ニューノーマル・トラベラー(1)
プロローグある日曜日の夜、私は札幌駅にいた。私の住処が札幌の街にある以上、どこか遠くの土地を目指すときに、札幌駅が出発点になることは仕方なく、こういう始まりになってしまうのも毎度のことだ。平成初期の雰囲気を残した西口の、ずらりと並んだ自動改札機の上には、道内各方面へ向かう列車の発車時刻が書かれた電光掲示板がかかっている。それは何度見ても壮観で、札幌という街から何処へでも行けることを、最も感じる瞬間だった。
改札に切符を通すと、一瞬でこれから始まる旅へのゲートが開いた。ICカ