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【イケてる企業のC.I.(コーポレートアイデンティティ)を切る!】◆第12回:竹下産業 株式会社

福岡に、江戸時代から続く「日本の食文化」を支えている、まるで「下町ロケット」のような会社があります。

第12回は、お寿司屋さん、スーパー、コンビニ、家庭など、「日本の食卓」に欠かす事の出来ない[海苔]を全自動で生産する機械を製造・販売している「国内シェアNo.1」で、約50%を占めている「竹下産業 株式会社」です。
*シェア50%→コンビニの2個に1個の「おにぎり」が竹下産業の機械で作られています。

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「竹下産業」は、福岡県 柳川市に本社を置き、「海の幸の宝庫」といわれる"有明海"に目を向け、昭和40年(1965年)に設立され、今年 創業55年を迎える会社です。
実は、私の生まれた"年"と同じで、同じ年月を歩んで来たとい親近感が沸きました。

この会社は、今まで培った経験を基に、独自の技術を生かして様々な新製品を開発し、全国の「海苔」生産の安定供給の基礎を作り上げました。「海苔」業界では、トップメーカーとして、独自ブランド「トライスター」という全自動「海苔」製造機をもち、この機械1台・1時間当たり、1万枚(1秒間に3枚以上/19㎝×21㎝)を超える生産量を誇り、1日 最大で24万枚の「海苔」を日々 生み出しています。
*天日干しの手作業の時代は、1日 6.000枚しか生産出来なかった。

「海苔」は江戸時代から食べられている食材で、浮世絵にも「海苔」が描かれているほど、日本の文化と歴史に密着しています。
そんな「海苔」を分解する「消化酵素」を持っているのは、なんと"日本人"だけだそうです。
日本人の腸内に住み着いている「海洋菌」が栄養豊富な「海苔」を分解してくれます。

世界で「海苔」の生産を行っている国は、日本、韓国、中国で、その中でも「日本」は、世界一の生産量を誇っています。

日本人は、日本人特有の第5の味覚「うま味」を持っています。
「海苔」は、このうま味成分と言われている…
【三大うま味】
◆1.「グルタミン酸」→昆布
◆2.「グアニル酸」→鰹節
◆3.「イノシン酸」→干し椎茸
これら「3つ」が入っている、珍しい食材です。そんなうま味成分たっぷりの「海苔」は、「焼き海苔」にする事で、さらに うま味がでます。
*「味覚」とは、触覚や視覚・聴覚・嗅覚と並ぶ 人間の五感の一つ。主に舌に受容体があり、現時点では「甘味・酸味・塩味・苦味・旨味」の5つが基本味とされている。
*「海苔」の生産時期→11月~3月
では、「竹下産業」の「イケてるC.I.」の一部を紹介します。
*実は、C.I.としての言葉の整理は不十分ですが、想いが、凄く伝わります。


【企業理念】

「良い製品づくりと同じくらい、存続することが、大切なのだと思います。」

【代表メッセージ】
私たちがつくる製品は、日本人にとって馴染み深い『海苔』の生産機械。
国内シェアは、およそ50%。そう考えると、日本中で食されている海苔の実に半数が、私たちの機械によって生み出されているのです。その大きな責任が、何よりの誇りとなっています。
生産設備メーカーとして良い製品づくりに邁進するのはもちろんのこと、同じくらい大切にしなければならないのが、アフターサービス。私たちの機械が止まれば、その日の乾海苔の生産がストップしてしまう。修理に時間がかかればかかるほど、海苔生産が中断するだけでなく加工前の原藻の品質が劣化してしまうのです。
だからこそ企業として存続し、いつでもどこでも、機械に何かあればすぐに駆けつける。ユーザーの生の声を聞き、製品の機能や価値をブラッシュアップし続ける。

創業して50年を超える長い歴史の重みを感じながら、次の50年も日本の食文化を守り、そして海苔生産を支えるべく、私たちはこの場所に在り続けたいと思っています。


【成長の理由分析】

「竹下産業」が、存続・成長しているのは、まさに「モノづくり」の精神に尽きると思います。所謂 「職人魂」です。1つのジャンルで国内シェアの半分を築き、守る為には技術の「進化」しかないと思います。これを実現されているのは、素晴らしく"感服"いたしました。
では、もう少し成長の理由を仮説ですが、分析してみます。大きく4つあると思います。

■1.「日本の高度成長に乗り、地元の海の幸を工業化した点!」(有明海の力)
*有明海で生まれる「海苔」は、国内最多の生産量(佐賀、福岡、熊本など合わせてシェア約50%)を誇っています。
栄養たっぷりの水、塩分濃度、干満差と光合成。
有明海が「海苔」づくりに適している理由は、3つあります。
◇その1、多くの河川(その数100以上!)が流れ込んで栄養がたっぷりなこと!
◇その2、淡水と海水が、ほどよく混ぜ合わさり、「海苔」の養殖に適した塩分濃度!
◇その3、干満差(潮の満ち引きによる水位の差)と光合成!
有明海の干満差は、なんと最大6メートルもあり、支柱に固定した「海苔網」が1日1回干し出されるので、太陽の"光"を浴びた「海苔」が光合成し、独特のうま味が生まれます。
この日本一恵まれた環境下に「竹下産業」はあり、日本が、高度成長期(昭和40年代)に入るタイミングで、「海苔」の需要が増えることを見越し、手作業から いち早く、工業化に踏み切った点です。所謂 農業機械の技術を「海苔」製造に切り替えた点だと思います。

