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ソースは俺男

このタイトルで親近感を覚えた方は、きっと2ちゃんねるを閲覧するのが好きな方、または住人の方々かもしれない。

この「ソースは俺」は、

自分の実体験や経験則に基づいた話や結論、つまり情報元が自分だった場合に、その話の最後に「ソースは俺」と言うことで信ぴょう性が高まる

といった意味らしい。


私も友人とのLINEで日常的に

「今から向かうンゴねぇ」

「クッソワロタwwwww」

などのネットスラングを使うことは多々あるが、それを口に出して使う場面はなかなかない。


私は、「ソースは俺」という2ちゃんねるならではの用語を、会話の中にさりげなく、しかも何十回と放り込んでくる男と出会った。



彼との出会いは20代前半の頃に遡る。

いつものようにチャットサイトで男漁りをしていたところ、

「こん」

と、出会い系チャットあるあるのあいさつから始まり、どこすみ?なんさい?と王道とも言えるやり取りをかましてくる男が現れた。


1時間ほど他愛もない話をしていると「会わない?」と言われた。

貞操観念が皆無である私は

「焼肉をおごってくれるなら。あと、そっちから会いに来てくれれば」

と条件付きでOKした。


すると「おk」と返事が来て、数日後に会うことになった。


ちなみに私は、このようにインターネットを通して異性と出会った場合に必ず「恋愛経験はあったか、体型はどんなか」を聞くことを心掛けている。

この返答によって、ある程度の人間像が測れるからだ。

彼の返事は「最近彼女と別れたばかり、ヒョロガリの高身長」とのことだった。


少しの期待を含め当日を迎えた。


自宅から車で30分程離れた駅まで迎えに行き、ロータリーで停車をして彼の到着を待った。


すると、言われた通りのヒョロっとした高身長な黒ずくめの男が現れた。

顔は東方神起の偽物のような顔で、少しだけ額が禿げ上がっていた。


私は偽東方神起を助手席に乗せ、適当に車を走らせた。


特に会話に困ることはなかったが、話をしているうちにあることが気になりだした。

そう、それが

「ソースは俺」

だ。


「男っていうのは単純な生き物だから、逃げられると追いかけたくなるもんだよ。ソースは俺。」

「彼女が尽くしてくれるタイプだとさ、男ってどんどんダメになっていくんだよね。ソースは俺。」

「あ~そういう経験俺もある。そうなっちゃうとなかなか関係って進展しないよね。ソースは俺。」


それっぽいことや私のダメ恋愛にアドバイスなんかもしてくれるのだが、全てにおいて「ソースは俺」で締めくくるため、そこはかとない鬱陶しさを感じてしまう。


そして「ソースは俺」なだけに、その後繰り広げられる話と言えば全て偽東方神起の体験談、経験談。

私の恋愛話もいつしか東方神起のソースは俺話にすり替わってしまう。


こいつ、うぜぇ。


そんなこんなでデート開始1時間ほどで既に帰りたくなった私だが、焼肉が待っているためひとまず堪えることにした。

車を走らせること約1時間、ある場所に到着した。


偽東方神起は事前にネットで調べていたらしく、なんでも珍しい景色が見れる場所だということで、山の入り口のようなところに車を停めた。


周りにはお土産屋さんもあり、観光客もちらほらいた。


まずは目的の景色とやらを見に5分程歩き、その後はせっかくだからとご当地名物のソフトクリームだかを頂いた。


偽東方神起はおもむろに

「はい、こっちも旨いよ」

と言って私にソフトクリームを差し出してきた。


好きな人や良い感じの人ならキュンとも来そうなものだが、目の前にいるのは禿げた偽物の東方神起。ソースは俺。

「あっ大丈夫でーす」

と言って、好意のソフトクリームを断った。


その後は適当に時間を潰し、最大の目的である焼肉を心待ちにした。


私は自分では行くことのない店をチョイスし、これ幸いとばかりにおいしそうなお肉たちを注文した。

一応良心はあったので、「これ頼んでいいかな?」と全て許可は得た。


焼肉に罪はないのでおいしく頂き、その時ばかりは偽東方神起の話を熱心に聞いた。

会話が聞こえる距離に人がいたからか「ソースは俺」とは一切言わなかった。


帰りの車中「俺ここのホテルに予約取ったんだけど」と言われたので、「そこまで送ればいいのねオッケー」と返事をし、ホテルに駐車することなく道端で偽東方神起を降ろした。

ホテルに着くまでに

「こういうホテルって割と質がいいよね」

「駐車場あるみたいよ」

「あ、一緒に来る?」

と、さりげなさを装って小賢しい誘いを受けたが、全スルーで乗り切った。


車から降ろしたあとも

「一人で泊まるには部屋広めw」

と誘い受けなメールが届いたが、それも無視した。



特にその後の展開はなく、教えたアドレスもすぐに使わなくなってしまったので彼が今どうしているかは知らない。

今振り返ると、穴さえあればなんでもいいような、タチの悪い男じゃなくて本当に良かったなぁと心から思う。

意外とそんな男性が少ないというのが私の知る現実だが、中には本当に危ない人もいるらしいので男女共々気を付けて頂きたい。


インターネットを通して出会う人間には様々な人々がいるが、こちらが好意を持って誠実に接すれば、基本的に悪いことはあまりない。

ソースは俺。


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