聖書がわかると、西洋絵画がグッとおもしろくなる。
六本木の国立新美術館で『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が開催されている。
モネ、ゴッホ、ルノアール、カラヴァッジョにフェルメール…と巨匠らの名画がずらり並び、しかも展示作品65点のうち、46点が日本初公開という大変見応えのある展示だ。
(個人的には、佐々木蔵之介さんの音声ガイドが素晴らしかった。ただのファンです)
本展は「Ⅰ.信仰とルネサンス」「Ⅱ.絶対主義と啓蒙主義の時代」「Ⅲ.革命と人々のための芸術」の3部構成。
とくに1、2部をより深く楽しむ資料として、聖書(イエス・キリストの教えや、その世界観)に触れることをおすすめしたいなぁ、というのがわたしの個人的な感想。
もともと宗教画は、読み書きができない信者に聖書に書かれている内容物を伝えるために、礼拝堂などに描かれたのが始まりだといわれている。
「受胎告知」や「イエス・キリストの誕生」、「キリストの磔刑」に関連する絵画が多いのは、聖書のなかでも重要なシーンとされているから。
この辺りは超有名だから聖書を知らなくても、なんとなく話の筋はわかると思う。
でも、今回展示されているラファエロ・サンツィオ『ゲッセマネの祈り』、ニコラ・プッサン『足の不自由な男を癒す聖ペテロと聖ヨハネ』あたりは、「ふーん……」という感じになるのではないだろうか。
例えば『ゲッセマネの祈り』に描かれているのは、最後の晩餐の後、キリストが弟子を伴ってオリーブ山に登り、苦悩しながら祈りをささげるこのシーン。
この直後にイエス・キリストは逮捕され、十字架に磔にされる。表紙にもなっているように十字架上、あるいは十字架から下ろされたキリストもよく描かれているが、そこに込められた“救い”の意味がわからなければ、ただ残酷なだけの作品に過ぎない。
わたし自身は一応聖書は読んでいるのだけれど、中野京子さんの「名画と読むイエス・キリスト」を読んでから、さらに宗教画を観るのが楽しくなった。
この本では聖書に登場するさまざまな人物や、シーンをテーマに描いた作品43点とともに、イエス・キリストの生涯が解説されている。
登場する作品はダ・ヴィンチやルーベンス、ゴッホ、カラヴァッジョなどなど、メトロポリタン美術館展に引けをとらないといっていいのか、なんとも豪華。
中野さん自身がクリスチャンではないこともあり、よくありがちな宗教的な押しつけがましさがないところもこの本の魅力だと思う。
そういえば以前、中野さんがゲスト出演されていたあるラジオ番組で
「絵に描かれているものにはすべて意味がある。そこに込められた意味がわかると、絵を見るのがもっと楽しくなる」というようなことを言っていて、本当にそうだなぁと感じ入った。
聖書に限らず、その絵が描かれた時代背景や、その地域の文化を知ると新しい発見がある。
同じ絵も、年齢を重ねてからもう一度見ると、違う印象を抱いたり。
これだから、アートは面白いんだよなぁ、美術館巡りはやめられないなぁとつくづく思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?