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めくるめく、あんこの誘惑。

大人になってから好きになった食べ物のひとつに、あんこがある。
子どもの頃はその真っ黒な見た目も、つぶした豆の独特な食感も、甘さも、何もかもが苦手だったのに、いつからこんなに大好きになったんだろう。

近所の和菓子屋さんで時々買うどら焼き。
昭和28年創業の小さなお店。変わらぬ味。

秋になると、あんこが恋しくなるのは、あずきの旬がちょうど今ごろからかもしれない。

わたしがとくに食べたくなるのは、あんみつ。
涼しい季節は断然“豆かん”派だけれど、蜜をかけてしっとりとしたあんこと寒天とを一緒に味わうのも美味しいものだ。

銀座「野の花」のあんみつ。
3種類の寒天に黒豆や甘納豆など、上品かつ個性的。


それから、鯛焼き。
パリッと生地に包まれた熱々のあんこ。
この組み合わせが、たまらなく好き。

およげ!たいやきくんのモデルになった
「浪花家総本店」のたい焼き。大好き。

あんこで頭をいっぱいにしながら、そうだ、と思い出してひっぱりだした姜尚美さんの『何度でも食べたい。あんこの本』。
京都を中心に、全国各地の美味しいあんこを食べさせてくれるお店をめぐり、作り手に取材した“あんこテロ”的な本。
なんといっても、姜尚美さん自身があんこが好きではなかったというところが共感できて、いい。

魅力的なお店ばかりなんだけれど、私が行ってみたいのは大阪・四天王寺の干菓子屋さん「河藤」。
夏の時期限定で登場するくず饅頭がとっても美味しそうなのと、色に対する感覚がとても素敵で。

「同じ緑でも、春と秋で木々の緑も違うでしょ。モミジの干菓子を、青モミジの緑から徐々に紅葉のダイダイにしていったりね。
そうそう、“木守(きまもり)“を知ってますか。冬の風物詩。柿の木を守るために1個だけとらずに残しとく。うちにも柿の生菓子がありますけど、青柿、黄色、ダイダイとしていって、最後、その木守みたいな真っ赤に熟れた柿の色にするんです」
何度でも食べたい。あんこの本/姜尚美さん

その様子が目に浮かぶようで、思わずうっとりしてしまう。きっと近所に住んでいたら、足繁く通ってしまうだろうなぁ…。

奈良の「白玉屋榮壽」のもなか“みむろ”も美味しそう。

「サンドイッチが布で包んで落ち着かせた方が作りたてよりおいしいように、最中も、あんこの水分が皮に移り、皮から水分が抜けた頃が一番おいしい」

何度でも食べたい。あんこの本/姜尚美さん

7代目のこの言葉に目から鱗が落ちた。
次にもなかを食べるときはふたつ買って、できたてと翌日の味を食べ比べてみよう。

ところで、未体験ゾーンのあんこメニューがある。
それは、最近よくみる(スタバにもある)あんことバターの組み合わせ。

絶対美味しいだろうなぁと思いつつも、背徳感と罪悪感、およびあのバターの塊を食べた後の胃の様子が予測できなくて、頼む勇気が出ないのでした。

だれか、“半分こ”しないかしら。

目白「志むら」の氷白玉。
冬のかき氷もまた美味しい

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