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ゆらぐ光、夜の街


夜、川沿いを歩いていた。
目が吸い寄せられ思わず足を止める。

そこには、暗い水面の一角に映し出された色とりどりの光。

虹色のようなグラデーションに光ったかと思えば、パッと白い光が現れ、チカチカと点滅する。水面の揺らぎにより何を表しているかはわからない。
艶やかに揺れる水面は、夜の黒さとのコントラストにより、殊更に美しいもののように感じさせる。
わたしはしばらくの間立ち止まってそれを眺めていた。

その光の正体は…と上を見遣ると、パチンコ屋の電光掲示板に主張の激しいフォントと肌の露出の多いキャラクターがギラギラしたデザインと共に映し出されていた。

なるほどな…。
もう一度川に目をやる。それはもう特別な光ではなくなっている。
特に落胆はなかった。
それでもどこか引っかかるものがあった。この感じってなにかに似てるよな。
そう思ったが、その"なにか"を考えてみてもなかなかしっくりこない。

写鏡のようではあるが、揺らぎによって正しくはうつさない。それどころか真実よりも美しく、幻想的にすらなり得るこの原理。
たとえるならば…たとえるならば。

心の中にぽわぽわと浮かんではくるのだけれど、うまく言葉に当てはめられない。

愛を振り翳すもの。
まがいもの。
わたしという存在。
わたしの心の安全装置。
創作という世界。

そうやって、美しさという揺らぎを与え
真実を誤魔化し続けていたわたしのようだね。

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