見出し画像

「我が子の観察はどうしたらできるの?」「挑戦はどうしたら見守れるの?」5歳の母のおうちリベラルアーツ⑤

■はじめに

5歳の母のおうちリベラルアーツシリーズ」5回目となる今回は、前回に引き続きCo-musubi 代表井上と未就学児・低学年の子どもの親たちによる「子育てのおける日常の悩み」をテーマとした座談会のレポート(最終回)をお届けいたします。

今回の悩みは、「子どもをよく見るって、どういうこと?」、「子どもの挑戦を見守るには?」です。


■座談会の参加者

井上:一社)ダイアローグ・ラーニング 代表理事・Co-musubi創始者

富岡:小学校2年生と4年生姉妹の働くママ。日本の教育環境では、育つにつれて子どもの可能性がどんどんなくなっているように感じている。

田渕:年長の娘のママ。最近、「探究」という教育概念を知ったけれど、自分にない「観察する」とか「深い思考」を知りたいと思っている。



■子どもをよく見るって、どういうこと?


富岡:「子どもをよく見る」って最近よく言われるし、私も実践しようと思っています。でも一方で、時間も限られているし、私もイライラするときもあるんですね。どこまで見れば子どもを見ることができていると言えるのか、その基準もない中、井上さんはお子さんを見るときにどんなことを心掛けていましたか。

井上:私自身の子育てにおいて、特に未就学児〜低学年時のお話をしますね。
長女が未就学児当時は福岡県に住んでいました。
仕事を終えて園に17ー18時に迎えに行った後、鞄を置いたらすぐに外遊びに付き合っていました。

福岡は東京よりも日が暮れるのが遅いこともあって(笑)、夏は19時くらいまで泥団子を作ったり穴を掘ったりする娘に付き合っていました。
「穴を掘っているのが好きなんだな、なにかを観察しているんだな。」と思いながら側にいましたね。
日が暮れたら、ダーッと帰ってサッとご飯の支度をしてお風呂に入れて寝かしつけをしていました。今で言うワンオペでしたね。
お風呂の時間におしゃべりしたり数字で遊び、一旦寝かしつけをしてまた起きてお皿を洗うなどの家事をしていました。若かったからできたことですね。

次女が未就学児のときは、ヨーロッパにいました。長女の時(福岡)もそうですが、保護者の方と助け合って子育てをしていました。
プレイデートといって、放課後に子どもを預けあったりお泊り会をしあったりします。我が子以外の子達の様子も知ることができますし、他の保護者から娘について新たな面を伝えてもらえるので、多角的な視点が養われました。
それから、日本にいると生活時間と仕事の時間が曖昧ですが、子育てと仕事の時間を明確にわける重要さを私は海外の保護者から学んだと思います。


日本の福岡や東京での子育てにおいても、娘たちのお友達の保護者の方々にとてもお世話になりました。
子どもたちを一緒に育てている感覚でしたね。同時に私も育てていただきました。
子どもたちも集団の中だからこそ見せる姿というのがあるので、子どもを集団の中で育てる環境を作ると、さまざまな視点で子どもを見ることができると思います。
Comusubi でも子どもたちが話し合ったり共同製作をする中で見せてくれる顔があるので、子どもそれぞれの特徴を理解させてもらえ、保護者の方へ新たな視点をお伝えすることができます。

共に育つことのできるコミュニティの中で子どもを観察できるように、周りと協力しあって子育てできるといいですね。
そして、子育ての時間と自分の時間をしっかり分けると、クリアに子どもを見ることができると思います。

富岡:確かに保育園などの親同士でそういう機会がもっとあるといいですよね。でも経験から過去を振り返ると、子どもが相手のお家で失礼があったりしたら申し訳ないなど遠慮がある保護者の方も多い気がします。


井上:そうですよね。私もはじめは遠慮していたのですが、福岡時代の保護者の皆様が、さっと赤ちゃんだった次女を抱っこしてくれ、自然体で長女も一緒に面倒を見てくれて、「そのほうが子どもたちにとっていいよね」と遠慮をさせないでくれ継続して繋がりを持ってくれたんです。
そういった先輩保護者の皆さんのおかげで私の心も解けて、学ばせてもらいましたし、東京に移ってからもそのマインドで色んな人と子育てを一緒にすることができました。とても幸せな時間でしたね。

東京では小さな集合住宅だったこともあって、同じ年頃の子どもたちがいる家庭を行き来し、兄弟姉妹のように育ちました。
そんなオープンマインドで毎日夢中で遊び、一緒に仲良く育っていただけなんですけれど、高校生から大学生の現在、彼らは自分の軸でどんどん挑戦する人に育っています。長女の心の友は、現在イギリスの名門オックスフォード大学に在学中です。長女自身も現在、オランダのリベラルアーツカレッジに在学しています。

恐れずにどんどん飛び込んでいけるし、人とのコミュニケーションの大切さを知りネットワークを作りフィールドを広げることができている原点は、コミュニティの中でたくさんの温かい手によって育った環境にあるのではないかと思います。

もちろん、そんなコミュニティを自分で作るのは難しい!というのは当然ありますから、私はComusubiを作りました。
私がそこで媒介者になり、子どもたちを観察し、保護者から相談を受けた際には、私の見立てを伝え、必要であれば子ども自身と私での1on1面談をして思考整理を手伝っています。

親子の関係性は近すぎるので近視眼的にもなりやすい。環境のいいコミュニティの中で育てていくと、少し距離を保って子どもの観察もできるし、プロセスにも目を向けることができます。
自分だけで頑張らない。その仕組みづくりをどうするかってのがポイントでしょうか。

富岡:そうですよね。学校の先生と面談をしたときに、私は次女は自己主張が強いと思っていた。けれど先生からは、周りをよーく観察していて調和をすごく大事にしていると見えているそうで、へぇーそうなんだ!と驚きました。
先生に「うちで自分を出せているから、外(学校)で調和できるんだと思いますよ。」と言っていただいて、なるほどそういう見方もあるのかと目から鱗でした。

井上:家での様子に触れているだけだと心配になったりするけれど、他者から子どもの頑張っている姿を教えていただくと、寛容な気持ちになれますよね。

富岡:確かに。家で自己主張できるから、外でいろんなことに挑戦できるんだなとわかるとその自己主張もおおらかな気持ちで受け入れられますね。(笑)





■子どもの挑戦を見守るには?