■2.「三代目 竹下 政敏社長の誠実さと、静かな闘志!」(アイデンティティ力)
*竹下社長は、元々 自動車メーカーのHONDAで「オデッセ」を開発していたエンジニアです。9年半働いた後、1996年に竹下産業に平社員として入社しました。その14年後に社長に就任しますが、入社して3年目の1999年に竹下産業は、財政面が厳しくなり、資金繰りが上手くいかず、事業を縮小する事になります。
この時 会社を分社化し、3つあった事業が一つになります。それが今の「海苔」製造機の分野です。110名いた社員が、70名に減少しました。ここから竹下社長は、地道にやれることを"コツコツ"資金面が厳しい分、知恵を絞り節約できる所は徹底的にされました。
転換期があった訳ではなく、出来ることを一歩一歩やって今を築かれました。
竹下社長の経営感は「やればできる」という気持ちで「成果」を求めて地道にやってこられました。
中学の校長先生が掲げていた「和而不同」が座右の銘で、「和して同ぜず」周りの方々と、仲良くはするが、自分の考えは、しっかり持っていこうという意味です。「付和雷同」的に表面的に仲良くするのではなく、本質的に、しっかり自分の考えは持つべきだと言われています。
この竹下社長は、ホンダで学んだ「エンドユーザー重視の精神」と、竹下産業の「モノづくりの精神」がアイデンティティとなっています。

■3.「創業者から引き継いだDNAと、半オーダーメードで製造できる点!」(自社ブランド力)
*創業者(竹下社長の祖父)は、なんと64歳で起業され、元々 鍛冶屋から始まり、農業機械(トラクター・コンバイン)の自動機械を製造・販売されていました。他にもビニールハウスの暖房器具や、い草の乾燥機械など。
この技術が今の「海苔」全自動製造機に生きています。
「海苔」はとても繊細で、加工場の建屋の「吸気・排気、温度や湿度」によって、出来上がりの品質はまったく変わります。竹下産業の製品は殆どが受注生産でオーダーメイドに近いカタチで、ユーザーのニーズに合わせて製品をカスタマイズしています。
機械を設置する「海苔」加工場も乾燥設備の一部で、加工場の乾燥設備づくりから関わっています。
竹下産業の先進的なモノづくりを支えているのは、技術者と工場自体の進化です。工場では、最新型のレーザー装置を導入して、日中に部品を加工するプログラムをセットし、夜間も機械を稼働させています。その結果 社員さんは、残業することなく高い生産性を維持しています。また こんな所にも"職人魂"が、社内のBBQ大会の為に、わざわざ「バーベキューコンロ」をゼロから加工して造られています。凄いですね!

■4.「自社で、設計から開発・製造した製品のメンテナンスの徹底!」(フットワーク力)
*竹下産業が「海苔」の加工機を納品している地域(海苔の生産地)は、仙台湾・東京湾・伊勢湾・三河湾・瀬戸内海・有明海で、独自ブランドの「トライスター」を納品しています。竹下産業の強みは、この加工機の「設計・加工・組み立・メンテナンス」までを1社で完結できる点です。
また 製品を売って終わりではなく、販売した後が大切だと、納品地域に対し、機械がトラブルを起こした時に、電話1本で直ぐ行ける体制を整えています。
「海苔」の生産時期である「11月から3月」にメンテナンス力が問われます。
何か不具合があったら即座に修理できるよう部品を十分に揃えてあり、「海苔」の生産期前には、新人さんも、ベテランさんも、アフターサービスを担当するスタッフ全員で、技能訓練や、社内勉強会(社長自ら、毎週1回 製品改善提案会議)を実施されています。
この徹底したアフターサービスのこだわりが、「竹下産業」なら安心だというユーザーの信頼を掴み取っています。

◎と言うことで…
竹下産業の存続・成長の理由は、一言「技術力」=職人集団であることだと思います。
しかし 近年、「海苔」生産者の高齢化による「海苔養殖」の廃業や、後継者不足による個別経営体の減少が進んでいます。今後は,産地の生産力の維持が困難な状況になると懸念されています。個別経営体の存続条件は、設備・加工場の機器の更新費用の節減などによる生産コストの削減と、労働力の軽減が課題とされていて、「海苔産地」では生産性の向上と、労働の軽減を目的とした協業の推進が進められています。

「海苔」の生産力自体を上げる取り組みが必要になると思います。
竹下産業さん自体が「海苔」を生産するのも良いかもしれません。
それから、この技術を活かした「海苔」業界以外を早く開発する事も重要だと思います。
*勿論 取り組まれている事も承知した上での話です。
例えば 竹下産業さんしか出来ない「くるくる寿司」マシーンを開発して、有明海の漁業組合と共同でチェーン展開すると面白いかもしれません。好き勝手なこと言ってすいません!

◎最後に C.I.について 一言いわせて頂くと、竹下社長の想いは伝わりますが、社長の「頭」の中にある想いが、きちんと「言語化」されていないと思います。もったいないです。「100年企業」を目指される会社として、一度 きちんとC.I.の整備をされることをお勧めします。
C.I.を整備することで、社内・社外に好循環サイクルが生まれます。さらに 社員間の意識統一が図れ、ブランディングや採用戦略など、3年で大きく変わります。

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