SBTi Scope3 discussion paper の衝撃?!(2)
サステナ界隈で話題となった、7月30日のSBTiのプレスリリース。
公開されていた4つの文書のうちの「Scope 3 discussion paper」について、前回から内容を簡単にご紹介しています。内容盛り沢山ではありますが、詳細は追々ご案内するとして、次の2ポイントに絞って説明をしております。
前回は「1.クレジット購入によるオフセット」まででしたので、今回は、「2.アウトカムベース指標(Metrics)」の話をしたいと思います。
ディスカッションペーパーは、ネット・ゼロ達成へ向けて、次の5ステップでのフレームワークを提案しています。
ステップ1「排出量の算定と開示」は当然として、ステップ2「優先順位付け」について、次の3点を考慮に入れるべきとしています。
この「規模」と「影響度」についてのアプローチ方法に、「アウトカムベース」と「インパクトベース」が存在します。
「規模」のみで判断すると、もちろん、排出量が多いカテゴリーを優先して削減する方が効率的です。ですが、「影響度」を考慮するとどうでしょう。
例えば、自動車であれば、生産における排出量(上流の排出量)よりも、利用による排出量(スコープ3 カテゴリー11)が圧倒的に多くなります。ですので、自動車メーカーが、カテゴリー11削減の優先順位を上げることは、間違っていません。
しかしながら、主要な材料である鉄鋼は、自動車セクターだけでなく、建設・土木・家電セクターなど、幅広いセクターで使用されています。従って、排出量の少ない鉄鋼材料が普及すれば、製造業全体の、ひいては、世界全体の排出量削減につながります。
「影響度」を考慮すると、カテゴリー1「購入した製品サービス」における「鉄鋼」の優先順位を上げるべきとなるでしょう。
つまり、「規模」に着目するのが「インパクトベース」で、「影響度」に着目するのが「アウトカムベース」なのです。
とはいえ、どちらが、良い悪い、というものではありません。
ディスカッションペーパーでは、「アウトカム」を実現することにより「インパクトが得られる」と表現しています。一つ一つは小さな「アウトカム」でも、積み重なることで、大きな「インパクト」を引き起こすことができる。
先の自動車セクターの例を思い出すと「なるほど」と思えるでしょう。
つまり、「インパクト」ばかりに目がいくと、自社最適となりかねないので、「アウトカム」を補完的に使いましょうということ。
Figure3が示すように、2050年までのタイムスパンで見ると、両者のアプローチは互いに相関するのです。
なお「ロックインリスク」は、石炭火力のような施設・設備を導入すると、長期間に亘って稼働し、排出削減にネガティブな効果をもたらすリスクですので、今回の議論からは離れてしまうので詳細には立ち入りませんが、優先順位付けでは、3点をバランスよく考慮しましょうと言うことなのです。
ステップ3「目標設定」でも、同様に、「アウトカムベース」アプローチを「インパクトベース」アプローチと併用します。KPIとして、「アウトカムベース指標」と「インパクトベース指標」を設定することになります。
次回は、ステップ3について、ご案内していきますね。
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