井上:他に子育てについて気になることはありますか。

富岡:私は子どもに「手伝って」といわれるまで手も口も出さないように心掛けていますが、子どもがちょっと困ったら親がすぐに手を出しちゃっている場面を多く見る気がします。
ちょっとした失敗をする前にそのちょっとした失敗すらしないように先回りしていることも多いんじゃないかと思うことがあります。

井上:悩ましいですね。田渕さんはどうですか。

田渕:私は子どもの失敗を阻止する傾向にありますね。(苦笑)
例えば、高い遊具に登っている娘を見ていると怪我しちゃったら嫌だなとか、救急車の搬送先が見つからない時期のニュースを見て、万が一大怪我をして搬送先がみつからなかったらどうしよう! と妄想が広がって、その不安から高いところに登る娘を止めたくなりますね。


井上:子どもの成長やリスクの優先度を考えずに親が指示を出しているのが多い印象ですね。もしくは、なにか起こったときに柔軟に対応できる自信がないんでしょうね。

田渕:まさに、そのとおりです。実際、私自身が挑戦してこなかったので加減が全然わからないですし、対応できる自信ゼロです。(涙)

井上:確かに、全ての原理原則を理解するのって難しいですよね。
しかも、母親のほうが子どもを守ろうという想いが本能的に備わっているから、思考する前に守ろうという感情や反応が先に出やすいとは思います。

ただ今の時代は、リスクとメリットを広い観点から比べ、分析と思考整理をすることが大切かもしれないと思うんです。
例えば長期的に見た場合に、目の前の子どもの挑戦を止めて、幼児期に失敗や経験ができていないことのほうが、人の成長としてはすごくリスクが高い可能性があることを考えてみることも重要かなと。

どうしたらいいんだろう。一人でやろうとするとつらいですよね!
どうしたら子育てをしている人が心穏やかに、ちょっとの失敗は大丈夫だなと不安に負けずハッピーに子どもの挑戦を見守れるようになると思いますか。

富岡:そうですね。親が手を出さなかったことで、ちょっとした子どものいい変化が見られたときにもっと許してみようと思えますね。

それから、他の方からそういう変化を伝えられて納得できた体験をしたときに、以前よりも見守れるようになる気がします。

田渕:確かに。私にも少しそういう体験があります。

井上:私自身も我が子(特に長女)の挑戦に関しては最初はとても怖くて臆病になっていました。
それで、娘を野山を駆け巡る保育園に入れて、プロの力を借りたんですね。

まぁ最初は、2歳半の小さな体でリュックを背負って園の野外合宿に向かう娘の背中を見て私の方が泣いていましたね(笑)

信頼できるプロに任せながら、福岡の自然の中で育っていく娘の様子を見たり聞いたりして、私自身の心を少しずつ強くしていったように思います。自分の枠組みを手放して、どこでも生きていける子に育つサポートをするためには、親の覚悟が必要かもしれないですね。
これからは日本でも他の国でもどこでも生きられる力が必要だと思うんですね。どう知性的、精神的なタフさを身に着けていけるのか。

田渕:うぅ、心に刺さります。

井上:これは大変なことだし、強要することでもないし、ましてや一人ですることでもない。こうやって対話をしながら、確かにちょっと頑張ろうかなとかこっちもいいかもねと何かが心の中で溶けていくものだと思うので、また座談会をやりましょう。

■座談会を終えて…

田渕:すごく勉強になりました。少しの危険を伴う挑戦にも飛び込んでいける力、どこでも生きていける力を自分も身に着けたいし、我が子と一緒に着けられたらいいなって思いました。

富岡:とても楽しかったです。井上さんの先輩ママとしてのお話を伺え参考になりました。うちの子どもにも軽々と越えていく人になってほしいなって改めて思いました。これから、他の保護者さんとの繋がりや場も作っていきたいなと思いました。

井上:地域コニュニティを育てて、何年も掛けて「こうなったら楽しいよね」って言いながら少しずつ改善していけるといいですよね。地域が良くなっていくことはよい未来に繋がっていくこと。日本でも世界でもどこでも生きていける子どもを育てながら、地球の未来を子ども達にいい状態でお還しできるよう、ボトムアップ的に取り組みを始めるというのは、とても重要だと私も思っています。

一同:今日はありがとうございました。

============

以上、座談会の中から「子どもをよく見るって、どういうこと?」、「子どもの挑戦を見守るには?」についての部分をご紹介しました。

もしこのレポートが少しでも子育ての力になったら嬉しいです。ご感想などお待ちしています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

■編集後記


やっと先月、以前から誘っていただいたお家へ娘を預けるという挑戦をし、ついに近々、我が家へお友達をお招きする予定です。
多分、座談会がなければこの経験はなかったかなーと思います。
この座談会で、私の中にあった他者との間の心の高い壁が溶けたんだろうなと思います。私にとっての学びのチャンスを作っていただいたお二人に感謝しております。

ライター| 田渕 由記


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?