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SBTi Scope3 discussion paper の衝撃?!(2)

サステナ界隈で話題となった、7月30日のSBTiのプレスリリース。

公開されていた4つの文書のうちの「Scope 3 discussion paper」について、前回から内容を簡単にご紹介しています。内容盛り沢山ではありますが、詳細は追々ご案内するとして、次の2ポイントに絞って説明をしております。

1.クレジット購入によるオフセット
2.アウトカムベース指標

前回は「1.クレジット購入によるオフセット」まででしたので、今回は、「2.アウトカムベース指標(Metrics)」の話をしたいと思います。

ディスカッションペーパーは、ネット・ゼロ達成へ向けて、次の5ステップでのフレームワークを提案しています。

SBTi Aligning Corporate Value Chains Scope 3 Discussion Paper(14,15ページ)

ステップ1「排出量の算定と開示」は当然として、ステップ2「優先順位付け」について、次の3点を考慮に入れるべきとしています。

優先順位付け
1.規模(Magnitude)
2.影響度(Activities in high-climate-impact sectors)
3.ロックインリスク(Activities with high risk of emissions lock-in)

SBTi Aligning Corporate Value Chains Scope 3 Discussion Paper(31ページ)

この「規模」と「影響度」についてのアプローチ方法に、「アウトカムベース」と「インパクトベース」が存在します。

「規模」のみで判断すると、もちろん、排出量が多いカテゴリーを優先して削減する方が効率的です。ですが、「影響度」を考慮するとどうでしょう。

例えば、自動車であれば、生産における排出量(上流の排出量)よりも、利用による排出量(スコープ3 カテゴリー11)が圧倒的に多くなります。ですので、自動車メーカーが、カテゴリー11削減の優先順位を上げることは、間違っていません。

しかしながら、主要な材料である鉄鋼は、自動車セクターだけでなく、建設・土木・家電セクターなど、幅広いセクターで使用されています。従って、排出量の少ない鉄鋼材料が普及すれば、製造業全体の、ひいては、世界全体の排出量削減につながります。

「影響度」を考慮すると、カテゴリー1「購入した製品サービス」における「鉄鋼」の優先順位を上げるべきとなるでしょう。

SBTi Aligning Corporate Value Chains Scope 3 Discussion Paper(27ページ)

つまり、「規模」に着目するのが「インパクトベース」で、「影響度」に着目するのが「アウトカムベース」なのです。

とはいえ、どちらが、良い悪い、というものではありません。

ディスカッションペーパーでは、「アウトカム」を実現することにより「インパクトが得られる」と表現しています。一つ一つは小さな「アウトカム」でも、積み重なることで、大きな「インパクト」を引き起こすことができる。

先の自動車セクターの例を思い出すと「なるほど」と思えるでしょう。
つまり、「インパクト」ばかりに目がいくと、自社最適となりかねないので、「アウトカム」を補完的に使いましょうということ。

Figure3が示すように、2050年までのタイムスパンで見ると、両者のアプローチは互いに相関するのです。

SBTi Aligning Corporate Value Chains Scope 3 Discussion Paper(26ページ)

なお「ロックインリスク」は、石炭火力のような施設・設備を導入すると、長期間に亘って稼働し、排出削減にネガティブな効果をもたらすリスクですので、今回の議論からは離れてしまうので詳細には立ち入りませんが、優先順位付けでは、3点をバランスよく考慮しましょうと言うことなのです。

SBTi Aligning Corporate Value Chains Scope 3 Discussion Paper(42ページ)

ステップ3「目標設定」でも、同様に、「アウトカムベース」アプローチを「インパクトベース」アプローチと併用します。KPIとして、「アウトカムベース指標」と「インパクトベース指標」を設定することになります。

次回は、ステップ3について、ご案内していきますね。

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