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ESG債活用のススメ

日銀が、「気候変動関連の市場機能サーベイ」を開始しました。

気候変動問題が、様々な経済主体を巻き込む長期的な課題であるという認識の下、幅広い市場関係者を対象に年次で継続的に実施するとのこと。第1回調査では、発行体、投資家、金融機関、格付け会社等663先に調査を依頼し、4割以上の先から回答を得たそうです。

調査結果によると、気候変動関連の ESG 債の需要は非常に高く、発行動機としては、「国内の他の手段よりも条件が有利」というよりも、「レピュテーションの向上」や「投資家層の多様化」といった事業・IR戦略上の事由が重視されていること、投資家側の動機としても「社会的・環境的な貢献」が重視されていることが示されたとのこと。

「気候変動関連の ESG 債」とは、国際原則・政府の指針に適合したグリーンボンド、サ ステナビリティボンド、サステナビリティ・リンク・ボンド(気候変動対応に紐づく評 価指標が設定されたもの)、トランジションボンドを指す。

つまり、「ESG債を発行している企業」であれば、機関投資家から「環境を重視した経営を行っている企業である」と認められるということです。これまで、何度となく気候変動に関する「情報開示」の重要性と効果をご案内してきましたが、資金調達の手段として、銀行融資や社債だけでなく、ESG債も選択肢とすることも、同等レベルで効果的なようですね。

需給については、このように、投資家・発行体いずれも、需給は「やや逼迫〜逼迫」(=需要が多い)とする割合が4割程度を占めていることから、条件さえ整えばマーケットが拡大することは確実でしょう。

加えて、業種別で見た場合は、事業法人よりも金融機関の方が「やや逼迫〜逼迫」と回答した割合が遥かに高く、「買い手はいくらでもいる」といって良い状態では無いでしょうか。

なお、社債市場全体に占める割合を見るとまだまだ低いのが現実です。
ですが、だからこそ伸び代は大きいということであり、「今から」のビジネスだと言ってよいでしょう。

気候変動関連の ESG 債が社債市場全体に占める割合

サーベイは、課題についても明らかにしています。

「情報開示の拡充や標準化」という項目は回答数としては2番目ながら、重要性としては1位とした回答割合はダントツです。つまり、「ウォッシュ」の誹りを受けないために、明確なルールが整備されることが「課題」であると認識している、発行体・投資家が多いということです。

これらのメリットについての認識が発行体・投資家により浸透し、また情報開示の拡充・標準化等により発行や投資判断にかかるコスト及び「ウォッシュ懸念」が低減すれば、発行体や投資家の裾野が広がり、ESG債市場の活性化に資すると思います。

「日本銀行としては、内容面の工夫を図りつつ、継続的に実施し、気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた今後の課題に関する情報を提供していく」としています。

このサーベイを参考にしながら、「自社の環境投資に対する資金調達」+「自社の環境配慮姿勢のPR」+「新規投資家の獲得や投資家層の多様化」という一石三鳥を狙い、ESG債発行の準備をされてはいかがでしょう。

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