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【コンサル物語】Big4会計事務所

コンサルティング業界で仕事をしていたり、コンサルティング業界への就職や転職を考えている方は、Big4会計事務所やBig4コンサルティング会社がどういうものか大体想像がつくと思います。でもそういった人は非常に限られた範囲の方々で、多くの人にとっては、Big4?グローバル会計事務所?というのが普通ではないでしょうか。また、なぜ会計事務所が経営コンサルティングで幅を利かせているのかもよく分からないのではないでしょうか。Big4の歴史を紐解く前にBig4会計事務所について簡単に触れておきたいと思います。

Big4は19世紀半ば頃にロンドンを中心に誕生した歴史をもつグローバル会計事務所です。今では実態は一つの会社ではなく、各国のメンバーファーム(参画している複数の会計事務所)の寄合所帯です。その歴史の中で合併・分裂を繰り返し、現在ではグローバル会計事務所として4大事務所となっています。それがBig4(Deloitte・PWC・EY・KPMG)と呼ばれる会計事務所です。会計事務所と言っていますがBig4各社の事業内容は、監査(※)・税務・コンサルティング・法務など多岐に渡ります。今では本業の監査収入よりもコンサルティング収入の方が多い会社もあり、コンサルティングは上げ潮に乗って儲かるのでどんどんコンサルティングに力を入れてるのが実態です。

※会計監査という仕事は職業会計士(今で言う公認会計士)がこの世に誕生してからずっと会計士が専売特許としてきたものです。職業会計士は19世紀半ばのイギリスで生まれ、その後世界中に広がった歴史があります。日本では第二次世界大戦後に公認会計士が誕生しています。

各社が抱える社員の数は20万~30万人という巨大なグローバルネットワークを築いています。Big4はグローバル本部または本部機能をロンドンに置き、各国の会計事務所と提携し世界中にBig4流のビジネスを展開しています。日本でも監査法人やコンサルティング会社、税理士法人、法律事務所等がBig4と提携しています。(Deloitteのコンサルティング本部はニューヨーク、KPMGはアムステルダムにも本部があるようです)

※ Big4会計事務所の世界本部 Wikipedia等を参考に作成

以下は各社HP、アニュアルレポート等を参考に作成したBig4の売上と社員数です。(2021年度)

Big4がここまで巨大になるには多くの合従連衡を繰り返してきた歴史があります。始まりの多くは19世紀のイギリスを中心に個人事務所からスタートした会計士達(※)。顧客の拡大とともに徐々に事務所同士で小さな統合を進めていきました。19世紀末にはアメリカ合衆国での会計業務の需要が拡大しアメリカに進出する事務所が増えました。20世紀に入り現地で設立されたアメリカ生まれの会計事務所とも合併・連携を繰り返しました。20世紀初頭のアメリカ合衆国の工業化を会計面で支えていた多くは太平洋を渡ったイギリスからの会計士達でもありました。

20世紀初頭までは主に監査業務を行っていたBig4会計事務所ですが、徐々に他の事業にも業務範囲を拡大していきました。一つは会計システムの導入支援等のコンサルティングサービスであり、一つはアメリカ政府が導入を進めた新しい税制度への税務サービスです。現在のBig4の主要サービス(監査・税務・コンサルティング)は1910年頃から形になっていました。

第二次世界大戦を経験しアメリカには8つの大きな会計事務所が存在するようになっていました。

第二次世界大戦後Big8と呼ばれていた会計事務所
・ピート・マーウィック・ミッチェル(後のKPMG)
・アーサー・アンダーセン(後のアクセンチュア)
・アーンスト・アンド・アーンスト(後のEY)
・プライス・ウォーターハウス(後のPWC)
・ハスキンズ・アンド・セルズ(後のDeloitte)
・ライブランド・ロス・モンゴメリー(後のPWC)
・アーサー・ヤング(後のEY)
・トーシュ・ロス(後のDeloitte)

その後の半世紀、1990年代までさらに合併を繰り返しBig8(1945年)からBig6(1989年)に、Big6からBig5(1998年)へと統合は進み、最後に2002年にBig5の一角だったアーサー・アンダーセンがエンロン問題で消滅し現在のBig4体制が出来上がりました。(下図参照)

参考資料:『闘う公認会計士』

※Big4会計事務所に名前を残している主な人々
その始まりは個人の会計士事務所ですが、彼らが事務所を開設していなければ21世紀にコンサルティング業界にBig4が存在することもなかったのです。

英語名(日本語名 生まれた年-亡くなった年)出身

■PWCに名前を残す人物

Samuel Lowell Price(サミュエル・ローエル・プライス 1821-1887)イギリス
Edwin Waterhouse(エドウィン・ウォーターハウス 1841-1917)イギリス

(写真なし)
William Cooper(ウイリアム・クーパー 1826-1871)

■Deloitteに名前を残す人物

William Welch Deloitte(ウィリアム・ウェルチ・デロイト 1818-1898)イギリス


(左)Charles Waldo Haskins(チャールズ・ウォルド・ハスキンス 1852-1903)
(右)Elijah Watt Sells(イライジャ・ワット・セルズ 1858-1924)共にアメリカ

■EYに名前を残す人物
(写真なし)
Alwin C. Ernst(アルウィン・C・アーンスト 1881-1948)アメリカ
Theodore Ernst(セオドア・アーンスト)アメリカ
Arthur Young(アーサー・ヤング)イギリス

■KPMGに名前を残す人物

Piet Klynveld(ピート・クリンフェルト 1874-1945)オランダ


William Barclay Peat(ウィリアム・バークレー・ピート 1852-1936)イギリス
James Marwick(ジェームズ・マーウィック 1862-1936)イギリス

(写真なし)
Dr. Reinhard Goerdeler(ライナーハルト・ゲーデル博士 1922-1996)ドイツ

彼らが生きた年代からもだいたいが19世紀後半から20世紀初めにかけて会計士として活躍したことがわかります。

そして、最後にもう一人ご紹介します。Big4コンサルティングの歴史を語るうえでは欠かすことのできない人物です。事務所は既に解散・消滅していますが、2002年までBig5の一角として存在し、世界最大のコンサルティング会社を生み出したアーサー・アンダーセン会計事務所の創設者です。

Arthur Andersenアーサー・アンダーセン 1885-1947)アメリカ

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