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中学生の考えたスローガンが今でも忘れられない話。

たぶん小学校6年生の秋ごろだったと思います。来年から通い始める公立中学校の見学にいきました。教室や図書室、音楽室など、一通り校舎を回ってから、最後はグラウンドへ。サッカー部に入部することは決めていたので、グラウンドも大事な見学場所です。

振り返ってみると、4階建て校舎の2階と3階のちょうど中間くらいのところに、2メートル四方の白い正方形のボードが4つ並べられていました。青色の漢字が一文字ずつ、

年中夢求

素敵な言葉だなと思いました。いや嘘ですね、小学生6年生の男児は素敵なんて語彙はもちあわせていませんから、「え、イカす」とかのほうが正しいですね。

それから春になって中学生になりました。部活動の体験入部が終わったくらいの時期だったと思います。たしか5月の中旬ごろ。B6サイズのアンケートシートが配られてきました。今年のスローガン募集。

そのときはじめて、あの年中夢求は昔の先生が考えたものとかじゃなくて、中学生が考えたものだったんだと知りました。「え、イカす」と思いました。

自分の考えた言葉が、1年間学校の校舎に大々と掲げられるのってどんな感覚なんだろうかとワクワクした記憶があります。でも、あまり面白いアイデアは思いつかなかったのでしょう。何を書いたかはまったく覚えていませんが、少なくとも僕が応募したスローガンが採用されることはありませんでした。

このあとも毎年スローガンのコンクールはあったと思うのですが、どの年のスローガンももう覚えていません。ただ小学校6年生のときに出会った年中夢求だけは、ずっと覚えています。

でも、なぜ年中夢求だけ、こんなに鮮明に記憶に残っているのか不思議に思いました。2つ、大きな理由がありそうです。

1つは、ネンジュウムキュウという音が日常生活の多かったこと。当時はマクドナルドや吉野家などファストフード店の競争が特に激しかった時期でした。そのなかで24時間営業・年中無休は、競合との差別化ポイントの一つで、マクドナルドもそれを謳ったCMを流していました。音の響きじたいは僕のなかにすでに存在していた、だからすんなり覚えられた。そして、街中で年中無休を見るたびに、僕はあの年中夢求を思い出していたのです。

今考えると、外に出れば常に夢を求め続けろ!って言われてるようなもんなので、それはそれであれな気もするのですが、夢多き小学生のころはそれを思い出すたびにちょっとしたワクワクを感じていました。

2つめは、その言葉が同年代(と言っても小学生からみた中学生はみんなすごい大人に見えましたが)の人が考えていたこと。あ、これは先生じゃなくて先輩が考えたスローガンなんだって知ってからは、夢を求め続けることに対する熱とか、温度みたいなものが上がったように思います。

学校は年中無休ではないけれど、でも、夢を求め続けることはいつだってできるよ、っていうメッセージ。

スローガンは毎年更新されるのですが、僕はその毎年変わる文字の向こうにいつも年中夢求を見ていました。

中学校の思い出はもちろん他にもたくさんあるのですが、振り返ってみて、と言われると真っ先に思い浮かぶのがあのグランドから見た年中夢求なんですよね。


それから10年経って、僕はメディア関係の会社に就職しました。

メディア関係の会社といっても、僕自身は記事をつくるわけでもなければ、広告とかのクリエイティブな仕事をしているわけでもありません。けれど、一緒に働く仲間や、あるいはこういったnoteでの発信のなかで、誰かの記憶に残るようなものを生み出せたら幸せだなって思います。

年中夢求。やっぱ好きだなぁ。


ゆーき。

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