間が楽しいんです。

―――間取り図を見て想像をふくらませていた子ども時代からの感覚なんでしょうね。

今は自分が女性であることもありがたいなと思っています。考えてみたら、男性も女性も両方いて当たり前なんですよね、建築士も。

―――女性にとっては、女性の建築士さんは話しやすいイメージがあると思いますね。

奥様ととても仲良くなれることも多いです。キッチンの使い方のようなご家庭の事情もフランクに話してくださるんですよね。女性だからといって私が家事をするとは限らないのだけれど(笑)。

◆ ネガティブな感情もすべて大切

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―――事前アンケートで「どんな決断も私自身のもの。自由と責任がある」と書いてあって、とても強さを感じました。

自分の決断から逃げず、真摯に歩むのみです。
私の人生なので、ギャラリーは気にせず(笑) 自分の意思を貫きたいですね。

―――仕事も含めて、生きていく上ではいろんな理不尽や怒りもあると思いますが、どのように対処されていますか?

腹が立つ日もありますよね(笑)。でも、怒りは私のエネルギーだと思ってます。

―――おおお!

ネガティブな感情って日本ではあまり良いものとされないけれど、あっていいと思うんです。さみしさも、悲しみや怒りも、すべて。

―――本当にそう思います。

怒りやもどかしさの先には、「よりよくしたい」、「もっとこうしたいのに」という思いがある。その思いが大事なんですよね。

一級建築士の資格をとるときも、自分に自信がなかったのもあるけれど、同じ職場にずっといて何となくなあなあになってしまっていた。自分にまだ情熱が残っているか試したかったのもあるんです。結果、あったのでホッとしたし、自信がついた部分もあったんですね。

ただ、ネガティブな感情をモチベーションにして、叱られてステップアップするのは私の個性。みんながそうではないんですよね(笑)。ほめられたり、うれしい気持ちから伸びる人もいる。そこは柔軟にいかなきゃと思います。

―――今は代表取締役という立場ですが、ご自分でリーダーシップはあると思いますか?

いや~(笑)。リーダーシップって何なんでしょうね。

―――まわりの動きに目を配るのは得意ですか?

もともと得意なほうではないかも。意識してやっています。やはり技術職で、どちらかというと夢中になるほうなので。

―――人と接するときに心がけていることはありますか?

いろいろ気をつけていてもできてない、抜けてるんで(笑)。正直でありたいとは思っていますね。

◆ 髪も家もやりたいことを。どんどん変えてOK!

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―――いつもすてきなスタイリングされてますよね。どういうテイストがお好きですか?

そうですね、事務所の中でいえば、このゴリラとか(笑)。

―――これかー! ユニーク(笑)。これ、どういうテイストって言えばいいんでしょうね。

ファニー? 楽しげでポップ。「何これ!?」みたいにクスッと笑えるのが好きです。
プライベートでは、最近ますます、変な服がかわいいと思うようになりました(笑)。

―――SNSを拝見していると、自分でお洋服をリメイクされたり…。アップサイクルというのかな。

もともと、古着の一点ものとか大好きで。昔は古着の重ね着をしていましたが、今は自分らしくちょっと袖を変えるとか、そういうのがクリエイティブで楽しいですね。

―――夜な夜な、そんな自分時間を満喫されているんですね。

平日はへとへとのことも多いですけどね。目も悪くなってきて、夜になると針に糸を通すのも大変(笑)。手元灯をがんがんつけて、超明るくしてやっています。

―――(スタッフさん)私、モヒカンに刈り上げたいんだけど、どう思う?

ツーブロックね。全然いいよ~! 
髪の毛なんて、やりたいこと全部やったほうがいいよ。2か月もしたら伸びるでしょ(笑)

―――確かに、家に比べれば髪なんて(笑)

家は確かに大物だけど、でも家だって、そんなに気負って作りこまなくてもいい! どんどん変えたらいいと思ってますね。
私自身、家を建てて6年経ちますが、正直、飽きてきて(笑)

―――6年で飽きちゃうのか~! ま、6年経てば子どもはずいぶん大きくなりますしね。

6年って長いですよ~! うちに大きなダイニングテーブルがあって、ちょっとこだわった寄木造りのものなんですけど、もうなくしちゃおうかなって思ってます。「こうして、ああして…」と、夫にプレゼンしてるところです(笑)

(おわり)

松武さんが代表をつとめる建築設計デザイン事務所キュリアス・マインズ。情報更新中です!
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松武さん2

(松武さんの近影です。取材後、久しぶりのショートヘアーに♪)

編集後記

記事中の写真は、松武さんのSNSから転載させていただきました。住まい手さんを思いながらの打ち合わせや図面描き、眠っている服を生まれ変わらせる【アップサイクル】、まちの息遣いが聞こえてくるような風景写真…。
写真とインタビューを組み合わせると、松武さんの来歴と感性がキュリアス・マインズにつながったのは必然だと思えます。「建築」って、実はとても柔らかで自由なものなんじゃないかとも思えてきました。
Stay Curious! (イノウエエミ)


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